122話 運命の継承とワンピース
中央演算室は、レオンハルト殿下の愛の犠牲によって生じた爆発の痕跡と、焦げ付いたセバスチャンの血の匂いで満ちていた。
クロード王子は、崩れ落ちたセバスチャンを抱え起こし、その凄惨な負傷に顔を歪ませた。
「セバスチャン!すぐに手当を…」
「ご心配なく、クロード王子」セバスチャンは、左腕の激痛を、かつての零号としての自己制御で抑え込みながら、冷静に言った。「人造の肉体です。応急処置は可能です。それよりも…」
セバスチャンは、視線でレオンハルト殿下とミサキが消滅した場所を指し示した。
「レオンハルト殿下の行動は、究極の非合理でしたが、結果としてミサキの自爆エネルギーを一点に収束させ、演算室の論理的構造に、最も強力な愛の楔を打ち込みました」
クロード王子は、その場所から立ち上る、微かな純粋な光を感じ取った。それは、レオンハルト殿下の愛が、アザトースの論理を超越した新たな運命の力として定着した証だった。
残されたノエマの脅威
「だが、ノエマは逃げた」クロード王子は、冷静に状況を分析した。「ノエマは、憎しみを原動力とする完璧な零号だ。彼女が持つ私の過去の知識は、我々にとって最大の脅威となり続ける」
「ノエマは、私たちを追うよりも、儀式の妨害を優先するでしょう」私が言った。「彼女の憎しみは、この運命の壁の完成を、最も拒絶するはずです」
セバスチャンは、自身が失った左腕の痛みを無視し、クロード王子に千鶴の杖のレプリカを差し出した。
「クロード王子。ノエマの真の弱点は、彼女の完璧さにあります。彼女は、私の過去の行動を全て予測できますが、私が自らの過去を裏切るという非合理な行動は予測できません」
「つまり、俺たちが彼女の予測の範疇外で、儀式を完了させればいいわけか」
継承された運命の鍵
クロード王子は、セバスチャンの言葉に頷き、そして、自らの運命と、犠牲となった友人たちの思いを受け継ぐ覚悟を決めた。
彼は、私に千鶴の杖を手渡し、自身の剣を抜いた。
「リリアーナ。俺たちがここで失ったものは、あまりにも大きい。だが、レオンハルト殿下とライオネルの犠牲は、この運命を完遂するための最後のピースとなった」
クロード王子は、セバスチャンと私に、最終作戦を告げた。
「ノエマは、必ず、儀式の核心を狙って戻ってくる。俺がノエマと対峙し、憎しみの予測を外す。セバスチャンは、左腕の知識を使って、儀式の安全弁となれ。リリアーナ、お前は、レオンハルト殿下の愛の楔と、千鶴の混沌、そして私たちの運命の意志を融合させる、運命の壁の仕上げを頼む」
私たちの背後では、既にアザトースの論理の修復が始まっている。残された時間は少ない。




