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第7話 聖なる神獣紋の力!

 ゴルドンさんの家から飛び出し、庭に出たところでガルーが元の大きな体に戻る。

 その背中に私が乗ったところで、ガルーは地面を蹴って大きくジャンプする。


 高いところから村全体を見渡すと……真っ黒な骨のガイコツがそこらじゅうで暴れていた!


「あれはダークスケルトンですね! ということは放置された死骸から発生しているのではなく……!」


「我の読み通り、この村のどこかに隠された魔造結晶から生み出されているのだ!」


 魔造結晶(マゾクリスタル)――見た目こそ手のひらサイズの美しい宝石でしかないけど、その中には兵器モンスターを生み出す高度な魔法が組み込まれているんだ。

 しかも魔法を動かす魔力さえ確保出来たら、半永久的にモンスターを生み出し続ける。


 魔人との戦争の時にも苦しめられた存在……。

 それを止めるには魔力の供給を断ち切るか、魔造結晶を物理的に破壊するしかない!


「まずはカタカタとうるさい雑兵を黙らせるか。セフィラ、耳を塞ぐのだ」


「はい、塞ぎました!」


 私が両手で耳を塞いですぐ、ガルーは空気が震えるほどの大きな遠吠えをした。

 爆音が村全体に響き渡り、ダークスケルトンたちがどんどんバラバラのボキボキになっていく!


「ふぅむ……久しぶりだからか、思ったより声量が出なかったな。奴らの骨を砂のように粉々にしてやるつもりだったのだが」


「これで十分ですよ! あそこまでボキボキに骨が折れれば、ダークスケルトンたちも体を組み直すことは出来ません」


 次はこのダークスケルトンたちの発生源である魔造結晶を探さないといけない。

 地面に降り立ったガルーは、鼻をくんくんさせて魔造結晶が放つ特殊な魔力を探す。

 ガルーの鼻は匂いだけじゃなくて、いろんなものを感じ取れるんだ。


「昼間は感じなかったが、今はハッキリと魔造結晶の存在がわかる。夜にしか効果を発揮しないあたり、月の光から魔力を供給しているタイプだろう」


「アンデッド系のモンスターは日の光に弱いですから、夜の間だけ生み出した方が無駄が少ないですもんね」


 話をしつつも、すでにガルーは魔造結晶がある場所へ走り出していた。

 数分後――ガルーが立ち止まったのは、村のすぐ外にある小麦畑の一画。


「……ここだな。この周辺だけ小麦が枯れ果てていることからも間違いない」


 そこの小麦だけ黒ずんでいて、変な匂いもしている……。

 そんな場所でもガルーは気にせず足を踏み入れる。

 そして、枯れている小麦畑の真ん中の土を前脚を使って掘り起こす。


「見つけたぞ……案の定『黒の魔造結晶』だ!」


 真っ黒な土の中から出てきたのは、さらに真っ黒な宝石。

 大人の拳くらいの大きさで、ぼんやりと濁った光を放っている……!


「黒は闇属性の魔力……。こんなものがまだ人が住む場所の近くに埋まっているなんて……!」


「魔人軍の隠密部隊によって、前線から離れた王国の内地にも魔造結晶がばらまかれたとは聞いていたが……。運がいいやら悪いやら、この魔造結晶は不具合で最近まで動かずに眠っていたわけだな」


「そのままずっと眠っててくれたらよかったのに……。まあ、今から永遠におねんねですけどね! ガルー、私たちの必殺技をやりますよ」


「なっ……!? アレをやるのか? まあ、今は周りに誰もいないからよいが……」


 ガルーは目線をきょろきょろ動かして恥ずかしがっているように見える。

 勇者様もよく必殺技を披露してたのに、なかなか慣れないみたい。


「はぁぁぁぁぁぁ……神獣紋(しんじゅうもん)開放!」


 私のおでこに金色の神獣紋が輝くのと同時に、ガルーのおでこにも同じ紋章が浮かび上がる。

 紋章を通して私が持つ聖なる力をガルーに流し込むんだ!


「せーのっ……」


「う、うむ……」


「「聖なる牙(ホーリーファング)!」」


 ガルーの鋭い牙が銀色に輝く!

 その牙で黒の魔造結晶をガリッと噛み砕いた!


浄化粉砕(パージブレイク)!」


 砕け散った魔造結晶の欠片は灰のように白くなり、風に乗って消えていった。

 ここまで完璧に無力化すれば、どうしたって再利用することは出来ない。


 フラウ村にいるダークスケルトンたちも、発生源である魔造結晶の破壊と同時に消滅しているはず。

 これで村の人たちは安心して眠れるよね!


 さて、それはそれとして――。


「ガルー、最後の『浄化粉砕(パージブレイク)』言い忘れましたね!」


「……そもそも、技名をつけて叫ぶ必要があるのだろうか? グラストロもよく叫んでいたが、あれは勇者として兵士を鼓舞(こぶ)するために大げさになっていただけであって、セフィラが同じことをする必要は……」


「何を言ってるんですか! 確かに意味はないですけど……カッコいいじゃないですか!」


 そこに理屈はいらない――。

 ただただ勢いのまま、ガルーの目を見て理解を求める!


 すると、ガルーは頭を素早く縦に振った。

 やった! 納得してくれたみたい!


「これもまたグラストロから受け継いだものと言えんでもないしな。まったく、変なところで影響を受けているのだから……」


「さあ、フラウ村の皆さんに村が安全になったことを伝えましょう!」


 何やらぶつぶつ言っているガルーの背中に乗り、小麦畑からゴルドンさんの家に戻る!

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