26話 友の死と、神への憎悪
炎が、視界を焼き尽くす。
爆発の轟音が、耳の鼓膜を破りそうだった。
リリアーナ!
叫び声は、爆風にかき消された。
瓦礫の山の中で、俺は呆然と立ち尽くした。ライオネルの陣営に、なぜかリリアーナがいると聞き、いてもたってもいられず駆けつけた。だが、そこで見たのは、信じられない光景だった。
ライオネルは、胸に深々と傷を負って倒れていた。血が、彼の制服を真っ赤に染めている。
「ライオネル!しっかりしろ!」
俺は、彼の名を叫びながら駆け寄った。ライオネルは、か細い声で、俺を見つめた。
「クロード…すまない…」
「何言ってるんだ!お前は死なない!俺が必ず助ける!」
その言葉に、ライオネルは、悲しそうに微笑んだ。
リリアーナの頬に触れ....
「リリアーナ…を…、頼む…」
それが、彼の最後の言葉だった。
俺は、友の死を、ただ見つめることしかできなかった。
俺とライオネルは、幼い頃からの親友だった。俺が剣を振るうと、彼はいつも隣で弓を構えていた。俺が戦術を考案すると、彼はいつも隣で戦略を練っていた。
「クロード、お前は、いつも俺の一歩先を行く」
そう言って、ライオネルは、いつも笑っていた。俺たちは、互いを高め合う、最高のライバルであり、かけがえのない親友だった。
ヴァーレント王国との国境での演習では、どちらが先に相手の陣営を陥落させるか、いつも競い合っていた。
「俺は、お前との戦いが、一番楽しい」
そう言って、彼は、俺に、弓を向けてきた。だが、その弓の先には、いつも、友情という名の温かい光があった。
そんなライオネルが、今、俺の目の前で、冷たくなっている。
その夜、俺は、自室で、ライオネルの死を悼んでいた。
俺のせいだ。俺が、リリアーナの愛を受け入れたことで、彼女の運命は動き出した。そして、その運命の歯車に、ライオネルが巻き込まれてしまった。
この戦争は、誰かの策略だ。俺とリリアーナの愛を、面白おかしく見物している、あの忌々しい3柱のカミの策略だ。
俺は、怒りに震えた。俺の愛が、大切な友を殺した。俺の愛が、この世界を、混沌に突き落とす。
ふざけるな!
俺は、怒りを込めて、机を叩いた。
俺の愛が、なぜ、誰かを不幸にする?なぜ、俺は、愛する自由さえも許されない?
俺は、窓の外を見た。満月が、冷たく輝いていた。
「カミども…」
俺は、声に出して、そう呟いた。
「俺は、お前らを、絶対に許さない…」
俺は、3柱のカミへの怒りを、さらに胸に刻んだ。そして、この憎しみが、俺の心を、氷のようにより冷たくしていくのを感じた。
「俺は、もう、愛を信じない。」
あの時からそうだった。俺は、ただ、あの憎むべきカミたちを、この世界から消し去るために、生きる。
父上、母上、そして.......
「ライオネル......」
俺の心は、すでに愛を失い、さらなる復讐という名の、新たな道を選んだ。
そう全ては.....
「カミを殺し元の世界を取り戻すために」
だからリリアーナ.....俺は......




