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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

帰り道(仮)

作者: 嗟宵

こんな百合を書きたかったんだ(書けたとは言っていない)

TrueEnd。

(夏のホラー2023用)


彼女が、死んだ。

蝉が鳴いていて、日は照り続けていて。二人で過ごしたこの部屋は何も変わらずここにあるのに、彼女だけが消えていた。


蝉が鳴く。日が墜ちる。

彼女の頬を流れた涙が、見慣れたシーツを濡らしていた。




仄暗い森を歩く。沈んだ私と裏腹に、周りの景色は夏と言う時を謳歌している。

私の影を蝕むその木漏れ日が、今はどうしようも無く恐ろしかった。



=========================================================


彼女に、血族に当たる人は居ない。

所謂捨て子。私にとっては義妹で、要するに親が彼女を引き取った。その両親は事故で他界。

それだけの話。


それがどうして恋仲になったのか。そんなこと、私にも分からない。言語化なんてできる訳も無い。ただただ、愛おしかった。愛してた。


ーー過去形には出来ない。私は彼女を、彼女を失った今でも、愛してる。


=========================================================


視界が開ける。

木漏れ日を影は置き去りにし、夏らしい、照りつける様な日を私に叩きつける。

灰と、黒と、無機質な色が視界を満たす。

只静かにそこにある、殺風景な石塔の群れをーーいや、たった一つの石塔を、私は一人見つめていた。




黒のバッグに入れていたマッチに火をつける。白の火薬に灯る火が、墓石を照らす。それを蝋燭に移し、紫紺の線香に火を付けた。


私の視界に映る墓石には彼女の名前が刻まれている。それなのに、私の世界に彼女の影は見つからなかった。




遣る瀬も無い。

そんな言葉がぴったりと当てはまるような、そんな気分で帰り道を歩む。

未練がましく彼女を探して、後ろ髪を引かれて。

それでも背を向ける私の背後に、夕日に伸びる影があった。


=====================================




昼に登った山道を、覚束ない足取りで歩む。

理由も無く、只ひたすらに。

隣には幼い私がいて、目の前を、まるで道を示すように、かつての記憶が蠢いている。

懐かしい、忘れることのない記憶。



最後に見た景色は、彼女の涙なのだろうか。


それとも私が流した涙、なのだろうか。



その先で、彼女に問う。



「ねぇ、これで、本当に良かったのかな?」

ーー分かる訳無いよ。だってそうでしょ?

建てた塔が、崩れる様な。


「…まだ、ここに居るの?」

ーー街が、煌々としてるのがね、見えるの。でも、私たちの家だけ、暗いまま。

積んだ石が、崩れる様な。


「これが…正しかったのかな…」

ーーフフッ…また言ってるの?結局分からないよ。分かるものも、見えたものも。なーんにも分からない。


私の肉体が、崩れる様な。



でもさ?

■■■ね?


ーーお姉ちゃん。


===================


昏い。

暗い。

ーーあぁ。


■■■。








前作より真面目に書いたのぜ。


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