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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第75話 スクリーン越しの距離

週末の午後。

 ショッピングモール併設の映画館前。


 朱里は、上映開始十五分前にすでに到着していた。

 白のブラウスにベージュのスカート。鏡の前で何度もチェックした結果、結局「地味すぎるかも」と思いながらも、結局そのまま来てしまった。


(だって……“デート”なんて言われてないし)

 そう、自分に言い聞かせながら。


「待った?」

 声に振り向くと、嵩が軽く手を上げていた。

 白シャツにグレーのジャケット。ラフなのに、なぜかきちんとして見える。


「ううん、今来たところ」

 定番のセリフを、つい自然に言ってしまう。

(なにそれ、少女漫画か……!)

 自分で心の中でツッコみながら、顔が熱くなる。


 嵩はチケットを見せながら言った。

「せっかくだし、ポップコーンとか買っていこうか」

「う、うん」


 売店の列に並ぶ二人。

 すると嵩が、何気なく聞いてきた。


「朱里、甘いのと塩、どっち派?」

「え? あ、甘いほう」

「俺も。じゃあキャラメルにしようか」

「うん……」


 会話は、何気ない。

 でも、心臓はやけにうるさい。


 上映中。

 ラブストーリーのクライマックスで、ヒロインがヒーローに「あなたが好き」と告げるシーン。

 暗闇の中、朱里はわずかに視線を横に向けた。

 隣にいる嵩の横顔──穏やかな表情で、スクリーンを見つめている。


(この距離、近い……)

 ほんの数センチの隙間。

 けれど、そこが果てしなく遠く感じてしまう。


 映画が終わり、館内の明かりが戻る。

 嵩が小さく笑って言った。

「いい映画だったな。最後、泣いた?」

「えっ!? な、泣いてないし!」

「いや、ちょっと鼻すすってたから」

「……それは、キャラメルポップコーンのせい!」


 嵩が吹き出す。

「なるほど、甘涙だな」

「もう、そういうのやめてよ!」


 朱里はぷいっとそっぽを向いた。

 だけど──その頬は、映画の余韻よりもずっと赤く染まっていた。


 カフェに入ると、嵩がふと真面目な声で言った。

「朱里」

「な、なに?」

「俺……こうやって一緒に過ごす時間、けっこう好きかも」


 心臓が跳ねた。

 けれど──次の瞬間、こじらせスイッチが作動する。


「な、なによそれ……また『好きすぎる』の第二弾?」

「はは、そんな感じかな」

「……もう知らない」


 朱里はストローをくわえながら、わざと視線をそらした。

 けれど──内心では思っていた。


(そんなふうに言われたら、もっと“知らなく”なっちゃうじゃない)


 外のガラス越しに、午後の光が二人を包み込む。

 ふたりの距離は、確実に──スクリーンよりも近づいていた。


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