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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第84話 言えない気持ち

ショッピングモールを出る頃には、すっかり夕方の風が涼しくなっていた。

 秋の夕暮れは早い。空はオレンジと群青の境目で、どこか切ない。


 駐車場へ向かう道すがら、朱里と嵩の間には──妙な沈黙が続いていた。

 さっきの、あの場面。

 朱里はまだ、彼の反応が気になって仕方がなかった。


「……平田さん、さっきから黙ってますけど」

「別に、何も」

「“何も”って、顔に“何かある”って書いてますよ」


 半分笑いながら言うと、嵩は小さくため息をついた。

 そして、ふと足を止める。


「……さっきの人。元カレとか?」

「え? 違いますって!大学の友達です!」


 朱里は思わず声を上げた。

 しかし嵩はまだ少し納得していないようで、視線を逸らす。


「……そうですか」

「“そうですか”って! なんですか、その反応!」


 朱里の声がわずかに高くなる。

 けれどその怒りは、本気というよりも──胸の奥のもどかしさの裏返しだった。


「……嫉妬してるんですか?」

 もう一度、勇気を出して言ってみた。


 嵩は一瞬だけ目を丸くして、苦笑いを浮かべた。

「そんな子どもみたいなこと、しませんよ」

「ふーん……」


 そう言いながら朱里は歩き出した。

 けれど、彼の歩幅はほんの少し速くなった。

 黙ってついていくうちに、心の奥がチクリと痛む。


 ──嫉妬してくれたら、少しはうれしいのに。

 そんな自分の気持ちに気づいた瞬間、朱里は思わず苦笑した。


 駐車場に着くと、嵩がさりげなく言った。

「……夜、少し冷えるので、これどうぞ」

 そう言って差し出されたのは、嵩のジャケットだった。


「え? いいです、私大丈夫ですから!」

「風邪でも引かれたら困ります。来週、プレゼンありますよね」


 優しい声に、胸がぎゅっとなる。

 さっきまで拗ねてた人とは思えないほど、自然で。

 でも──その優しさが、余計にずるい。


「……平田さんって、ほんとずるい人ですね」

「え?」

「なんでもないです!」


 朱里はそっぽを向いた。

 その頬は、ほんのり赤く染まっていた。



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