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第12話 初めての意思疎通 <デマ情報編>


「(ある程度親睦が深まったところで、次は年齢を聞いてみましょう。見たところ、身長が1.5メートルと小さいので12歳前後でしょうか?)」


『(ふむ、獣人族でそのくらいの身長じゃと9歳くらいに見られるかのう。少なくとも2メートルは超えないと成人扱いされることはないからな)』


「(参考にはならないかもしれませんが、蛇族でその身長なら5歳くらいですかね)」


「(こうしてみると、やはり種族ごとに大きな差があるのだと実感せざるを得ません。やはり、全ての種族の祖先が人間族というのは不思議に感じます……では)」


「【テレパシー】」


 またもや頭の中に声が響き、質問を投げかけられる。


 「異世界から来ましたか?」なんて聞いてくれればすぐに事情を説明できるのに……まあ、そんな都合のいい質問は来ないよな。


【あなたの年齢を教えてください】


「16歳です」


【すいません。こちらからはあなたがなにを言っているのかわからないので指で表して下さい】


 指で表現?


 16歳を指で表現するって難しいな……こうか?


(6歳?)

 フリフリ……

(7歳?)

 フリフリ……

(それとも11最近ですか?)

 フリフリ……


「(うーん、どれを聞いても首を横に振るばかりで正しい年齢がわかりません。名前とは違って、年齢は飲める薬を選ぶための重要な情報ですので、適当に済ますわけいかないですし……)」


「(でしたら、紙とペンを渡してみるのはどうでしょうか?手先は我々と同じように使えるようですし」


『(おお、それはいい考えじゃな。さすがラミィ、わしの秘書をしているだけはあって頭が切れるのう)』


「(では、ラミィさんの作戦でいきましょう。ところで魔力ペンと炭ペンがありますけど、魔道具は問題なく使えるんですか?)」


『(それはまだわからん。ケンちゃんは昨日から寝てばかりだからのう。いい機会じゃ。今ここで試してみるようではないか)』


「(まぁ、ケンちゃん様が寝ている原因はルナ様が無茶したせいなんですけどね)」


『(それは言わんでくれ...)』


 ひょい……


 年齢をうまく伝える方法を考えていると、ダリスさんがゴツゴツして光沢のある棒と、真っ白なホワイトボードのような板を渡してきた。


『これを……こうじゃぞ!わかるかのう』


 ぽかーんとしていると、手で空中に何かを書いているようなジェスチャーをしてくれている。


 もしかして、これってペンのような物なのか?


【ではこの魔力ペンにあなたのエアをチャージしてパージする準備が出来たらアブチョベットしてください】





....................え?なんて?



【ああもちろん。あなたの体内で生成されたオーラでローリングした物でパージしてアブチョベットする方法でも問題ありません】


 ごめん意味がわからない。


 さっきから平然と出てる『アブチョベット』って何?初めて聞く単語なんだけど。


「いや、とりあえずやれるだけやろう」


 三人に凝視された状態で何もしない訳にはいかず、とりあえず普通のペンみたいに書いてみる。


 カキカキ……うん!何も出ない!


「(ケンちゃん様が書こうとする意思は感じられますが、文字が浮き出ませんね。ふふ、そのしょんぼりとした顔もとても可愛らしい。私の尻尾で全身を巻き巻きして慰めてあげたくなります)」


「(ふむ、どうやらケンちゃんは魔法具を使えないようです。念のためテレパシーで二通りの方法を示しましたが反応がありませんでした)」


『(そうか、文明社会で生きておったら赤ちゃんでも簡単な魔法具は使えるんじゃがのう。一体ケンちゃんはいつから魔物に育てられたんじゃ?)』


「(それについては、本人が言葉を覚えた後に改めて聞いてみることにしましょう。とりあえず、魔力を必要としない炭ペンと紙を持ってきたので、次はこれに書いてもらいましょう)」


『(では。魔力ペンは先端が尖っていて危ないから回収するぞ)』


「あ……」


 何もできない自分が悔しくて、ペンに力を込めたりペン先をじっと見つめていたが、結局なにもすることが出来ずに取り上げられてしまった。


 ひょい……


「ん?今度はなんだ?」


 しょんぼりとした気持ちになったが、代わりとして元の世界とは些か形は違うものの、子供の頃から馴染みのあるえんぴつと自由帳を手渡される。


 懐かしいなぁ……昔、誰に見せるでもなく自由帳に漫画とか書いてたっけ。


【この紙に年齢分の線を引いていただいてもいいですか?】


「よかった……もしまた『アブチョベット』みたいな意味不明な単語が出てきたら確実に発狂してたよ」


 とりあえず、正の字だと分かりにくいと思うから、シンプルに5本間隔で線を引いておけばいいのかな。



カキカキ.....



「(ありがとうございます。えっと……いち…に…さん…し…………なるほど16本……16!)」


『(ダリスよ。いきなり線をみて何を驚いておるんじゃ?)』


「(い、いま年齢の数だけ線を引くように頼んだのですが、16本も線を引いてあって……)」


「(はああぁぁ!?こんなに小さいのにもう大人なのか!……え、じゃあ何か?ケンちゃんは『もう赤ちゃん作れそうな体だね♡』ってことなのか!!)」


「(16歳なのでおそらくは…)」


『(よし服を脱がせ!今すぐ交尾だ!)』


「(待ってくださいルナ様!こちらの質問が悪かったのかもしれません。もしかすると"はぐれ"の影響で年齢の数え方が違う可能性もあります。一度ここは質問方法を変えてみてはどうでしょう?)」


「(わ、わかりました……テレパシー)」


【えーと……あなたが産まれてから、何回気温が熱くなったり寒くなったりを繰り返していますか?正確に教えてください】


 ん?どういうこと?


 質問の内容が回りくどくて、なにを聞かれているのかよくわからない。


 異世界のなぞなぞか?一度冷静になって考えよう。


 まず、気温が熱くなったり寒くなったりを繰り返す。


 つまり、夏と冬を交互に繰り返した回数ってことだから……結局一年が経過した回数ってことだよな?


 それで産まれてからって考えると……普通に年齢のことじゃないか?


 でも年齢ならさっきも聞かれたから、やっぱりこの質問はなぞなぞか?


 うーん、あまりしっくりこないけど、他に思い当たるものがない。とりあえずまた、年齢と同じ数だけ線を引いてみよう。


 カキカキ.....


「(16本……年齢と同じ)」


『(いや、さっきはつい興奮して交尾しようとしたが、冷静に考えたらこの大きさで16歳なわけなかろう!一昨日切り伏せた人間族のほとんどが2メートルを超えておったぞ!)』


「(ルナ様の言う通り、大人の人間族の平均身長は2メートルを超えていたはずです……もしかすると、人間族はオスメスで身長が異なる種族なのかもしれません)」


「(うーん。サンプルがケンちゃんしかないからわからないです)」


『(ならケンちゃんが大人な可能性は十分あり得るのか……ん?ちょっと待ってくれ)』


「(ルナ様大丈夫ですか?凄まじい量の汗をかいておりますけど)」


『(いや、そうなるとこの情報が魔王様に知られるのはまずくないか?先ほどの会議では大人になるまで様子を見ると言っておったが、もう既にケンちゃんは大人じゃぞ?)』


「「…………」」


 ダッ!


『(あ、こらダリス!)』


「(魔王様!この人間族のオスは今からでも子作り交尾が出来ます!至急魔王軍全員で子作りしましょう!)」


『(待て!待つのじゃ!お主が魔界を発展させて人間族をいち早く滅ぼしたい志を持っているのはよ〜く知っておる)』


「(なら今すぐ離してください!エルフ族と人間族は絶対滅ぼします!)」


『(だ、だが、お主はケンちゃんが種馬にされ、泣きじゃくる姿を見てその罪悪感に耐えられるのか?それに、うまくいけば私たちだけでこの子を独占できるかもしれんのじゃぞ!)』


 ビク!


「(そうです!ルナ様の言う通り。ケンちゃんが大人だというのを知っているのは我々だけ。じっくりと楽しんでから、魔王様に報告しても問題はないはずです!)」


「(ケンちゃんを独占……あんなことやこんなことをやりたい放題、孕み放題)」


『(そうじゃ!それにお主が好きと話してた公開……あれ?なんじゃっけ?)』


「(私を見下していた相手の前でオスと交尾して、誰よりも早くママになる瞬間を見せつける公開ママウントプレイ)」


『(そう、それじゃ!内容は理解出来んが、それもケンちゃんをうまく説得すればやりたい放題じゃぞ!)』


「(ぐ……わかりました。病のこともありますし一旦このことは聞かなかったことにします)」


『(助かるのじゃ)』


 なんか年齢を紙に書いてから3人が尋常じゃない慌てっぷりを見せているが大丈夫だろうか。


「(待てよ。もうケンちゃんが大人で孕みたい放題なら、別に今からでも交尾していいのでは?…………よし、お二人にばれないように(ひそひそ)」


「【テレパシー】」


【こほん……では今から健康診断をするので服をぬいでください。上着からゆっくりとめくるような感じでお願いします】


 どうやらこれから健康診断をするらしい。


 助かった。渡されたノートにハートを描いて心臓が悪いことを伝えるべきか迷っていたが、この流れなら好都合。


 元の世界では「未知の病」と切り捨てられ、医者にさえ匙を投げられたこの病も、スライムに襲われた傷が一瞬で治るこの世界なら治るかもしれない。


 そんな希望がふっと湧き上がり、僕は言われた通りに服を脱いだ。


 ぬぎ……ぬぎ……


『(ケ、ケンちゃん!?ど、どどどどうしたんじゃ!急に服を脱いで!まさかわしと交尾したくなったのか!おほぉ♪交尾チャンス♪交尾チャンス♪1発で孕み確率1/3の激アツじゃ!)』


【いいですよぉ……続いてダリス・()()()()()とゆっくり言ってください】


 ラヴァイス?なんだろう始めて聞く単語だ。


 他の言葉は、聞こえてくる度にすぐに意味が頭に浮かぶのにこの言葉だけは意味が理解できない。


 先ほどの『アブチョベット』の時とは違い、言葉に意識を向けるとまるで妨害されているかのようにモヤがかかる。


【はぁ……はぁ……()()()()()は感謝の言葉みたいなものなので気にせず名前の後に発音してください。さぁはやく!】


「ダリス?だいすき(ラヴァイス)


『(は?)』


「(え……え?)」


「(どうやらケンちゃんは私に一目惚れをしたようです。仕方ありませんので今からここで私とケンちゃんが交尾します。お二人とも早くこの部屋から出て行ってください。あ、もちろん私たちの交尾が見たいっていう趣味をお持ちならここにいてよろしいですが♡)」


『(な、ケンちゃんがお前なんかに一目惚れするわけなかろう!ケンちゃんはわしのようなモフモフした耳と尻尾が好きなんじゃ!どうせお前が変な事を吹き込んだんじゃろ!)』


「(私が吹き込んだという証拠がないです。まったく、モテない女の僻みは見苦しいです)」


『(ぐぬぬぬぬ)』


「(それに知ってます?普通のオスって10秒以上好きでもない女性と目があったら恐怖で死んじゃうんですよ?でもケンちゃんは10秒どころか1分以上も私を見つめてくれてます。これはつまり『僕のことを襲って♡滅茶苦茶にしてパパにして♡』っていうオスの求愛行動なんですよ?)」


『(黙れ!陰キャダークエルフのくせに生意気な!今から表へ出ろ!ぶっ殺す!)』


「(一人で行ってきてください。ちゃんと初めての様子は魔道具できっちり記録して送ってあげますので)」


「(ラミィ!今すぐ呪文詠唱の準備をしろ!避けたところをぶん殴る!)」


「は!【ブリザードケージ】」


「(え?)」


 カキ―――ン


 服を脱いでじっと待っていると、目の前の女性が氷像となって凍りつく。周囲の空気までひやりと冷え込んで、僕は思わず肩をすくめた――ちょっと寒い。


『(ふははは!いい気味じゃ!そういえばお主は戦闘はからっきしじゃったのう。避けたところを狙うまでもなかったわい)』


【同じ魔王軍を一切躊躇なしに魔法攻撃するなんて頭がおかしいです】


『(おー、これがテレパシーか。なかなか不思議な感覚じゃのう。それにしても……ぷぷぷ、残念じゃな。氷漬けになっている状態では交尾などできぬからのう』


【ぐぬぬぬ……】


『(そうじゃ!優しいわしがお主の代わりにケンちゃんと交尾してやるとするかのう。しっかり目に焼き付けるのじゃぞ?)」


【やめてぇぇ!!!嫌いな奴の前で交尾するシチュエーションは好きだけど、見る側なんて経験したくないぃぃ!!脳が!脳が破壊されるぅぅ!!!】


「るーナ?」


『(おお、どうしたんじゃケンちゃん。交尾なら少し待っておくれ。今この氷漬け雑魚エルフの目線をこちらが見えやすいよう調節するからのう)』


「るーナだいすき(ラヴァイス)!」


 がは!


「(ルナ様!急に鼻血を出してどうしたんですか!ルナ様!ルナ様!……幸せそうな顔で気絶してる)」


「ラみィだいすき(ラヴァイス)!」


 ごふ!


「(ケンちゃん、手を握って挙げてください。4人目の赤ちゃんです……よ)」


 ガク………


「…………」



 どうしよう……みんなにお礼を言っただけなのに、鼻血を出して倒れちゃった。


 ダリスさんはなんか凍ってるし。


「さむ!」


 このままだとお腹が冷えちゃうから、お医者さんが来るまでやっぱり服を着ておこうかな。



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