姉妹とルームメイトとのお茶会
「「お邪魔致します」」
お茶会の約束した時間ピッタリに2人はやって来て、2人共とても綺麗なカーテシーで挨拶をしてから、部屋に入ってきた。
私の前だからそこまでしなくて良いのにと思うものの、やはり王城の中だからなのか礼儀正しい。特にエラの動きは別人かと思うほど洗礼されていた。どうやらランカスター公爵家の公女に直接指導されたことで、洗礼されたようだ。
「ロゼリア様、エラ様、お待ちしておりました。こちらのお席にお座りください。只今お茶をご用意致しますね」
「え、ルナが給仕しているの?」
「はい!! 私、少し前からアナスタシア様の専属侍女になりました」
ロゼリアが驚くのも無理はないだろう。なんせ前に会った時は王妃付きの侍女として出会っていたのだから。
私がアレク様と婚約した後、その話を聞きつけると、ルナは王妃様に私の侍女にならせて欲しいと直談判したらしい。王妃様はその熱意に負けて、私の侍女の座を勝ち取ったと言っていた。今では私が1番の侍女だからと謎に胸を張って宣言している。
そんなことを聞かされたのは、ルナが私の侍女になった後だから大変驚いたけど、凄く嬉しかった。だって友人が常に傍に居てくれるって、これ以上になく安心だもの。王妃様には少し申し訳ないけど、感謝している。
「ルナ、お茶を淹れたら普通に一緒に喋ろう。今日はそもそもルナお休みだし」
「でも流石に侍女としている私が一緒になるのは不味くない?」
「私も一緒に話したいわ。今はリアと呼んでよ」
「ロゼリアお姉様、侍女さんと仲良いんだ。羨ましい〜。私も混ぜて。私のことエラって呼んでね。私もルナって呼びたいー」
「エラありがとう。じゃあお茶淹れたら女子会に混ざる」
私達はもう女子という年齢ではないけど、女子会でいっか。折角団らんの場が出来たのだから、楽しまないと。
ルナがお茶を手際良く淹れて、席について女子会が始まった。
「アナスタシアお義姉様、ロゼリアお義姉様、婚約おめでとう!! ようやく直接言えたよ」
「エラもヴィオル卿と婚約したわよね、おめでとう」
「私からもおめでとう。あ、勿論お姉様も殿下との婚約おめでとう」
「私からは3人共におめでとうと言わせて」
ここで一斉にお祝いの嵐だ。戦争の後処理が落ち着いたからと、一気に婚約の話が進んでいるのである。まあ、何とも私は王太子で、エラが第2位王位継承者で、ロゼリアが侯爵令息の騎士団長と、凄い組み合わせであり、自分も含めて驚かざるを得ない。
「えっと、正式に婚約されているのはリアだけ? 2人はまだ正式ではないんだっけ?」
「相手が王族だからね。婚約するだけでも時間がかかるんだ。あ、でも私は来月には正式に婚約するよ。多分式を挙げるのは半年後ぐらいかな? アナスタシアお義姉様はもっと時間かかりそうだけど」
「そうね。そもそも正式な婚約までの話が具体的に出てないから後2・3ヶ月は少なくともかかると思う。ロゼリアはどうなの?」
「私の所は半年もしない内に式を挙げると思う。なんか侯爵様達が凄い乗り気で早く式を挙げたいみたいで」
婚約した時期はほぼ同じだと思うけど、式の挙げる時期が全員違う。まぁ、騎士団長は高位貴族ではあるけれど、王族ではないから比較的早く事を進めようと思えば出来るのだと思う。ヴィオル卿は王族だけど、そもそも2人は戦争前から話が出来ていたみたいだから、そこの分早いという感じなのだろう。
私は本当にまだまだ話が纏っていないので、式を挙げるのは普通に1年以上先になりそう。その分準備が出来ると考えたら良いのだろうけど、少し2人が羨ましく感じてしまう。
「やっぱり王族・貴族は大変ね。私のところは来月ぐらいにはもう籍入れようってなっているのに」
「え、いつの間にそんな話になっていたの? 少し前にプロポーズされたと言ってなかったっけ?」
「うん、1ヶ月前にプロポーズされて、それで1週間前にまずは私の方に挨拶してもらったの。来週はテリーの方に挨拶しに行くから、それが終わったら籍入れようってなってんだ」
テリーとはルナが2年間付き合っている恋人の王城の文官だ。
それにしても私達と違ってあまりにも話が早すぎる。確かに庶民と貴族だと早さが違って当然と言えば当然だけど、それでもやはり驚かざるを得ない。
「ルナは婚約せずに結婚するってこと?」
「エラからすると不思議かしら? 庶民って婚約なんかまずしないし、そもそも結婚したい時に結婚って感じよ。私達も例外じゃないわ」
「でも式とか準備しないの?」
「式ってお金が多くかかるから、そもそも挙げないところも多いのよね。なんか教会で人々を集めておめでとうって言って終わりみたいな。それに式って、貴族と違って大抵結婚した後にするし」
確かに王族・貴族と庶民の結婚の仕方は大きく異なる。
王族・貴族は、そもそも周りに何処の家門と結婚したのか知らせる必要があるため、前もって準備を行い、盛大に式を開く。
その一方で、庶民の場合はその領地で知ってもらえたら良いし、そもそも恋愛ですぐに別れたり、逆に結婚したりと、貴族みたいに婚約者がいない自由恋愛だから、籍を入れて夫婦という認識になるのだ。そのため、式をわざわざ挙げる必要もなく、挙げたい人だけ挙げている。
私はそのことを知っていたため、話が早すぎることには驚いていたが、その形式には驚きもしなかった。ただエラはそのことを知らなかったので、大変驚いたのだろう。
「じゃあルナは式を挙げるつもりはないの?」
「うんん、私達は挙げるつもり。幸いお互いにお金を稼いでいるからね。まあ式は籍を入れてから1・2ヶ月後かしら?」
「じゃあ私も式呼んでよ。参加したいわ」
「え、リアを? でも悪いわ。私達の領地は共にとても遠いの。ここで祝ってもらえるだけで十分よ」
ルナの話によると、2人の領地は共に馬車で丸1日かかり、また場所が真反対であるため、続けて行くことは出来ないらしい。
遠いと言うものだからどれ程かかるのかと思ったけど、それぐらいなら想定内だ。案の定2人共同じことを思ったようで、より乗り気になっている。
「私達の領地も同じぐらいかかるもの。全然慣れているわ」
「それぐらいなら是非参加したいな。あ、勿論迷惑じゃなければだけど……」
「あら、エラも? そんな迷惑だなんて、寧ろ嬉しいわ。だけどヴァーンズ領って、そんなに遠いの?」
ルナは大変目を瞠って驚いていた。自分の所でも十分遠いのに、同じくらい遠いなんてというところだろうか。確かにヴァーンズ領は、本当に建国初期からあるから知名度はある。だから王都に近いと思っていたのかもしれないけど。
「まあ、田舎だからね。私なんて子爵家の娘だけど、全然贅沢なんてしてなかったの。まあ、小金持ちぐらい? 多分お義姉様達の方がお金持ちだったでしょう」
「まぁ確かにエラちゃんの所よりも裕福な暮らしをしていたのは認めるわ」
「でも、それは男爵家としてじゃなくて、カペル商会の収入で生活していたからよ」
「商家の方が裕福って意外だわ」
ヴァーンズ家では本当に昔から治めていた領主だから、他のことをする必要もなくここまで来たもの。だからどうしても領民から貰える税に限界があって、それ以上の収入を得ることは無理なのよね。
その一方でカペル家は、元々商人で大きくなって貢献したことで男爵という爵位を貰えただけで、収入はいくらでも伸ばせる商家には変わりなかったから、裕福な商家って感じだった。
まあ高位貴族だったら基本的には凄く裕福だろうけど、普通の貴族は儲かっている商家よりも慎ましい生活をしていることも多い。でもやっぱり貴族=裕福のイメージは強いだろうから、ルナが驚くのも納得だ。
「じゃあリアとエラは招待するわね。私の領地の方で良い?」
「「ええ、勿論」」
「ルナ、私も呼んでよね」
「でも王太子妃教育で大変でしょ?」
「もう少しで終わるし、どうにかして調整するわ」
「分かった。でもルームメイトとして紹介するね。流石に王太子妃と言ったら混乱招きそうだから」
こうして恋バナを中心に盛り上がり、4人であっという間にお茶会は終わったのだった。
◇◇◇◇◇
「ルナ、招待してくれてありがとう」
「素敵な領地ね。長閑で落ち着くわ」
「ここで思いっきりポムと走り回りたいぐらい」
あのお茶会から1ヶ月半後、私達はルナの結婚式に参加するため、ルナの実家がある領地にやって来た。領地はヴァーンズの小さいバージョンと言った感じで、親近感も湧くし素敵な所だ。エラなんて愛馬と走りたいとまで言っており、微笑ましく感じられた。
「3人とも挨拶してくれて嬉しいけど、そろそろ着替えなきゃいけないから、また後でね」
ルナは満面の笑みを浮かべて立ち去った。どんなドレスなのか楽しみで仕方がない。
30分ほど待っていると、ルナの母が私達を呼びに来て、私達は彼女が居る部屋に向かった。
「ルナ……とても素敵。本当に綺麗よ!!」
ルナのウェディングドレス姿を目の当たりにすると、その美しさから声を上げざるを得なかった。フリルたっぷり使われたミニ丈のドレスであり、明るくて可愛いルナにピッタリだ。また、肌を見せることを良しとしない貴族ではまず見ない種類だったので、新鮮さも感じた。
こんな綺麗な姿の友人を見れて幸せだ。本当に来れて良かったと思う。
それから式が始まり、主役の2人が神父の前で誓いを立てて無事に終了。参加者はルナの家族は勿論のこと、近所人達もこぞってきており、100人を超える結婚式であった。
訪れていた人達の多くはニコニコの笑顔だったが、1人でいる男性達は皆涙を流していたのだ。そのことについてルナは泣くほど祝ってくれたのかと喜んでいたが……多分違うだろう。きっとルナが結婚したことへの悲しみだと思う。それもルナは自分がモテていることに自覚がないから質が悪い。まあ、水を差したくないから言わないけど。
何せ多くの人の前で素敵な結婚式を出来たのだ。
ルナ、本当に結婚おめでとう!!




