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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第83話 知らなかった横顔

土曜の午後。

 朱里は、駅前のショッピングモールにある雑貨店で、プレゼント用の小物を見ていた。

 白いマグカップに、淡いグレーの英文字。

 “Take it slow.”──その言葉が、なんだか最近の自分にぴったりな気がして、指先が止まる。


「朱里?」


 不意に背中越しに名前を呼ばれて、びくっと肩が跳ねた。

 振り向くと、そこにいたのは大学時代の友人・村上祐介。

 ゼミが一緒で、サークルでも何度か顔を合わせていた人だ。


「え、村上くん!? 久しぶり!」

「ほんとに。まさかここで会うとはな」


 懐かしさに自然と笑みがこぼれる。

 祐介は社会人になってから地元の企業に勤めていると話し、仕事の愚痴を冗談まじりに話した。

 朱里もつい笑って返してしまう。

 ──そこに、少し離れた場所から聞き慣れた声がした。


「中谷さん?」


 振り向くと、紙袋を片手にした嵩が立っていた。

 いつもよりラフな服装なのに、妙にきまって見える。

 でも、その表情は……どこか固い。


「あ、平田さん。偶然ですね。いま、大学の友だちと──」

「……そうなんですね」


 短く答えた嵩の声が、少しだけ低く聞こえた。

 祐介が空気を読んで、「また連絡するよ」と笑って去っていく。

 その背中を見送る間も、嵩は何も言わなかった。


「……どうしたんですか?」

「別に。知り合いなら、いいじゃないですか」

「え? なんか、怒ってます?」


 嵩は答えないまま、歩き出した。

 朱里は慌てて後を追いながら、心の中がざわつく。


 ──怒ってる? でも、なんで?

 私、別にやましいことなんてしてないのに。


 隣を歩く嵩の横顔が、どこか知らない人みたいに見えた。

 普段は穏やかな彼が、少しだけ子供っぽく見える。

 けれどその不器用さが、なぜか胸の奥をやさしく締めつけた。


「……平田さん、もしかして、嫉妬してます?」


 冗談めかして笑いながら言ってみた。

 すると、嵩は一瞬だけ視線を逸らし、

「……そんなわけないでしょう」と言いながら、耳のあたりが赤くなった。


 朱里は、思わず口元を押さえた。

 ──その反応、ずるい。


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