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9話 地獄の幕引き

「そうよ。この偽物が、あなたの恋を成就させるために、イザベラを苛めていたのは、全て私の命令だったの。あなたたちを、破滅させるためにね」


本物のリリアーナの言葉に、レオンハルト殿下の顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。彼は、信じられないという目で、私を、そして本物のリリアーナを交互に見た。


「う、嘘だ……そんな……」


彼は、私を信じたい、という目で私を見つめていた。私は、彼に何か言葉をかけようとした。しかし、本物のリリアーナが、私の腕を強く掴み、レオンハルト殿下に笑いかけた。


「嘘だと思うなら、試してみればいいわ。この偽物に聞いてみなさい。彼女は、あなたを愛していたと、言うかしら?」


本物のリリアーナの言葉に、私の心臓が凍り付いた。もし私が「愛している」と答えたら、本物のリリアーナは、私をその場で断罪するだろう。もし「愛していない」と答えたら、レオンハルト殿下は、私への愛を失うかもしれない。


私は、どちらを選んでも、破滅の道しかないことを悟った。


その時、レオンハルト殿下が、私の前にひざまずいた。


「リリアーナ。君が、私を愛しているか、どうか。それを聞く前に、私の言葉を聞いてほしい」


彼は、震える声で言った。


「私は、君を、心から愛している。君が、私を欺いていたとしても、君が、どんな理由で私に近づいたとしても、私の君への愛は、決して揺るがない」


彼の言葉に、私は、呆然とした。なぜ、ここまで愛を叫ぶのか。


「君が()()()()だとしても、君がどんな嘘をついても、私は君を愛する。だから、教えてくれ。君は、私を……愛してくれているか?」


私は、彼の言葉に、涙を流した。私は、彼を愛している。彼が私をどんなに愛してくれたか、私は知っている。しかし、今ここで「愛している」と答えてはならない。


私は、意を決して、ゆっくりと口を開いた。


「私は……あなたを……愛してなんて、いません」


私の言葉に、レオンハルト殿下の顔から、すべての光が消えた。彼は、その場で崩れ落ちた。


本物のリリアーナは、冷たい笑みを浮かべて、私に拍手した。


「素晴らしいわ。完璧な悪役ね。これで、彼は、あなたを心底憎むようになるわ」


彼女は、そう言うと、レオンハルト殿下に近づき、冷たい声で言った。


「見てみなさい。あなたを愛した女は、あなたを破滅へと導いたわ。これが、私の愛よ」


そして、本物のリリアーナは、私に告げた。


「偽物よ。あなたは、もう自由よ。あなたは、私を愛した者たちを、地獄に突き落とした。これで、あなたの使命は終わった」


私は、その言葉に、絶望した。私の「嫌われる努力」は、最終的に、本当に「愛する者を地獄に突き落とす」という形で、結実してしまった。


私は、もう、この世界にいる理由がないことを悟った。私は、この物語の主人公ではない。私はただ、この世界の「悪役」として、悲惨な結末を迎えるだけの存在だった。


私は、その場で泣き崩れた。


私の悪役令嬢としての人生は、愛されることから始まった。そして、最も愛されたことで、終わったのだ。

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