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第42話 愛さえあれば翻訳できらぁ!!!


「ふむ……この首輪を通してケンちゃんの言葉を翻訳するのか。もしそれが本当なら、わざわざエルフの森まで行かなくても済むかもしれないねぇ……」


「ルナ様!さっそく試してみましょう!」


『わかった。ケンちゃ~ん!首輪をハメるから大人しくするのじゃ……痛い痛い!もう!まるちゃん、邪魔するでない!これはケンちゃんの身を守る大事な物なのじゃぞ!』


「がうぅ!」


「私が尻尾でまるちゃんを抑えますのでその隙に首輪をつけてください!」


 ラミィさんの尻尾が素早くこちらに伸び、まるちゃんさんの体だけをぐるりと器用に巻き取った。


 まるちゃんさんはなんとか抗おうと地面に爪を立てて必死に踏ん張る。


「がう~~~…………」


 だが、抵抗虚しく奥の方へと連れ去られてしまった。


 ドスン!


 なんか思い切り地面に叩きつける音が聞こえたけど大丈夫かな。怪我してないといいけど。


『お、よそ見をしているうちに!』


 ガチャン!


「(へ?ちょ……なにこれ!?)」


 突然、冷たくて重たい金属の輪が首に巻き付けられる。


「(お、重い……)」


 薄々されるだろうなと思っていたが、ついに首輪をはめられてしまった。


 実際に首輪をつけると想像以上にずしりとした重みが首にのしかかる……これ、結構しんどいかもしれない。


『ふふふ……首輪姿のケンちゃんもかわいいのう』


「まさか首輪一つでこんなにも愛くるしくなるとは驚きだねぇ。このままリードでもつけてお散歩に連れていきたいくらいだ」


「(なんだか、お二人の視線がちょっと怖いです……)」

翻訳:【怖い。悪魔のようだ】


ビキ.....


 あれ?今、この首輪から声がしたけどなんで?それと、空気が一気に重たくなったきがする。


 圧というより、まとわりつくような圧迫感がある。


「ケンちゃんが私を怖がる……有り得ない!だってケンちゃんは他のオスとは違う!私のことを心から愛し、全てを受け入れてくれる存在なんだ!有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない」


『こ、ここここ怖くなんてないぞ~!ほら、こ、こんなにもニコニコしてるじゃないか~』


 ルナさんが両手で自分の顔を引っ張って、無理やり笑顔のような変顔を作っている……なんで?


「ッ!ルナ君!その首輪が本当に翻訳機能を持っているのか、念のため検証しておいた方がいいと助言するよ!まぁどうせ、まがい物のインチキ機能だとは思うけどねぇ!」


『お主の気持ちはわかるがそう怒るでない……じゃが検証といってもなぁ。とりあえず色々試してみるかのう』


 ガサゴソ…


『ほら~ケンちゃんが大好きな虫のおもちゃじゃぞ〜。前のに比べたらリアリティのかけらもないが、カミカミしていいのじゃぞー』


「(っつ! なんですか、この虫のおもちゃは!?べ、別にこんなのでビビったりしませんよ?……あ、でも次にいきなり出したら、今度は指を噛みますからね!)」

翻訳:【お前を食い殺す】


『おお、なんとなく翻訳できてるっぽいぞ。それにしても、ケンちゃんって意外と好戦的な性格なんじゃな。わしはてっきり、ひ弱な王子様的な存在かと思っておったから、ちょっとショックじゃ』


「映画の時も思ったんだが、なんで虫のおもちゃを使っているんだい?そりゃあ人間族は虫を食べても害はないし、一般的な食料だけどねぇ」


『それは虫のおもちゃが嫌いな魔獣はいないからじゃ!ほれ見てみろ!他の魔獣たちが虫たちに群がり始めたぞ!』


 僕の目の前では、3匹の動物たちが虫のおもちゃをめぐって、我先にと争っている。


「ぐるるるるぅぅ」


 獲物こそ小さいおもちゃだが、時には小さな唸り声を上げながら互いに牽制し合っていて迫力を感じる。


「(わ、すご……虫が葉っぱに変わった……あ、くれるんですね。ありがとうございます)」翻訳:【感謝しよう】


「コンコン!」


 コロン……僕の元へ虫を持ってきた狐っぽい生き物が、お腹をこちらに見せては無防備な姿勢で僕を見つめてくる。


「(じゃあ失礼して……)」

翻訳:【翻訳に失敗しました】


 なでなで……


「コンコン♡」


 両手でお腹をわしゃわしゃと撫でてやると、まるで勝者の特権を堪能しているかのように、うっとりとした表情を浮かべる。


 腰に巻き付いたふわふわの尻尾が少しくすぐったい。


 なでなで……


「コーーーーン♡」


「(動物たちとこうして触れ合えるのは嬉しいけど、僕ってこの部屋の中でどういう認識なんだろう……なでなで専門の人とか?)」

翻訳:【私は甘えたい。撫でてくれ!激しく苛烈に!】


『む、ケンちゃんは撫でられたいのか。それならば仕方ないの〜う。わしがねっとりと撫でてやろう!』


 なでなで……


 狐を撫でていると、何故かいきなりルナさんが僕の頭を撫でてくる。

 そのせいで、撫でながら撫でられるというなでなでマトリョーシカが完成してしまった。


 狐はというとどこか不服そうである………なんか手に魔法陣も出来てるし。


「(あの、今は僕が撫でてる時間なので後でお願いします。って、顔怖っ!?え、なんか角生えてるし目も12個くらいあって気持ちわる!)」

翻訳:【触るな!気持ちわるい!貴様の顔はまるで生ゴミの集合体のようだ!2度私に触るんじゃない!】


 後ろを振り返ると、ルナさんの顔はみるみる化け物のように変わり、恐ろしい表情を浮かべていた。


『ごはぁっ!ケンちゃんに拒否された………しかも気持ち悪いとまで……』


「ふぅ。なんとかまるちゃんを檻に……って、ルナ様!血を吐かれてどうされたのですか!お気を確かに!」


『そんな……もう無理……立ち直れる気がしないのじゃ。ケンちゃんに嫌われたらわしはどう生きていけばいいのじゃ〜〜〜』


「あはは!どうやら、まだケンちゃんには嫌われていたみたいだねぇ。じゃあ、次は私が抱きついてみよう。今度はちゃんと翻訳してくれたまえよ?ケンちゃんからの愛の言葉が間違って伝わるなんて、冗談じゃないからねぇ」


 ぎゅっ!


「さぁ、ケンちゃん!私のこの愛情たっぷりのハグはどうかな?ぜひ熱烈な感想を聞かせておくれ!」


「息苦しい……って、アウラさんの顔も怖っ!その新しく伸びた牙どうしたんですか?スズメバチみたいに尖ってて夢に出てきそう。ただでさえ虫が苦手なのに……」

翻訳:【鬱陶しい!怖い!二度と顔を見せるんじゃないクソが!貴様への感情など虫以下だ!】


 バタン!


「あ、アウラ様まで倒れるなんて……」


「もう私は生きていけない……棺桶には、ケンちゃんが描いてくれた似顔絵を入れてくれ。それがあればあの世でも楽しくやっていけるさ」


 二人とも、少し距離を取ってほしかっただけなのに、今では僕から遠く離れて地面にうなだれている。どうしたのだろうか、僕にはさっぱりわからない


「こんこ~んwwww」


 困惑していると、狐さんが地面に突っ伏した二人を見てケラケラ笑い始める。その様子から察するに、この子が何かしたのだろうと察した。


「皆様大丈夫ですか!」


 そうこうしている間に、ラミィさんの顔も徐々に口裂け女のように不気味になり、まるでホラー映画の一場面を見ているかのようだ。


「(お二人とも、お願いだから起きてください!見知った人が顔だけ変化してるって違和感凄いんです!ちょっと不安で泣きそうなんです!)」

翻訳:【私を一人にしないで!もっと構って!】


 心配な気持ちから、二人の背中を強めに揺さぶる。


「コン!」


 すると顔だけでなく、髪や手足、体全体が不気味に歪み、見るからに異形の怪物へと変貌していった。

 いや、確かに顔だけ変わることに文句は言ったけど、だからって体まで変わるのはやめてほしい。そろそろ本気で怖い。


「(う.....なんか、だんだんこっちの光景のほうが正しい気がしてきた。あれ?そもそもルナさんってどんな姿だったっけ?忘れかけてきた)」

翻訳:【寂しい……もっと私と一緒にいて。私のことを忘れないで】


『ぐすん……ケンちゃん?寂しいのか?気持ち悪いわしでも受け入れてくれるのか?抱っこしてぎゅってして顔をぺろぺろしてもいいのか?』


「(あの、舌でペロペロするのやめてもらえます?……いや、これもこの子の術の影響なのか?)」

翻訳:【ねぇ、お願い……ペロペロして。もうひとりぼっちにしないでくれ】


「もしかしたら、ずっと寂しかったのかもですね。ただでさえ、ケンちゃんは育ての親と離れ離れになっています。我々に簡単に懐くのも、ぬくもりを求めていたのかもしれません」


「そうだ……そもそもケンちゃんが私を嫌うはずがないねぇ!今もこうして私たちの背中を揺すっているのがいい証拠じゃないか!エビデンスの全くない情報に踊らされる研究者ほど滑稽なものはないというのに!私はなんて愚かだったんだ!」


『ううう……ケンちゃ~ん!疑ってごめんねぇ~!これからはもっといっぱいかまってあげるからねぇ』


 むぎゅゅゅゅゅ!!!


 落ち込んでいた2人が、泣きながら僕に熱い抱擁を交わしてくる。


 ラミィさんまで抱きついてきて、まるで大団円みたいな雰囲気だけど……正直、僕はついていけてない。


「うっ……顔こわ。あの、抱きつくのはいいんですけど……とりあえずこの現象なんとかしてくれます?皆の肌が尋常じゃないほどごわごわして痛いです」

翻訳:【触るな消えろ。貴様らと一緒にいると吐き気がする!そこに立っているだけで目障りなんだよ!毎日毎日発情した犬みたな顔しやがって!恥という言葉を知らないのか?貴様らのような連中と同じ空の下にいるだけで……(バキ!)】


『この首輪は封印じゃ!クレーム入れてやる!』




===================





「工房長!そういえば、あの首輪に翻訳機能があったんっすよね?あれってどういう仕組みなんすか?」


「なんだよ……お前そんなのもわからねぇのか?」


「すいませんっす!自分まだ新人なもので……」


「ったく……しょうがねぇなぁ。愛だよ愛」


「あ、愛?」


「愛さえあれば声色だけで何となく言いたいことくらいわかんだよ。実際、映画の中で何度も俺に求愛してたのちゃんと聞き取っったしな」


「えぇ……(それって適当ってことでは?)」


「口調も私好みの毒舌オラオラ系にしてやったし……くぅぅぅぅ!あの可愛い顔で罵られるなんてたまんねぇ。話し方を思うがままに出来るとか最高かよ!まるで自分の色に染め上げてるみたいでよだれ出そう。よし、次のアイテム作りもケンちゃんの為に急がねぇとな!」


 カン!カン!カン!




「……転職しよっかな」




===================




ゴン:二股の尾を持つ、狐のような外見の魔獣。


幻術や幻覚を巧みに操り、視覚だけでなく聴覚や触覚まで欺くことができる。その幻を利用し、番に決めたオスに纏わりつく他のメスをおぞましい姿に変化させて自分だけに依存させる。

また、長時間この魔獣の幻術を受けた者は記憶にまで影響を及ぼすが、魔法耐性がある程度あれば問題はない。


何度かまるちゃんの姿を模して主人公にのしかかったことがあるが、主人公はそれがゴンだとはまだ気づいていない。もちろん人型にも擬態できる。

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