紺と白
話終えると同時に彩お姉ちゃんが降りてきた。
「お腹空いたー。今日は雅くんがいるから豪華だね!」
「いつもは違うんですか?」
「毎日こんなに作ると真琴さん負担がすごいだろ?毎日食べる時はもう少し軽めなんだ。」
「そうなのよー。食べ盛りの男の子が1人うちにmいれば別なんでしょうけど、3人だと流石に多いの。」
「ねー、冷めちゃうからパパもママも話はそれくらいにして食べようよー。」
「それもそうね。それじゃあ食べましょう。」
真琴さんが手を合わせてニコニコしながらそう言った。
冬仁さんの「頂きます」から始まり食事がはじまった。
真琴さんの手料理はとても美味しくて箸があとま楽なっていた。
話を聞くと真琴さんは学生の頃から料理を作るのが好きらしく、勉強のために料理学校にも通ってたと話していた。通ってからは大変な準備がなければある程度は作れるらしい。
「真琴さんほんとに美味しいです!お母さんが作る料理も大好きなんですけど、真琴さんの料理も大好きです。」
「あら~ほんとに?おばさん嬉しいわ。」
「そんなに雅くんが喜ぶなら私も習おうかな。」
「それがいいと思うわ。作った料理を食べて喜ぶ姿を見るのはとっても嬉しいことだし。その日は気分が良くなるのよ。」
「それじゃあママ明日から教えてね。」
彩お姉ちゃんと真琴さんの会話に僕と冬仁は入ることなく静かに食事を進めながら聞いていた。
それから楽しい食事の時間はあっという間に終わり、今日はこれからどうするのかと話になった。
「雅くんはお風呂どうする?」
「え?」
「こっち来るの結構早かったからお風呂入ってないんじゃないかなって思って。」
「あらあら、まだなら入ってもいいのよ?」
「私はやりたい仕事が少し残っているので、あとでゆっくり入らせてもらおうかな。」
「あ・・・歯磨きとかは持ってきてるんだけど着替え忘れちゃった。」
「パパの洋服じゃ大きすぎるかな?」
「パジャマにするくらいなら問題ないだろう。雅くんはどうしたい?」
「最後の授業が体育だったからお風呂入りたいです。」
「それなら私と一緒に入っちゃう?」
いつもの様にイタズラに笑いながら彩お姉ちゃんは話してきた。
「え!?」
急な質問に僕は動揺が隠せなかった。もうお母さんとのお風呂も卒業して1人で入ってるから本当に恥ずかしいと強く感じていた。
「やっぱり私とじゃ嫌かー。」
「い、嫌じゃないよ!そ、その・・・恥ずかしくて。」
「それじゃあ今度お泊まりすることがあったその時は一緒に入ろうね。」
「え、あ、う、うん。」
嬉しさと恥ずかしさが頭の中でぐるぐる回って小さく返事するしか僕にはできなかった。
そんな中、真琴さんと冬仁さんは本当姉弟の様な掛け合いを見て和んでいた。
「冬仁さん、そろそろ助け舟を出してあげたほうがいいかしら?」
「そうだな。雅くん、お湯が冷めちゃわないうちに入ってくるといいよ。どうしても彩が気になるなら彩は私が引き留めておくよ。」
「えー、なんで雅くんの味方するのよー。可愛い娘の味方してもいいじゃない。」
「男の子は今が大事な時期だからね。さ、雅くん先に入っちゃって。」
「ありがとうございます!」
彩お姉ちゃんの言動にドキドキしながらも風呂に入ることにした。
「湯船に浸かる前にちゃんと頭と体を洗わなきゃ。」
湯船に浸かり、この寝るまでにしたいことを考えていると聞き慣れた声がした。
「雅くーん、バスタオルと着替え置いとくねー。」
「彩お姉ちゃんありがとう!」
沈黙が少しだけ続き、僕は思い切って今心に思っていることを伝えようとした。
「彩お姉ちゃんまだいる?ほんとはね、今日少し怖かったんだ。」
「んー?どうしてなの?」
「お母さんと真琴さんが仲良しなのは知っているんだけど、初めて会う真琴さんや冬仁さん、彩お姉ちゃんに迷惑をかけたりしないかって思ったんだ。そしたら玄関前で足が震えちゃったんだ。でも、彩お姉ちゃんはいつ通りだし。2人もすごくよくしてくれてとっても嬉しかった。」
「雅くんは真面目に考えすぎだってば。」
「そ、それでね!・・・今日は僕にワガママに付き合ってくれてありがとう、彩お姉ちゃん。」
「わ、私のほうこそ・・・。」
「ごめん!聞こえなかった。」
「可愛い弟くんだったり可愛い彼氏だったりする雅くんのためだもの!これくらいは当たり前なの!それに言ったじゃない。もう少しワガママ言っていいよってさ。それだけ!先に部屋で待ってるからゆっくり浸かってきてね。」
そう言い終えながら彩お姉ちゃんは部屋に帰っていった。今日は勇気を出して言ってよかった。
小さな幸せを噛み締めながらも、早く彩お姉ちゃんと一緒にいたい気持ちが強くなり早めに上がることにした。
「彩お姉ちゃんお風呂上がったよ。」
「おー。もうちょいゆっくりしててもよかったのに。」
「実は1年生の頃にお母さんと温泉行った時にのぼせたことがあって、それからあんまり長めには浸からないようにしてるんだ。」
「そうなの?気持ちいいけどそこまでいっちゃうと体に悪いしねぇ。さて、次は私が入ってくるね。」
「うん!いってらっしゃい!」
彩お姉ちゃんを見送ったあと、漫画読みながらも彩お姉ちゃんとの楽しく過ごした時間を思い出していた。
何冊か漫画を読み終えて時計を見てみると30分経過していた。
お母さんもそうだけど女の子はみんなお風呂が長いんだなと思いっていると彩お姉ちゃんが帰ってきた。
「ただいまー。すぐ上がる予定だったんだけど髪乾かしてたら遅くなっちゃった。何してたの?」
「おかえり!漫画を読んでたんだ。僕の家にも同じ作品があるんだけど続きの巻数があったからそれ読んでた。」
「どの作品かな?えーっとその表紙は確か・・・茉莉花かな?」
「それそれ!お母さんの影響だと思うんだけどこの作品が好きなんだー。」
「面白い作品だよね。高校2年生の小さくて可愛い先輩と高校1年生先輩よりおっきくて綺麗な後輩が出会って日常を過ごしていく綺麗な作品だよね。雅くんは後輩ちゃんと先輩ちゃんではどっちがいいと思う?」
少し考えた。考えてる間に彩お姉ちゃんはテーブルを挟んで座りパラパラとその漫画を捲っていた。
考えながらチラッと彩お姉ちゃんの顔を見てこう答えていた。
「後輩さんかなー。」
捲っていた本と止めて僕の方を見てこう言った。
「どうして後輩ちゃんなの?」
「だって・・・。」
恥ずかしくなって漫画で顔を隠すしかなかった。
「なんで顔隠すのよー。」
「だって綺麗だし雰囲気だって彩お姉ちゃんに似てるんだもん。」
恥ずかしさを隠すために目だけだして彩お姉ちゃんを見ながらそう答えるのが精一杯だった。
それを聞いた彩お姉ちゃんはお風呂上がりで桜色なった頬っぺたを抑えながら、僕に頭を撫でてくれた。
「もー!私はあそこまで綺麗でかっこよく出来る女の子じゃないよ。でも嬉しいな。」
照れながら微笑んでいる彩お姉ちゃんを見ることが出来て心から幸福感に満たされていった。
それから一緒にゲームをしたりお喋りしたりしてるとあっと言うまに寝る時間になっていた。
「もう10時かー。そろそろ寝よっか。」
「うん。僕も眠くなってきちゃった。」
「それじゃあ歯磨きしに行こっ。」
ぼんやりとした頭で洗面所に行き、歯磨きをして寝ることにした。
「さてと、雅くんこっちこっち。」
先にベッドに上がった彩お姉ちゃんが手招きをしていた。そこは彩お姉ちゃんの横だった。
嬉しさが優って言われるがままに彩お姉ちゃんの横になる僕だった。
「それじゃあ電気消すね。」
目を閉じて少し時間が流れていった。しかし僕は眠れなかった。
胸の鼓動が彩お姉ちゃんに消えるんじゃないかって言うくらいドキドキしていたからだ。
「雅くんまだ起きてる?」
「う、うん。」
「もっとこっちに来てよ。」
上半身だけ起き上がって彩お姉ちゃんの方へ振り向いた時だった。
「わかった。どうしたの彩お姉ちゃっ・・・!」
不意を突かれ、横になっている彩お姉ちゃんの上に乗っかる形で倒れてしまった。
「雅くんが楽しんでくれて私も嬉しいの。ほんとだよ。私ね、体強くないからあんまり学校行けてないんだ。だから図書館でずっと1人で勉強していたの。そしたら雅くんと目が合って、思い切って話かけちゃった。ほんとはね、私も寂しかったんだ。雅くんと楽しい時間と思い出が作れて嬉しいの。だから私からもありがとう。」
「彩お姉ちゃん・・・。」
胸にうずくまってる顔を彩お姉ちゃんの方へ向けると、いい香りが鼻を抜けていき、おでこから小さくて優しい感触が体全身に伝っていった。
動揺していたが改めて顔を見ると、お風呂上がりから数時間経っているはずなのに桜色の頬をした彩お姉ちゃんが照れて微笑んでいた。
「目が覚める様なことしてごめんね。雅くんには夢を見る時間が必要だかたもう寝ましょう。」
「う、うん。」
「このまま上で寝る?」
こんなタイミングでも意地悪をしてくるなんて。
「流石に降りるよ!でもさっきより近くで眠りたい。」
「いいよ、おいで。」
吐息が感じとれる距離まで近くまで寄って僕は眠りについた。
気がつくと朝だった。昨日の夜の出来事が夢であったかの様にまだぼーっとしていた。
「雅くんおはよー。」
「おはよう。なんだかまだ眠いや。」
「お母さんが来るまでうちにいる?」
「んー、今日はお母さんの買い物のお手伝いしなきゃいけないから。帰ろうかな。」
「そっか。もう少し一緒にと思ったのに残念。」
「また明日学校が終わったら図書館に行くよ!」
「わかった。それまでは自分の勉強しているね。」
そう言い終えると帰る準備を彩お姉ちゃんは手伝ってくれた。本当は僕も一緒にいたかった。
「ママー、雅くん帰るってさー。」
「あら、そうなの?簡単にだけど朝ごはん作っちゃったからこれだけでも食べていってね。」
「真琴さんありがとうございます!」
朝ごはんもご馳走になり、僕は帰ろうと玄関まで足を運んだ。
「雅くんまたきてくださいね。彩も冬仁さんもみんな大歓迎だからね。」
「はい!冬仁さんにも挨拶したいんですけど、もう仕事に向かったんですか?」
「そうなのよー、あの人は朝が早いから。」
「それじゃあ今度お邪魔する時に挨拶します。」
「雅くん明日いつもの図書館で待ってるね。」
「うん!お邪魔しました。」
「バイバイ雅くん。」
2人に見送られながら僕は家に向かった。
家に着き、部屋で勉強をしているとお母さんが帰ってきた。
「雅ただいま!」
「お母さんおかえりー!」
「彩ちゃんとのお泊まりはどうだった?」
「とっても楽しかった!ご飯もお母さんが作る料理とは違った味がして美味しかったんだ。それからそれから!」
一番嬉しかったことは他にあったが、彩お姉ちゃんとの2人だけに秘密にしていたかった。お母さんには申し訳ない気持ちでそのことは言えなかった。
「よかったじゃない。真琴さんの料理ってとっても美味しいものね!今度なにかお礼に持っていかないといけないね。」
「僕が持って行く?」
「職場で会うから大丈夫だよ。あー、彩お姉ちゃんに会いたいの?」
さすがお母さん、僕の考えはお見通しだった。でも今はもう恥ずかしがらずに胸を張って言える。
「うん!そうだよ!彩お姉ちゃんと一緒にいるの楽しいんだ!」
「優しいお姉ちゃんが出来てよかったわね。よし、お話はこれくらいにして買い物に行く準備するわよ。」
「うん!」
それから買い物は順調に進み、衣類コーナーへと足を運んだ。
「お母さん重たくない?大丈夫?」
「これくらいなら大丈夫だよ。そういえば、そろそろ彩お姉ちゃんの誕生日じゃない?」
「そうなの?」
「この前真琴さんが誕生日をどうするかって話してたから間違いないわ。雅これでプレゼント買って渡すと喜ぶわよ。」
「こんな大金で?でも何買っていいかわかんないよ・・・。」
「そうねぇ・・・普段使いの物だったら嬉しいんじゃないかな。」
「普段使いの物?」
「例えば私とかだった、まだまだ寒いからマフラーとかストールとかかな。彩お姉ちゃんは日頃どんな感じの服装してるかわからないから参考になるかわからないけど。」
「普段からどんな・・・あ!お母さんお店に行ってくるね!」
「なにか見つけたかな?行ってらっしゃい!渡したお金は全部使っても大丈夫だよー!全く・・・亡くなった貴方に似てお姉さんが好きなのは変わらないじゃない。いい思い出が作れるといいわね、雅。」
お母さんからたくさんのアドバイスを貰い、彩お姉ちゃんの格好を思い出し、なにが似合うのか、普段使いで今の時期でも使える物を考えながら衣類店に僕は向かっていった。しかし、いつもはお母さんと一緒に入る衣類店は僕にとっては迷路だった。似たような物が並び、どこになにがあるか見当もつかなかった。
少し怖かったけど、前にお母さんと来た時のことを思い出した。
「買いたい物が決まってるけど見つからない時は定員さんに聞くのが一番早いわね。」
そうだ、店員さんを探そう。首から名札みたいな物をつけてる人を。
そして商品を出し入れしている人がすぐに見つかった。僕は勇気を出して、声をかけることにした。
「あ、あのぅ。」
「いらっしゃいませ、どうしたの僕?お母さんとはぐれちゃったのかな?」
「ううん。お母さんはあそこで僕を待ってる。えっと・・・お姉ちゃんに誕生日プレゼントをあげたいんです。プレゼントしたい物は考えてきたんですけど、物が多くて探せないんです。」
「ここ広いもんね。どれどれ、お姉さんまかせなさい!どんな商品を探してるのかな?それとお姉ちゃんはいくつなの?」
「えっと、寒い時に被る帽子とマントみたいなあれ!」
「んー寒い時被る帽子は・・・ニット帽ね!あとマントはたしか・・・ストール!同じ場所にあるよ。こっちこっち。」
「名前わかんなかった。お母さんが言ってたストールってこれのことだったんですね。あとお姉ちゃんは高校1年生です。」
「高校1年生かー、ってことはあんまり大人すぎるのはダメよね。色はどうだろう。そのお姉ちゃんはm綺麗な感じ?それとも可愛い?」
「お姉ちゃんはとって綺麗です!」
「おっけー!それじゃあこの辺りかなぁ。あと
色だね。」
「色は・・・。お姉ちゃんは僕より色白だしどうしよう。」
「無難に人気な色かな、どうしよっか。」
「じゃあストール?白色でニット帽は・・・あの高校生が着てる制服の色が欲しいです。」
「えーっとこれとこれでいいかな。はい、どうぞ!」
「お姉さんありがとうございます!」
「折角だし私がレジしようかな。あ、ちょっと待ってよー、あとこれもあったら嬉しいんじゃないかな。」
小さな紙に店員さんがなにかを書いて渡していうれた。
「お姉さんこれはなに?」
「これはリップクリームだよ。まだ肌寒くて唇も乾燥すると思うから喜んでくれると思うよ、あとこの名前のやつは薄いピンク色で可愛い。隣のドラッグストアでよく買って帰るからまだあると思うよ。頑張ってる君にサービスしちゃう!この商品は預かっておくからリップクリームを買ったらまたここに来てね。私は椿って言うから、探してもいなかったら他の定員さんに話してみて。」
「お姉さんありがとうございます!」
店員さんのアドバイスを貰い、リップクリームも購入して店員さんの所に戻っていった。
「この袋に商品とリップクリームを入れて、リボンも結んでっと・・・。うん!完成!」
「すごい!喜んでくれるといいなぁ。」
「君の頑張りは伝わるから大丈夫!お姉さんが言うんだもの!」
「はい!忘れる前にお金払わなきゃ。」
「あ、てっきり支払ってあるもんだと思って忘れてた!はいお釣りとレシートね。いつ渡すかわからないけど頑張ってね!」
「うん!バイバイ!」
早く明日にならないかなと心躍らせながら僕は足早にお母さんのところへ帰っていった。
「珍しくめんどくさがらずに包装してあげたわね。」
「そりゃあそうでしょう。初めての恋心に頑張ってるんだから応援したくなるのは当たり前でしょ。」
「それもそうね。陰ながら応援してあげますか。」