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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第134話 大嫌いが言えなくなった夜

 スマホの画面が暗くなっても、朱里はしばらく動けなかった。


(……楽しかった、って送っちゃった)


 言葉にした途端、それが嘘じゃないことを、はっきり自覚してしまったから。


 胸の奥が、じんわりと落ち着かない。


 ベッドに腰掛け、クッションを抱える。


(大嫌い、って言えば楽だったのに)


 そう言って突き放せば、ここまで考え込まずに済んだはずだ。


 でも──。


 今日の嵩は、少しだけ違った。


 急かさず、詰めすぎず、それでいて確実に距離を縮めてくる。


──「じゃあ、今日はゆっくり歩こうか」


 その一言が、どうしてあんなに優しく響いたのか。


「……反則だよ」


 朱里は天井を見上げて、小さく息を吐く。






 そのとき、スマホが再び震えた。


 嵩からだと分かっているのに、心臓がまた跳ねる。


『無理してないなら


 また、金曜にでも』


 たったそれだけの文面。


 でも「また」という言葉が、妙に重い。


(金曜……)


 次に一緒に歩く約束みたいで。


 朱里は指を止めたまま、画面を見つめる。


(断る理由、探そうと思えば探せる)


 忙しいとか、予定があるとか。


 でも──。


(行きたくない、とは思ってない)


 それどころか、少しだけ楽しみにしている自分がいる。


 朱里は、ゆっくりと文字を打った。


『金曜


 定時なら、大丈夫です』


 送信。


 数秒後。


『了解です


 じゃあ、またゆっくり』


 短い返事なのに、胸が温かくなる。


(……完全に、やられてる)


 クッションに顔を埋め、朱里は小さく呻いた。


「大嫌いって、言えなくなったら


 どうすればいいの……」


 






その問いに答えるように、別の通知が入る。


 ──望月瑠奈。


『朱里さん


 今日、平田さんと一緒でしたよね』


 心臓が、嫌な音を立てる。


(……来た)


 既読をつけるか迷っている間に、追撃。


『別に責めてるわけじゃないです


 ただ、気になっただけ』


 その“ただ”が、信用ならない。


 朱里は深呼吸してから、返信した。


『少し話しただけだよ』


 すぐに返ってくる。


『へえ


 少し、ですか』


 含みのある文面。


(やっぱり、見てたんだ)


 しばらく沈黙が続き、朱里はスマホを伏せた。


(……何も、悪いことしてないのに)


 なのに、胸の奥がざわつく。


 嵩と一緒にいることを、誰かに知られるのが怖い。


 でも同時に──隠している自分にも、嫌気がさす。


(私、何してるんだろ)


 その答えは、もう分かっている気がした。


 嵩の隣が、心地よくなってしまったから。


 大嫌い、で逃げられなくなったから。


 朱里は、スマホを手に取り、そっと画面を見つめる。


(金曜まで、あと三日)


 たったそれだけで、胸がざわめく夜だった。



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