第14話 山道の出会い
「あっ、あそこ……! 武装した男2人と女の子です!」
私より2歳くらい上に見える金髪の女の子が、投げ網に絡め取られている!
男たちは網を引っ張って女の子を無理やり引きずっていく……!
「セフィラ、耳を塞ぐのだ。我の咆哮で男どもを無力化する」
「はいっ、塞ぎました!」
ダークスケルトンをバラバラにした時の遠吠えと違って、音を放つ方向を絞った咆哮!
それは空気の振動による攻撃で、2人の男を体内から揺さぶって気絶させる。
だけど、近くにいる女の子には何の影響もない。
「……対象の無力化を確認! 周りに他の敵影ありません!」
女の子から少し離れたところでガルーの背中から降り、彼女に駆け寄って絡まった網をほどいていく。
「大丈夫ですか!? 今この網を外しますから!」
「あ、ありがとうございます……!」
女の子の意識はハッキリしていて、服はボロボロだけど大きな怪我はなさそうだ。
「よしっ、網が外れました! どこか痛いところはありませんか?」
「擦り傷がちょっとヒリヒリします……。でも、骨が折れたりはしてないみたいです」
「では、擦り傷を消毒して薬を塗りますね! えっと、応急手当の道具はトランクの……あった!」
水筒の水で傷口を洗い、消毒液を染み込ませたガーゼで傷口に優しく触れる。
その後、軟膏をやさーしく伸ばして擦り込みすぎない程度に広げる。
「はいっ! これでもう安心です!」
「助けていただいた上に治療まで……! 本当にありがとうございます!」
「この男の人たちに捕まっていたようですが……何があったんですか?」
気絶している男を指さし女の子に尋ねる。
「こいつらは人攫いなんです……! 私はとある目的のために一人旅をしていて、その道中にこいつらに捕まり……この山のアジトまで運ばれてきたんです。それからはアジトに監禁されていて……今さっき隙をついて逃げ出したんですけど、すぐにバレて捕まっちゃって……」
そこまで言って、女の子はハッとした表情を見せる。
「あなたも早く逃げた方がいいです! 奴らは子どもばっかり攫って、売りさばこうとしているんです! 私は見た目が幼いからって、大人なのに子どもと間違われて攫われたんですけど、アジトには今もたくさんの子どもたちが捕まっていて……。うぅ……私を追いかけてきたこの2人が帰らなかったら、きっと他の仲間が追いかけてくる……!」
女の子の体は震え、透き通るような青い瞳が揺れている。
とっても深刻な状況なのに、私ったら今は重要じゃない部分が気になった。
「……失礼ですが、おいくつでしょうか?」
「私は20歳です……」
「ええっ!? うっそぉ!? 20歳ぃ!?」
初対面の人に大変失礼な反応をしてしまうくらい驚かされた……!
だって目の前の女の子は私と大差ないか、せいぜい1か2歳上にしか見えない!
これだけ間近で目と目を合わせて会話をしても、自分より12歳も上の女性にはとても……。
身長だって私より拳一つ分くらい高いだけで、声もとっても若々しいし……。
「あの……あなたはおいくつ何ですか?」
逆に私の年齢を聞かれる。
……素直に答えるしかないよね。
「えっと、8歳です……」
「ええっ!? 8歳ですって!? ありえない……大人びすぎてるでしょ!?」
「えへへ、よく言われます……!」
確かに私も年相応なのは見た目だけかも……。
「と、とりあえず話を戻しますね! えっと、この山に人攫いのアジトがあるのはわかりました!」
話を強引に戻し、これからの行動を伝える。
「子どもたちを攫った上で売っているということは、今この瞬間も子どもたちをどこかに運ぼうとしている可能性もある……。なので、あなたを安全な場所に送り届ける前に、アジトにいる人攫いの無力化を優先します。しばらくの間、一緒に来てもらえますか? あと、アジトの場所も教えていただきたいです」
「えっ、でも、大人びてても体は小さいわけで、あなたに人攫いを倒せるとは……」
「安心しろ、そこからは我の出番だ」
女の子……じゃなくて金髪の女性の視界に入らないよう、離れたところで存在感を消していたガルーが寄ってきた。
一緒に移動するには大きい状態のガルーに乗ってもらうしかない。
だから、あえて黒柴犬ではなく普段の姿で出てきたんだ。
「我は神獣ガルム――名はガルーだ。驚かせてすまないが、今は遠回しな話をしている状況ではない。これから我の背中に乗り、アジトを目指す。ちなみに本物の神獣なので安心するのだ。人攫いなど簡単に倒せる」
出来る限り驚かせたり、怯えさせたりしないように話すガルー。
だけど、女性はその瞳いっぱいに涙を溜め……ボロボロと泣き始めた!?
「す、すまぬっ! 泣かせるつもりはなかったのだ……! よしっ、今から怖くない姿になるぞ……!」
「やっと……やっと会えた……神獣様……!」
女性は胸の前で手を組み、祈るようにガルーを見上げた後……私の方に視線を向けた。
「そして……あぁ、神獣の世話係様っ!!」
「私のことまで知ってるんですか……!?」
この人と会った記憶はない。完全な初対面のはず……。
いったいこの人は何者!?




