帰り道(仮)
こんな百合を書きたかったんだ(書けたとは言っていない)
TrueEnd。
(夏のホラー2023用)
彼女が、死んだ。
蝉が鳴いていて、日は照り続けていて。二人で過ごしたこの部屋は何も変わらずここにあるのに、彼女だけが消えていた。
蝉が鳴く。日が墜ちる。
彼女の頬を流れた涙が、見慣れたシーツを濡らしていた。
仄暗い森を歩く。沈んだ私と裏腹に、周りの景色は夏と言う時を謳歌している。
私の影を蝕むその木漏れ日が、今はどうしようも無く恐ろしかった。
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彼女に、血族に当たる人は居ない。
所謂捨て子。私にとっては義妹で、要するに親が彼女を引き取った。その両親は事故で他界。
それだけの話。
それがどうして恋仲になったのか。そんなこと、私にも分からない。言語化なんてできる訳も無い。ただただ、愛おしかった。愛してた。
ーー過去形には出来ない。私は彼女を、彼女を失った今でも、愛してる。
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視界が開ける。
木漏れ日を影は置き去りにし、夏らしい、照りつける様な日を私に叩きつける。
灰と、黒と、無機質な色が視界を満たす。
只静かにそこにある、殺風景な石塔の群れをーーいや、たった一つの石塔を、私は一人見つめていた。
黒のバッグに入れていたマッチに火をつける。白の火薬に灯る火が、墓石を照らす。それを蝋燭に移し、紫紺の線香に火を付けた。
私の視界に映る墓石には彼女の名前が刻まれている。それなのに、私の世界に彼女の影は見つからなかった。
遣る瀬も無い。
そんな言葉がぴったりと当てはまるような、そんな気分で帰り道を歩む。
未練がましく彼女を探して、後ろ髪を引かれて。
それでも背を向ける私の背後に、夕日に伸びる影があった。
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昼に登った山道を、覚束ない足取りで歩む。
理由も無く、只ひたすらに。
隣には幼い私がいて、目の前を、まるで道を示すように、かつての記憶が蠢いている。
懐かしい、忘れることのない記憶。
最後に見た景色は、彼女の涙なのだろうか。
それとも私が流した涙、なのだろうか。
その先で、彼女に問う。
「ねぇ、これで、本当に良かったのかな?」
ーー分かる訳無いよ。だってそうでしょ?
建てた塔が、崩れる様な。
「…まだ、ここに居るの?」
ーー街が、煌々としてるのがね、見えるの。でも、私たちの家だけ、暗いまま。
積んだ石が、崩れる様な。
「これが…正しかったのかな…」
ーーフフッ…また言ってるの?結局分からないよ。分かるものも、見えたものも。なーんにも分からない。
私の肉体が、崩れる様な。
でもさ?
■■■ね?
ーーお姉ちゃん。
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昏い。
暗い。
ーーあぁ。
■■■。
前作より真面目に書いたのぜ。
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