表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/170

第93話 カップの中の余韻

モールを出たあと、朱里はふと立ち止まった。

 夕焼けはすっかり夜色に変わり、街のライトがにじむ。

 手に残るのは、ほんのりとした温もりと──

 カフェで飲みきれなかったカプチーノの甘い香りだった。


 「……何あれ、ずるいなぁ」


 ぽつりと漏れた言葉に、自分で驚く。

 嵩のあの柔らかい笑い方、いつもより少し近かった距離。

 思い出すたび、心の奥がじんわり熱くなる。





 帰宅しても、頭の中は仕事の報告書より“今日の会話”でいっぱいだった。

 リビングのソファに沈み込み、スマホを手に取る。

 未読のままのメッセージ──瑠奈からだった。


> 『明日、朱里さん空いてます? 買い物付き合ってください!』




 職場の後輩であり、ライバル。

 嵩にとっても何かと関わりのある存在。

 「断る理由があるなら、今すぐ教えてください」と言いたいのに、そんな勇気は出ない。


「うん、いいよ。午後なら空いてる」


 そう返信してから、朱里は小さくため息をついた。





 鏡の前に立つ。

 カフェで嵩が言った言葉が頭の中をよぎる。


> 「朱里のプレゼン、説得力あるよ」




 あのときの目は、仕事の評価を超えた何かを含んでいたような──気がする。

 ……いや、気のせい。たぶん。


 けれど、鏡に映る自分が、いつもより少しだけ明るい顔をしているのを見て、

 思わず吹き出した。


「何やってるの、私……ほんと、単純」


 そう呟いても、頬の熱は冷めなかった。

 “少しだけ”のつもりだったはずの時間が、心の中で何度もリプレイされる。





 翌朝。

 通勤電車の窓に映る自分の顔は、どこか浮かれて見えた。

 それが恋だと気づくには、まだ少し時間がかかる。


 でも、もう気づき始めている──

 “平田嵩”という名前が、誰よりも心に残ってしまうことに。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ