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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第74話 好きって言われると困るんです!

翌朝。


 朱里は出社早々、デスクでため息をついていた。




 昨日、嵩に誤解を解かれた時──あんなに優しい顔で言われたのに、素直に「よかった」って言えなかった自分が嫌だった。


 むしろ、あの「好きすぎる」発言を思い出しては、ひとりで勝手に赤面して、勝手に混乱している。




「……あーもう! 何あれ! 『好きすぎる』って何なの!?」


 心の中で叫びながら、メールの返信を打つ手が止まる。


 机の上には、昨日嵩にもらった資料が置きっぱなし。そこに小さく“ありがと”って朱里のメモが残されていた。




 すると、ふいに背後から声がした。


「……朝からずいぶん考え事だな」


「ひゃっ!?」


 振り返ると、そこには当の本人──平田嵩。


 いつもの穏やかな笑顔で、コーヒー片手に立っている。




「な、なによ……脅かさないでよ!」


「脅かしてない。朱里が勝手に驚いたんだろ」


「む……」




 嵩は、彼女のデスクの上に視線を落とした。


「これ、俺に返すの? それとも記念に取っておく?」


「き、記念って! そんなもの取っとくわけないでしょ!」


「へえ、そう?」


 口元をわずかに緩める嵩。


 朱里は顔を真っ赤にしながら、ぷいっとそっぽを向いた。




(もーっ! なんなのその余裕!)


 心の中でそう叫びながらも、どこかうれしい自分がいるのがまた腹立たしい。




「なあ朱里」


 嵩が少し声を落とした。


「今週末、もし時間あったら……また出かけない?」


「えっ」


「映画のチケット、もらったんだ。せっかくだし、一緒にどうかと思って」




 心臓が跳ねた。


 でも次の瞬間、朱里の“こじらせスイッチ”が入る。




「な、なんで私なの?」


「え?」


「だって、瑠奈さんとか他にもいるでしょ? どうせなら、そっち誘えばいいじゃない」


「……なんでそうなるんだよ」


「知らないわよ! 勝手にすればいいでしょ!」




 言ってから、あっ……と気づいた。


 嵩の表情が、一瞬だけ驚いたように動いて、それから少し困ったように笑った。


「朱里、また“そういうモード”入ってる?」


「な、なにそれ!」


「すぐ拗ねる。そういうとこ、わかりやすい」


「……っ、うるさい!」




 朱里は椅子を勢いよく回転させ、モニターの方に向き直った。


 その背中を見ながら、嵩は小さく息をついた。


「じゃあ、また後でちゃんと誘うから」


「勝手にすれば!」




 嵩が去った後も、朱里の頬は熱を持ったままだった。


 机の下で、そっと拳を握りしめる。


「……“好き”って言われると、困るんだよ……」




 でも──心の奥では。


 “もう一度言ってくれたら、きっと困らずに笑えるのに”


 そんな想いが、静かに芽生えつつあった。





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