第21話 乱入者、瑠奈の宣戦布告!?
「先輩~、奇遇ですね!」
襖を開け放ったまま、にこにこと笑う瑠奈。彼女の後ろには友人らしき女性が立っていたが、空気を察したのか「ドリンク取ってくる」とすぐに立ち去っていった。
「望月さんもここに?」と嵩。
「はいっ!実はこの居酒屋、私のお気に入りなんです~。……でも先輩たちが一緒にいるなんて、なんか……いいですね」
(い、いいって……何が!?)
朱里はグラスを握りしめ、心の中で叫ぶ。
「せっかくですし、ちょっとだけご一緒してもいいですか?」
瑠奈は悪びれる様子もなく座布団を引き寄せ、二人のテーブルに腰を下ろしてしまった。
「えっ……」
驚く朱里。けれど嵩はにこやかに「もちろん」と答えてしまう。
(ちょっと!なんで即答するのよ!)
料理が追加され、三人での食事が始まった。
瑠奈は自然体を装いながら、会話の流れを巧みに操っていく。
「この間のセミナー、本当に勉強になりましたよね、平田先輩!」
「そうだね。望月さんの質問も的確だった」
「えへへ、ありがとうございます!」
二人の笑顔を見ていると、朱里の胸はざわざわして仕方ない。
何も言えず、つい串カツを乱暴にかじってしまう。
「……中谷先輩?」
瑠奈がわざとらしく首を傾げた。
「そんなに強く噛んだら串まで食べちゃいますよ?」
「~~っ!!」
顔が真っ赤になる朱里。
嵩が慌てて「はは……」と笑って場を和ませようとするが、瑠奈はそこで畳みかけた。
「でも、羨ましいな。中谷先輩って、こうやってプライベートでも平田先輩と一緒にいられるんですもん。私も、もっと近くにいたいなぁ」
テーブルの下で、朱里の足が震える。
宣戦布告だ。しかも真正面から。
(……負けない。絶対に負けない!)
けれど、口から出たのは――。
「だ、大嫌いですから! こういう飲み会も……!先輩のことも!」
「えっ」
嵩の笑顔が固まる。瑠奈は口元を押さえてクスクス笑う。
朱里は真っ赤な顔のまま、グラスの水を一気に飲み干した。
(ああもう!なんで私ってこうなのよ!!)
居酒屋の空気は、熱気と気まずさが入り混じっていた。