第34話 バナナの花が咲く季節
更新が遅くなってすいません!
書きやすさと読みやすさを考慮し、本話やすでに投稿されている話を含め、地の文のスタイルをセフィラの一人称から三人称に変更しておりました!
「ラカタンさん、大事なお話があります!」
今もカウンターの裏に隠れているラカタンに、セフィラは呼びかける。
「オデットさんを早く温泉に連れていくために、彼女が今抱えている仕事を知りたいんです! そして、あわよくば私たちで先に解決してしまいたいのです!」
山の向こうへ子どもたちを送り届けているオデットが、バナンバタウンに戻ってくるまでに仕事を終わらせておけば、すぐにでも温泉街アスパーナへ出発できる。
しかし、セフィラたちは冒険者ではなく部外者であるし、オデットが抱えている仕事をギルドが開示する義務はない。
場合によっては、ギルドのなんらかのルールに触れかねないお願いだ。
ゆえに……ここは情に訴えていく。
「これはオデットさんの理解者であるラカタンさんにだからできるお願いなんです……! 早くオデットさんを温泉でゆっくり休ませてあげたい……! この思いをあなたなら理解してくれると思って、お話をしています……!」
別にセフィラは嘘を言っていない。
オデットを早く休ませたい気持ちは本物だし、その言葉には演技臭さもない。
「……うぅ、私をオデットの理解者やと認めてくれるんか?」
カウンターからひょこっと顔を出すラカタン。
その顔はまだ赤い。
「もちろんです! あなたが語るオデットさんの姿は、とっても芯を捉えています。彼女と共にあの戦争を戦った私たちが言うんだから、間違いありません!」
セフィラは「私たち」と言ってガルーも巻き込んでおく。
ガルーは一瞬驚いた顔をしたが、渋々うなずく。
「そ、そう言われたら、話をせんわけにはいかんやないか……!」
機嫌を良くしたラカタンが立ち上がる。
セフィラの作戦は成功だ――!
「そこらへんのガキならまだしも、オデットの戦友で勇者の娘になら、仕事の話をしても問題ないわ。てか、この仕事の内容は、ある意味そこらへんのガキでも知っていることやし」
「それは……どういうことですか?」
「オデットの仕事は、今バナンバタウンが抱えている大きな問題に関わっとる。この街に住む人間みんな困っとるわけやから、そりゃガキでも知ってるわけや」
「要するに、その大きな問題を解決することがオデットさんの仕事というわけですね」
「せやっ!」
ここまではセフィラの想像通りの内容ではある。
気になるのは、具体的にその大きな問題がなんなのかということ……。
「さて、どこから話そうか……。まず、あんたらはバナナも花を咲かせるって知っとるか?」
思いがけない質問に目を丸くするセフィラたち。
質問に答えたのは、代表のセフィラだ。
「まあ、知識としては知っています。具体的な生態とか、花の形とかまでは……」
「そんなところやろな。今この街を脅かしてるのは、そのバナナの花が飛ばす花粉なんや。この街から少し離れたところに、プラタノ原生林っちゅうバナナの木でいっぱいの森がある。そこから、毎年この季節になると、大量の花粉が街に飛んでくるんや……!」
花粉とアレルギー、つまりは花粉症の知識はセフィラたちにもある。
アレルギー体質の人間が花粉を吸うことで、涙や鼻水が止まらくなり、とっても苦しいということも理解しているが……それが街全体の問題というのは、どうにもピンときていない。
それは体質次第で、個人の問題ではないか……と。
しかし、ラカタンはそういう反応になる前提で話をしていた。
「ふふんっ、プラタノ原生林から飛んでくるバナンバ原種と呼ばれるバナナの花粉は、そんじょそこらの花粉とは悪質さが違うで! 花粉を吸い続けると、ほぼどんな人間でも花粉症にしてしまうんや。いや、それどころか動物やモンスターにさえも、重篤なアレルギー反応を引き起こす……!」
ラカタンはビシッと、セフィラたち二人と二匹を順番に指さす。
「それはつまり……今この瞬間、あんたらも徐々にアレルギー体質になっていっとるということや。バナンバタウンには、すでに見えない花粉が舞っとるからな」
知らない間に、セフィラたちもこの問題の当事者になっているとラカタンは告げる――!




