表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
99/127

99 どういう心境?

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 昨日は、ブカスト王国の次期国王陛下夫妻であるマーカス殿下とベルさん以外にも、この大陸の西にあるバッシュ帝国のミハイル皇太子殿下とルナ皇太子妃殿下、そしてノード王国からはレナード王子殿下、更にお隣の大陸にあるパルカラス帝国アーサー皇太子殿下、その隣国ルド公国のマーリン王女さま、海に浮かぶ島々からなる海洋国家パナンのリード総統閣下など、諸外国の賓客が続々とお祝いの言葉と贈物を持って登城した。


私とマクスは手順に則り、挨拶を交わし、プレゼントを受け取り、御礼を述べてから軽く雑談という流れをひたすら繰り返した。


全てが終わる頃には、すっかり疲れ果てて、部屋に戻ると、そのままベッドへ倒れ込んだ。




 それを見越していたのか、今日は本番前日なのに、軽めのスケジュールとなっている。


十時頃、二人でゆっくりと起きて、身なりを整える。


十一時頃、ブランチを取る。


メニューは、コブサラダとヌードル入りのチキンスープ。


コブサラダは新鮮なお野菜と海藻がたっぷりで、ヘルシーだった。


チキンスープも優しい味わいでホッとする。


そして、食後には、フルーツと紅茶が並んだ。


次の予定までは、だいぶん時間が空いているので、昨日いただいたお祝いのリストを二人で確認でもしながら、ゆっくりとお茶の時間を楽しむことにする。


そこへ伝言が届いた。


“大魔法使いサンディーさまを探しています”


 『明日の衣装の確認をしたいのですが、昨夜から迎賓館にいらっしゃらないのです』という内容だった。


「マクス、サンディーのスケジュールは?」


「三日前にナスタを封印する準備が整ったと言って来た。その後は会ってない」


「え、その話は初めて聞いたのだけど?それって、処刑する準備が整ったって事?」


私はマクスに詳細を尋ねた。


マクスは、私から視線を外して、言いにくそうに口を開く。


「んー、キャロル済まない。その件は、既に全てが終わった」


「・・・・・・」


「ごめん、祝い事の前に言うのは、ちょっと気が引けた」


「な、何でそんな重要なことを!」


勢いよく、マクスの袖を引っ張った。


「いや、わざわざ連れて行ってアレを見せるのも、どうかと思って」


マクスは額を手の平で覆って、参ったなという表情を見せる。


私もマクスの様子を見て、落ち着いて来た。


冷静になると、人が殺されるところをわざわざ見たくもないと気付く。


「確かに見たくは無いけれど」


「おれとブカスト王国のアラン国王陛下が見届け人で、父上が執行人、サンディーが魔塔へ封印をした」


マクスは手を下ろし、私の目を見て、淡々と述べる。


「そう、終わったのね。皆さん、辛かったわね」


「ああ、アラン国王陛下は終始厳しい表情だった。そして、最後は俺たちに深々と礼をして帰って行った。複雑な気分だった」


「そうね、複雑だよね。私だけ、何も知らずにのほほんとしていて、本当に申し訳ない気持ちよ」


「結果論だけど、こう言う重い案件にはキャロルを参加させない方がいいと思った。例えば、一緒に参加して、二人で沈み込んだら、立ち直るのに時間が掛かるだろう。おれ一人なら、キャロルが癒してくれるから、直ぐに日常へ戻れるような気がした」


マクスらしい現実的な考え方だけど、それじゃ彼ばかりが心に傷を負いそう。


「それ、マクスだけが損じゃない?私は癒すだけでいいの?」


「ああ、良いんだ。おれの特技は切り替えが早いところだから」


「確かにそうだけど、、、。出来れば黙って行かないで欲しかったよ」


「ごめん。結構、おれも堪えていたのかもしれない。口に出せなかった」


「それが普通だと思う。これからは置いて行ってもいいけど、出来るだけ教えてね」


隣に座っているマクスが、腕を伸ばして私を抱き込んだ。


分かり易く甘えられている感じが、くすぐったい。


「ええっと、それでサンディーさんはどうする?」


「伝言が来るくらいだから、困っているんだろうな。探してみるか?」


「そうね。サンディーさんのことなら、ピピに聞いてみようか」


私は、左手薬指のリングに魔力を流した。


宙から白い毛玉が降って来た。


「キャロル、お呼びですか?」


可愛い巻き毛の白うさぎ、もとい私の相棒、うさぎの妖精ピピが現れた。


「ピピ、サンディーさんが、今、何処にいるか知らない?」


早速、要件を伝える。


「サンディーさんですか?昨日は黄龍の宮殿にいるサキさんに会いに行くと話していました。今日のことは分かりません」


ピピは話し終えると小首を傾げた。


か、可愛い。


「帰って来てないと言うことは、黄龍の宮殿にいるのかも知れないな」


マクスが呟く。


「ミーが確認して来ましょうか?」


「いや、キャロル、スケジュールが二、三時間空いているから、おれたちが行くか?」


「私は別に構わないわよ。だけど、流石に明日のことがあるから、陛下には少し外出するって伝えておいた方がいいと思う」


「分かった。伝える」


マクスは即座に黙り込む。


念話中?


「ピピ、久しぶりね。マックもお元気?」


「はい、先日、大仕事が終わったので、今日は王家の森でのんびりしていました。昨日はサンディーさんと遊びました」


サンディーさんと遊ぶって、何だろう、、、。


「ええっと、どんなことをして遊ぶの?」


どんな事をするのか予想が付かない。


「かくれんぼのような遊びです」


「ような?」


「はい、それ以上はヒミツです!」


ピピはピョンと跳ねた。


むむむ、ヒミツと言われると気になる。


でも、この感じだと教えてはくれなさそうだ。


「キャロル、父上に伝えた。絶対三時間以内に戻るならいいと念を押された。さあ、行こう」


その言葉から察するに、陛下の快諾していない様子が目に浮かぶ。


陛下、ワガママを言ってごめんなさい。


絶対、時間内に戻って来ます!


「では、ミーは帰ります。また用事がある時はいつでも呼んで下さい」


ピピはピョンと飛び上がり、姿を消した。


時間に限りがあるので、私達もすぐに黄龍の宮殿へと転移した。


風景が、カルロ殿下の執務室に変わる。


「うわっ!」


カルロ殿下の部下の方が、目の前に現れた私達に驚いて声を上げた。


「驚かせてすまない。ソベルナ王国の王太子マクシミリアンだ。カルロに会いに来た」


マクスが名乗る。


「いえ、失礼致しました。私は秘書官のサマンサと申します。殿下はいま練武場に居ます。大魔法使い様もご一緒です」


あ、大魔法使い様って、サンディーのことよね?


「サンディーは、やはりここに居たか」


マクスがボヤいた。


「はい、大魔法使い様は、昨夜から殿下と一緒にいらっしゃいます」


サマンサの言い方は、何となく引っ掛かる。


「昨夜からですか?」


私は敢えて、気になる点を口にした。


「はい、ご一緒にお休みになっていた様です」


「は!?」


私とマクスの声が重なった。


昨日のベルさんが脳裏に浮かぶ。


「とりあえず、練武場へ案内してくれないか?」


「はい、こちらへどうぞ」


サマンサは、落ち着いた対応で、私達を練武場まで、連れて行ってくれた。


入口付近で立ち止まり、中の様子を伺う。


サンディーさんが、小柄な女性と何か話している。


カルロ殿下は少し離れたところから、その様子を眺めていた。


「あの女性は?」


私がサマンサに尋ねると、彼は即答した。


「彼女は、サキという黄龍軍の指揮官です」


「ああ、彼女がサキか!」


マクスが声を上げる。


サキと言えば、ノード王国のロザリー孤児院にいた魔法使い少女キキの姉だ。


「入ってみる?」


「そうだな。サマンサ、入っても構わないか?」


「はい、私が先に入りますので、付いてきてください」


サマンサは鉄の格子扉を押した。


ギーという音が響く。


扉の向こうにいた三人は、こちらへ視線を向けた。


「マクス殿、キャロル殿!」


大きな声を出したのはカルロ殿下だった。


彼は、こちらへ向かって歩いてくる。


私達も彼の方へ歩いていく。


「殿下、お客様をお連れしました」


サマンサは、カルロ殿下に最低限の要件を伝えると、「では私は失礼します」と言って、直ぐに去って行った。


そのスピードは、もはや逃げたと言っても過言ではない。


「急に尋ねて済まない。王宮でサンディーが探されている。キリのいいところで連れて帰りたいのだが」


「探されている!?あー、それは申し訳ないことをした。昨夜、サンディーは疲れからか、ここに来るなり眠ってしまったのだ。それを私が起こさず、そのまま朝まで寝かせてしまった。彼女は悪くないから、どうか怒らないでやってくれ。そして、明日は二人のお祝いの日だと言うのに、こんな遠くまで迎えに来させてしまい、済まない」


カルロ殿下は、事の顛末をお詫びと共に話してくれた。


と言うことは、色恋沙汰では無い?


“ベルさん、やっぱり無理かも知れないです”と考えていると、マクスがカルロ殿下に尋ねた。


「サンディーは、何処で寝た?」


突然、刺すような言い方で、ビックリした。


「そ、それは、ちょっと待ってくれ」


カルロ殿下は、サンディーさんに向かって手招きをする。


サンディーさんは、楽しそうな足取りでこちらへ、やって来た。


「あっらー!まーちゃんとキャロちゃん!!明日の準備は終わったのぉ?」


「サンディー、お前を迎えに来たんだよ。行方不明で騒ぎになっているぞ」


マクスは少し怒っているフリをして、サンディーさんに言う。


「えええー!?行方不明って、アタシ、、、。あー、ここに行くって、侍女ちゃんに言うのを忘れていたわぁ」


サンディーさんは、両頬を両手で覆って、青ざめる。


「サンディー、すぐに起こさず済まなかった。この騒ぎの原因は私だ」


「いや、アタシが簡単に眠りこけたのが行けなかったのよぉー!!」


二人は互いに責任を取りたがっているのか、イチャついているのかが分からない。


「サンディー、お前、昨日は何処で寝た?」


マクスは、カルロ殿下に尋ねたことと、同じ内容をサンディーさんに投げ掛ける。


「そ、それは、、、」


サンディーさんは、カルロ殿下の顔を窺う。


何?この二人。


「マクス殿、余りプライベートな事を言いたく無いのだが、貴殿がサンディーの保護者の様な存在であるというのも分かる」


「長い言い訳はいらないんだけどな」


マクスは面倒くさそうに呟く。


「サンディーと私が一緒に寝たと言えば、問題になるか?」


カルロ殿下は真顔でマクスに聞く。


「いや、ならない」


マクスは即答した。


「え、そう言う事なの?」


私がサンディーさんに向かってボソっと言うと、サンディーさんは、カルロ殿下の後ろに回って、背中にしがみ付いた。


「キャロル殿、そう言う事だ」


カルロ殿下は、サンディーさんの代わりにハッキリと言った。


ベルさん、カルロ殿下は思ったより行動的でしたよ。


この衝撃を早く帰って伝えたい。


「はぁ、複雑な気分だな。コレって、娘を取られた気分なのか?エリーだったら別に気にならないもんな。よく分からないけど、取り敢えずおめでとう。仲良くしろよ!」


マクスは不満そうにブツクサと言い捨てる。


「それはいいとして、サンディー、明日の準備がある。離れ難いかも知れないが帰らないといけない」


「はーい、分かったよぉ!カルロ、また来るねー!」


カルロ殿下の背中から顔を出して、サンディーさんは言った。


「あー、それから、サキさーん!アタシ帰るねー!また来るからねー!」


後方に一人で立っているサキへ、サンディーさんは別れの言葉と一緒に手を大きく振った。


サキも大きく手を振り返している。


「じゃあ、帰ろっか!」


再び、私達の方を向いたサンディーさんが、元気良く言った。


「サンディー、これを」


カルロ殿下はそう言って、自身の身に付けていた紗を外して、ふんわりとサンディーさんに巻いた。


「カルロ、ありがとねー!!」


サンディーさんは、ふんわり花が綻びそうな笑顔を見せた。


カルロ殿下も、全てを魅了しそうな微笑でそれを受け止める。


ううう、むず痒い。


美形カップルめ!!


チラリとマクスを見れば、苦虫を噛んだ様な顔をしている。


本当にどういう心境なのかしら?


傍目には、父親みたいで笑えるけど。


「さぁ、行くぞ。カルロ、またな」


マクスが声を掛けると、カルロ殿下が片手を上げた。


次の瞬間、私達は王宮の庭へ立っていた。


あー、時間内に戻って来られて良かった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ