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第40話 差し入れ大作戦(失敗編)

翌朝。

朱里は会社へ向かう途中、コンビニの前で立ち止まっていた。


「……やるって言っちゃったんだし」

心臓がやけに速く打つ。


美鈴の助言──「差し入れ作戦」。

簡単そうに聞こえたが、実際にやろうとすると手が震える。


結局、コーヒーを二本だけ買った。一本は自分用、もう一本は嵩用。

(ただの缶コーヒーだし、渡すだけ……普通のこと……)


自分に言い聞かせながら出社し、デスクに座る。

嵩は隣でPCに向かっていた。タイミングをうかがい、朱里は缶コーヒーを机の下でぎゅっと握りしめた。


「……あ、あの」

意を決して声をかける。


「はい?」

嵩が顔を上げた。優しい笑顔が返ってきて、朱里の脳内が真っ白になる。


(言え、言うんだ……!“これ、どうぞ”って!)


しかし口から出たのは──


「だ、大嫌いです!」


「……え?」

嵩が瞬きをする。


「ち、違っ……! これっ!」

朱里は缶コーヒーを勢いよく突き出した。


「え、あ、ありがとうございます……?」

受け取った嵩は困惑しながらも笑ってくれた。


朱里は顔から火が出そうになり、即座に自分のコーヒーを開けてごくごく飲んだ。

(なにやってるの私……!)


少し離れた席からその様子を見ていた瑠奈が、首をかしげる。

「先輩たち、仲良しなんだか、そうじゃないんだか……」


朱里は机に突っ伏しながら、心の中で叫んだ。

(もう“差し入れ作戦”なんて二度とやらない!……って、美鈴に言ったら怒られるんだろうなあ……)


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