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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第81話 服選びのジレンマ

「何着て行こう……」


 その一言が、午前中からずっと朱里の部屋にこだましている。

 ベッドの上には、仕事帰りに買ったワンピース、春色のカーディガン、そしてお気に入りのスカート。

 だけど、どれも「これだ!」という決め手にならない。

 鏡の前で何度も立ったり座ったりして、ため息が出る。


 ──映画に行くだけなのに。

 頭ではわかっている。

 でも、相手が平田嵩となると、途端に「ただの映画」じゃなくなってしまう。


 スマホが光る。美鈴からのメッセージだ。

 『で?進展は?映画デートってマジ?』


 朱里は慌てて返信する。

 『マジだけどデートじゃない!たぶん、きっと、違う!』

 送った直後に、変な汗が出た。

 “違う”って言いながら、そうであってほしいと心のどこかで願ってる自分がいる。

 もう、本当にややこしい。


 着信音が鳴った。

 「朱里~?おはよ、いまヒマ?」

 電話越しの美鈴の声は、朝からテンションが高い。

 「ちょっと聞いてよ、美鈴。服が決まらなくて……」

 「は?そんなん、嵩さんの好みで選べばいいじゃん」

 「そ、それが分かったら苦労しないよ!」


 美鈴は笑って、「ほら、あの人さ、前にプレゼンのとき朱里のジャケット褒めてたじゃん。きっちり系が好きなんじゃない?」と軽く言う。

 「……そういえば、あのとき“似合ってますね”って……言ってたかも」

 思い出した瞬間、朱里の頬が熱くなった。

 電話の向こうで美鈴がにやりと笑っている気配がする。

 「ほら出た。顔真っ赤なんでしょ」

 「ち、違うし!」

 「また“大嫌い”とか言うんでしょ、どうせ」

 「だ、だってそうでも言わないと……!」


 会話が終わったあとも、朱里の心臓はドクドクとうるさく鳴っていた。

 結局、クローゼットを開けて、白いブラウスとライトグレーのスカートを手に取る。

 シンプルだけど、彼に会うにはちょうどいい。

 “きっちり系が好き”──その一言が、頭から離れなかった。


 鏡の前で服を合わせながら、朱里は小さくつぶやいた。

 「……平田さん、また“似合ってる”って言ってくれるかな」


 その声は、少しだけ期待を含んでいた。

 でも同時に、自分でも気づかないふりをしている。

 “好き”という言葉の形を、まだ認めたくないから。


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