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大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。  作者: 菊池まりな


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第116話 火曜日は少しだけ距離が近い

火曜日の朝。

 目覚ましが鳴る前に、朱里は目を覚ましていた。


 昨夜のことが、頭から離れなかったからだ。


 平田さんと並んで歩いた、短い帰り道。

 会話は多くなかったのに、不思議と沈黙は重くなくて。

 でも──近づいたぶんだけ、怖さも増した。


「……仕事しなきゃ」


 そう言い聞かせて、身支度を整える。


 


 出社すると、オフィスはいつも通りの朝の空気だった。


「朱里、おはよう!」


 田中美鈴が、やけに元気よく声をかけてくる。


「おはよう」


「昨日、平田さんと一緒に帰ったの?」


 いきなり直球。


「……なんで知ってるの」


「エレベーター前で見ましたから」


 にやにやした笑顔に、何も言い返せない。


「朱里、最近顔に出やすいね」


「出てない」


「出てます」


 即答された。


 そのとき、少し離れた場所で資料を整理していた瑠奈と、ふと目が合う。

 一瞬だけ、視線が絡んで──すぐに逸らされる。


 昨日のことを、彼女も知っているのだろうか。

 それとも、知らないふりをしているだけなのか。


 どちらにしても、胸の奥がざわつく。




 午前の仕事が一段落した頃、内線が鳴った。


『中谷さん、少しいいかな』


 平田さんの声だった。


「はい」


 応接室に入ると、平田さんは窓際に立っていた。


「昨日は、ありがとう。遅くまで付き合わせてしまって」


「いえ……こちらこそ」


 “付き合わせて”なんて言い方が、少しだけ胸に引っかかる。


「今日も忙しそう?」


「……はい。少しだけ」


 その“少しだけ”に、どんな意味が含まれているのか、自分でも分からない。


 平田さんは、ほんの一瞬だけ言葉を探すように視線を伏せたあと、静かに言った。


「無理はしないで。朱里さんが一番大事だから」


 胸が、きゅっと縮む。


 優しさなのか、距離を保つための言葉なのか。

 朱里はそれを、まだ判別できない。


「……ありがとうございます」


 それだけ答えるのが、精いっぱいだった。


 応接室を出た瞬間、鼓動が一気に早まる。


(昨日より、近いはずなのに……どうしてこんなに不安なんだろう)


 その背後で──


「やっぱり、先輩と平田さんなんですね」


 静かな声。


 振り向くと、そこに立っていたのは望月瑠奈だった。



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