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最期への絶望と伸ばされた道筋


「ヴァーンズ嬢……ここにいらっしゃいますか? ……って王妃様!? どうなされたのですか? ……意識を失っていらっしゃる。誰か医師を呼んでくれ!! 至急にだ」


 この声はウィルソン様だわ。もしかして私がこっち方面に逃げたから心配して見に来てくれたのかしら? もしかして何処かに隠れたと思っているの?

 確かにその推理は当たっている。なんせ今現在進行系で王城の秘密通路に隠れているのだから。でも、流石にウィルソン様がいる所でここから声を張り上げるなんて出来やしない。

 でも王妃様の手当てもすぐにしてもらえそうだし、取り敢えず王妃様のことについて心配はしなくて良さそう。なら早く私がこの秘密通路を出なければならない。

 間違いなく私は今心配をかけているのだから。王妃様を外に出した以上、後私はあの出口に向かって出て、ウィルソン様達の前に姿を現すだけで十分だ。

 さっき階段から落ちて身体が痛いけれど、耐えられないほどでもない。さっき行った道を戻って外に出たらそれで大丈夫よ。


 はぁ〜そう言えばさっきここまで来るのにそこそこの時間が掛かったわよね。何か少しずつ痛みが増して来ているから、歩くのがだんだん辛くなっているけど、まだ大丈夫。ここを曲がればあの王太子妃の部屋の前の階段に着くから……。

 嘘…………ここは何処なの? あの階段が何処にも見当たらない。もしかして……何処かで道を間違えた?

 確かに来る時は音を意識してあそこまで行ったから、道順まではハッキリと意識していたわけではないけれど……それでもちゃんと来た道を戻ったはずなのに。

 でも何処で間違えたのかも検討もつかないし、そこが分かったとしても次どう進めば良いのか分からない。どうしよう私……今どうやら迷子になってしまったみたい。

 このままだとこの秘密通路で迷宮入りしてしまう。そんなの嫌だ。でも、誰が助けに来てくれると言うの? あの調子だと王妃様が目覚めるのにはかなり時間もかかるだろうし、あの時意識が朦朧としていたから、私のことを覚えているとも限らない。

 それに王妃様が覚えていても、今私がいる場所を分かるとも思えない。

 だとしたら私は一生このままこの地下通路にいることになる。もしかして、ここで最期を迎えるの?

 今私に出来ることは出口を目指すことのみ。でも、行き方が分からないから、手探りで探すしかない……そう私手探りで探すしかないのだ。


 何でだろう? 義父の子爵が亡くなった時からどんな時も泣きそうになっても泣かなかったのに、今涙を流している。もう絶望的だと分かったからなのかな?

 絶体絶命だと思いたくないけど、今そう思わざるを得ない状況だ。今までどんな時も身内になにかあった時以外は泣かないと決めていたのに、もう自分の人生がここで終わるかもしれないと思うと、涙も出てくるのか。

 私は今闇雲に出口を求めているけど、今残された僅かな体力で出口に辿り着ける自信がもうない。道を間違えた時点でもう無理な気がする。 



 私ここで死ぬ運命だったのかな。

 もしかしたら、王族でもないのに、こんな所に入った罰なのかもしれない。

 いやもしかしたら、私は聖女の力で役に立てていると思ったことが、烏滸がましかったのかもしれない。

 本当は私はここには不要だったのではないのか。

 あぁ〜もう駄目だ駄目だ。

 今身体の増している痛みとこの絶望的な状況のせいで、どんどんマイナス思考になっている。 


 もうそんなことばかり考えたら駄目。とにかく良いことを考えよう。

 私は男爵家で勤めている時は、常に理不尽なことを要求されていた。だけど、王城に勤めることが出来たお陰で、男爵とはスッキリとした形で別れることが出来た。

 それに王城に勤めたことで、とてもホワイトな状況で働くことが出来た。残業もないし、無理な押し付けもないのだから。その上に賃金も上がり、家の生活も楽になったのだから願ったり叶ったりだ。

 あとは、ルナやミナさんなどの良い人達にも出会えた。男爵家では誰とも馴染めず、ただ鉄の女として蔑まれていたから、なんて恵まれているのだろう。

 それに一生出来ないと思っていた恋をすることが出来たじゃないの。相手は決して叶うこともない相手だったけど、好きだと言って貰えて嬉しかった。こうなるのだったら、せめて私も好きだと伝えれば良かった……。最後に王子様に会いたかったな……。

 あぁ、ここに及んで最後に会いたいのが家族じゃなくて、王子様だなんてもう末期ね。


 こんなこと考えちゃ駄目。とにかく進まないと……せめて最後の悪あがきだけでもしないといけないわ。いえ、希望はまだある……まだ出口を目指せる。


「あ……」


 なんでここで足を挫くのよ。確かにもう体力も限界で足が縺れてきてはいたけど、最後の最後でこうなるなんて……。うぅ、立てなくはないと思うけど、痛みを伴ったまま闇雲に歩き続けるのはもう出来ない。

 もう今度こそ本当に終わりだ。歩く気力も湧かない。

 本当にごめんなさい。こんな不甲斐ない娘で、姉で、ルームメイトで、後輩で、侍女で。

 お母様、ロゼリア、エラ、ルナ、ミナさん、王子……いえアレクシス様、本当に迷惑をかけてごめんなさい。



「アナーーー、ここにいるかーーー。いるなら返事してくれーーーーーー」


 嘘……この声は王子様? もしかして助けに来てくれたの?


「アレクシス様!! 」

「アナ!! ここに居るんだな。今そっちに向かう」

「アレクシス様、私は今自分でも何処にいるのか存じ上げないのですが、声の方向で分かりますか?」

「あぁ、だいたい分かった。だから少し待っててくれ」

「はい、ありがとうございます」


 この後ずっとやり取りをしながら王子様に私の場所を特定してもらい、とうとう見つけてもらうことが出来た。


「アナ……見つかって良かった……」

「アレクシス様……本当にありがとうございます。ご心配をおかけして大変申し訳ございません」

「心配するのは当たり前だから謝らないで。寧ろこんな状況に追い込んでしまって本当に申し訳なかった」


 そんな謝るのは全面的に私だ。そもそもあの魔法使いに最初からインクをかけられなかったことが原因だし、その上勝手に王城の秘密通路を使ってしまった。これは許されるべきではないと分かっている。

 でも心配して当然と言ってくれたのは素直に嬉しかった。


「アレクシス様、申し訳ないのですが手を貸してくださりませんか? ちょっと足を捻って1人で立てる状況じゃ……きゃあ」

「手を貸すだけなんてするわけないじゃないか。随分怪我をしているし……私が運ぶ」


 今どの状態かというと、王子様にお姫様抱っこされている。まさに物語で登場するシーンだと言えるだろう。まあ私が本物のお姫様であればの話だが。

 ただの一侍女がこんな状況にあって良いわけないが、今回は私がまともに動けないので、降ろして欲しいとも言えない。

 まさか王子様がここまで近い距離にいるなんて信じられなくて、心臓がバクバクでもするのかと思ったら、そうでもなかった。もしかして体力がほぼゼロの状態だったから感じ方も可怪しく感じるのかしら?

 実際にさっきもうここで人生が終わりと考えていたのが、馬鹿らしくなるぐらい心地よい。このままだと王子様の腕で眠ってしまいそうなほどだ。

 だけどそんなことをしたらこれ以上に迷惑極まりないので、寝落ちしないためにも脳を働かせないと。聞きたいこともあるし、気を紛らすためにも質問しよう。


「アレクシス様はどうして私がここにいると分かったのでしょうか? そもそも私が王城にいることも知らなかったはずですよね?」

「それはウィルソンから聞いた。アナが予知夢を伝えるために王城に来て、それだけでなく魔法使いの姿を暴く手伝いまでしてくれたと。そして、その最中に魔法使いに追われて逃げていたことも」

「でもそれだけで私の居場所が分かったのですか?」

「勿論それだけだと分からなかった。ただ洞窟を見たという予知夢と、母上の頭に巻かれていたハンカチを見て気づいた。あのハンカチは私がアナに贈ったものだったから。それに母上もきっと何かに追われて怪我したのは分かったから、それにアナも巻き込まれたのだろうと結びつけると、自然と答えが出た」


 話を聞く限り、王子様が王妃様の元へ駆けつけた時にはまだ王妃様の意識は戻っていなかったのだろう。それなのに王妃様の考え得る状況と私の状況を鑑みて辿り着いたのにやはり驚かざるを得ない。

 それにしても頂いたハンカチが私の居場所を特定するのに繋がったなんて……本当に持ち歩いていて良かった。


「やっぱりハンカチはお守りだったのね……」

「お守り?」


 あ、心の中の声が思わず漏れてしまった。うぅ〜これはかなり恥ずかしい。このまま放っておいてくれないかな?


「お守りってどういうこと?」


 駄目だった。今度はきちんと質問されてしまったわ。ならば恥ずかしいけど答えるしかないわね。


「その……アレクシス様からの贈り物が大変嬉しくていつも持ち歩いておりました……そのお守りとして。アレクシス様が応援してくださると思うと元気が出ましたから……」

「そうだったんだ。そう思ってくれて嬉しいな。なら今度はもっとしっかりとしたハンカチを贈る。というかもっと他にも贈らせて欲しい。花とかドレスとか……」

「花やドレスは流石に行き過ぎです!!」

「いやアプローチするならこれぐらいはしないと」

「アプローチ……もしかして……」

「私は諦めが悪いから、またアプローチするって言ったじゃないか。また事が収まり次第させてもらう」


 ちょっと待って!! さっきまで殆ど思考が働いていなかったけど、今度ばかりは完全にフリーズした。

 まさか冗談だよね……流石に夢だと思いたい。


 

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― 新着の感想 ―
夢じゃないよ( ˘ω˘ )
必死に王妃を助けながらも、迷宮のような秘密通路で、負傷もしてもう…目が離せない展開に、アナの気持ちがとても伝わってきました。 そこからまさかの…タイトルが印象的ですね。続きもとても気になります。これ…
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