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王妃様からの頼み事


「今回の夢は、アナスタシア嬢を呼ぶためのものだったのね。きっと国の手助けをして欲しいというメッセージだったのよ」


 やはりそう考えるのが自然だろうか? 私は自惚れているのではないかと思いながらも、王妃様と同じことを考えていた。少なくとも私の予知夢がなければ、今回の戦いはより苦戦していたのは間違いないだろうから。

 もしあの招待状が届かなければ、例え私の方でブラウン様の予知夢を見ていたとしても、何も出来ずにただ心の中で心配するだけで終わっていたに違いない。

 でもきっとそれは私だけではない。魔女として活躍したというエラも含まれているだろう。なんせあの舞踏会が無ければ、ヴィオル卿とも出会っていなかったのだから、私とエラ共に舞踏会に呼ばれたのかもしれない。


「でも私にアナスタシア嬢と強さは違うと言え、同じ能力があるのは嬉しいわ。これから仲良く出来そうね。ねぇ、私もアナちゃんと呼んで良い?」

「あ、はい。お好きにお呼びください」

「じゃあアナちゃんこれからもよろしくね」

「はい、よろしくお願い致します。王宮侍女として精一杯務めさせていただきます」


 私もこんな近くに同じ能力者いることは素直に嬉しく思う。その相手が王妃様であることは恐れ多いけど。

 でも急に呼び方を変えられて驚いた。本当に都市部では愛称が好きなのだとここでも実感させられる。と言ってもこれから王妃様と会うことはほぼ無いだろから、わざわざ呼び方を変える必要もないと思うけど。

 そんなことを思っていると、次の発言で私は自分の耳を疑うことになったのだ。


「アナちゃん、何言っているのよ。勿論王太子妃としてに決まっているじゃない。あ、もしかしてまだアレクシス何も言ってないの? ヘタレだわ〜」

「あ、その言われてないわけではないのですが……何故そのことをご存知なのでしょうか?」

「そんなのアレクシスの態度を見ていたらすぐに分かるわよ。あの子、アナちゃんの時になると態度が変わるもの。絶対に好意を寄せてるって分かったわ」


 まさか王妃様が私に好意があることを知っていたとは驚きだ。というか、王子様はそんなに態度に出ていたの?

 思わずヘタレという言葉に反応して否定したけど、本当にあの返答で良かったのだろうか? 王妃様の言葉の通りヘタレなら良かったのだけど、残念ながら彼は積極的なので私はその時から困惑中なのだ。


「その様子だとアレクシスの想いには応えていないのね。アレクシスのこと好きになれない?」

「いえ、殿下のことはお慕い申し上げております。ただ現在庶民と身分も釣り合っておりませんし、それに私では覚悟もありませんので王太子妃の器として相応しいとは思えません」


 ここは本当に重要なところだ。だからこそ嘘偽りなく本音を伝えた……変な誤解を与えても困るから。でも、何だか苦しいのはどうしてなの?


「私はアナちゃんが王太子妃に相応しくないだなんて思わないわ。だって、仕事でもないのにここまで命懸けで一緒に戦ってくれたもの。それは人々や国のことを思っての行動でしょう。寧ろ国民や国のことを命をかけてでも思えるアナちゃん以上に王太子妃として適任はいないわ」

「しかし、それは私が能力持ち者としての使命だと思っていたからだという節があります」

「それが使命だというのならば、国民や国を守る予知夢を見たアナちゃんにはそれを行う使命ということでしょう。それならば、王太子妃になるのが1番良いじゃない。第一に動けるもの」


 王妃様は私をそのように評価してくれていたなんて……驚きよりも嬉しさの方が勝っている。

 ずっと王子様のあの王太子として強い覚悟を聞いてから、私には絶対に無理だと思っていた。だけど、私にも王子様と同じようにとまでは行かなくても、多少なりとも覚悟は出来ていたのだろうか?

 それに予知夢を通して、国民や国を守る使命があるのであれば、受け入れるのはありなのだろうか?

 でもまだ実感は湧かないし、それに私には決定的に欠けているものがある。

 

「しかし、私は先程申し上げました通り現在は庶民でございます。それに私は元令嬢とは言え、生まれは歴の浅い男爵家の娘ですし、義妹と違い血筋も良くありませんから」

「アナちゃんは身分なんか気にしなくても良いぐらい活躍してくれたじゃない。その功績だけで十分よ。それに爵位は功績や責任に対してあるものであって、歴の長さが血筋の良さに繋がるなんてないから。どうしても身分が気になるなら、ランカスター公爵の養子になれば良いわ。家族が働いているところなら安心でしょ」

「ただ私はもう少しで21になる完全な嫁き遅れなのです。王家に嫁ぐならこの年齢は遅すぎではございませんか?」

「え、嘘!! 18ぐらいだと思っていたわ。でも気にしなくても大丈夫よ。アレクシスだってもう23というか、もう少しで24よ。王族としては遅すぎるもの。まあ、世継ぎのことを考えているならそれも気にしなくても大丈夫よ。全然作れる年だし、最悪駄目だった場合はハワード家から迎えるから」


 個人的に身分と年齢は大きな障害になるかと思っていたから、王妃様の呆気ない返答には大変驚いた。そんなにアッサリと認められるものなのかと。

 正直エラの時は、ヴィオル卿は将来臣籍降下する身であり、エラは王国建設時からある家門と身分は高くないが血筋がとても良い。それにエラは最近16になったと、結婚適齢期である。だからこそ、可能性としてはあり得ると思っていた。

 だけど私の場合は、将来国王となる王太子が相手で、私は歴の浅い男爵の娘でもう20歳超えと、エラの時と条件を比べて全体的に劣っている。だからこそ無理だと決めつけていた。

 もし身分や年齢も気にしないで良いなら、少しは考えても良いのだろうか? 今までずっとそれらを理由にストッパーをかけてきたと言うのに、一気に外れそうだ。

 でも、それでもまだ本当に良いのかと疑う自分がいて苦しい。まだ完全にストッパーが外れることがない。


「ねぇアナちゃん、さっき秘密通路を使ったことに負い目を感じていたみたいだけど、王族に入ればそれも無くなるわよ。それに私もこれからアナちゃんを疑うこともなく安心出来るしね」


 王妃様は凄く明るい声でこれを言っているけど、どう考えても脅しにしか聞こえない。もし王族に入らなければ、万が一勝手に秘密通路を使われた時に、その容疑を真っ先にかけられると言われているようなものだ。

 そんなことを遠回しに言っているのも王妃様も分かって言っているのよね。だけどそこまでする理由が分からなかった。


「どうしてそこまでして……」

「どうしてか……それは勿論王太子妃として相応しいからというのが大きな理由だけど、実はそれだけではないの」


 つい小言で言ってしまったことをしっかりと拾われてしまいしまったと後悔したが、それ以上にどのような理由があるのか気になり、その罪悪感は直ぐ様消えてしまう。


「アナちゃんはアレクシスが初めて女性で興味を示した人なの。あの子は幼い時は勉強、成長しても今度は仕事ばっかりに打ち込んで、全く女性には誰も興味を示さなかった。そんな子だったから、私は王妃としても母親として心配したの。本当にこのまま一生独身なんじゃないかと。でも、ようやくアレクシスにも春が訪れたのよ――貴女という春がね。だから母親として、子どもの恋が実って欲しいと思っているのよ」


 興味を示したのが、私が1番最初だなんて不思議だ。 

 確かに王子様の告白は凄く熱烈的なものではあったけど、それは今1番近い女が私だから好意を寄せてきただけだと思っていた。だから暫くすれば、私のことなんて冷めるだろうと。

 でも、その話を聞くと信憑性が増してくる。そう言えば、王子様が何故私を好きなのか聞いていなかったことに気づく。聞く時間が無かったことを考慮しても、聞かずに無理だと判断したのは私にも過失があった。

 それにここまで息子のことを思っている母親の気持ちを聞いて心が震えないはずがない。確かに私の心は揺れていた。


「勿論王太子妃への覚悟が無かったり、アレクシスを夫として愛することが出来ないなら断って欲しいわ。そんな方に王太子妃や息子を任せられませんから。でも、その気持ちが完全でなくても、少しでもあると言うのではあれば、真剣に考えてほしいの。これは王妃としても、アレクシスの母親としてのお願いよ」


 王妃様は先程とは比べ物にならないほど、真っ直ぐな真剣な眼差しで私も見つめてきた。そこからはその言葉に何1つ偽りがないことが読み取れる。

 それならば私がするべきことは1つだ。


「王妃様、少しの間考える時間をください。真剣に向き合います」

「そう言ってくれると思ったわ。ではどう答えを出すのかは私ではなく、アレクシスに出してあげて。どっちしろ、貴女から言わないと諦めがつかないでしょうから。今日は急に呼び出したのに来てくれてありがとう」


 王妃様は本当にお見通しなのだな。王子様がいつまでも諦めないことを知っている。だからこそ私は王子様を納得させるためにも、今真剣に考える時だとこの時初めて思った。



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― 新着の感想 ―
王妃様、アナのことを愛称で呼んでくれただけでなく、アナにとって驚きの発言まで…今までアナが気にかけていたことも、その一言ひと言に取り払われていく感じですね。「貴女という春」の言葉がとても印象的でした。…
イイお母さんや( ˘ω˘ )
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