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第35話 小さな一歩

翌日の昼休み。

オフィス街の窓際に差し込む光を眺めながら、朱里はスマホを握りしめていた。心臓が早鐘のように鳴っている。


(美鈴に言われた通り……まずは一歩。小さなことでいい。嵩を意識させる……!)


普段なら社内のメンバー数人で食堂に行くのが日課。だが、今日の朱里はタイミングを見計らっていた。


「嵩、今日お昼どうするの?」

コピー機の前でばったり会った瞬間、自然を装いながら声をかける。


嵩は少し驚いたように振り返り、笑った。

「まだ決めてないけど……いつもの食堂かな」


「じゃあ……一緒に、外に行かない? 近くに気になってるパスタのお店があって」


言い切った瞬間、朱里の頬は熱くなる。緊張で声が上ずっていなかったか心配になる。


嵩は一瞬きょとんとしたが、すぐに頬を緩めた。

「いいね。たまには外も悪くない」


その答えに、朱里の胸がふっと軽くなる。

「じゃあ、お昼になったら声かけるね!」


昼下がり、ふたりで訪れたのは小さなイタリアン。

ランチメニューの香りに包まれながら、朱里は思った。


(よかった……これで、少しは嵩と近づけたかな)


パスタをフォークに巻きながら談笑する嵩の横顔。

朱里はその表情を、心に焼き付けるように見つめていた。

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