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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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91 犬猿の仲

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 マクスへ向かって、呆れ声で指摘した。


だけど、、、。


直ぐに動かなかったのは、もしや何か考えがあってのことなのかも知れない?


「、、、アイツを急いで片付ける必要は無いんだけど、パレードで王国民に被害でも出されたら困るんだよなぁ」


マクスはテーブルに頬杖を付いてボヤく。


今日はリラックスしているのか、甘えた感じの仕草が可愛い。


「姿が消えたのに、直ぐに探さなくても良いってどう言うこと?」


私もテーブルに両手で頬杖を付いた。


マクスとの距離が近くなる。


まばたきで、銀色のまつ毛がふるふると揺れて綺麗。


「それは、、、聞きたいか?」


うっとり見惚れていた私に、地に這う様な低い声でマクスは話しかけて来た。


その声だけで、あまり愉快ではない話が出てくるのだと予想出来る。


だけど、そういう言い方をされると、余計に理由を聞きたくなるよね。


「やけに勿体ぶるわね」


私は半目で、マクスをジーっと見た。


「半目でも可愛い人って、キャロルくらいだろうな」


目元を柔らかく緩めて、笑いかけられた。


さっきの低い声は何処へ?


褒めて、話をはぐらかして、終わるとかヤダ!!


「気になるから、教えてよぉー」


予期せず、甘えた声を出してしまった。


「ふっ、可愛いから、教えてあげよう。そもそも、ジョージと王弟妃カシアは謹慎中だったって言っただろう?サンディーの指示で、ピピとマックが監視に付いていたんだ。だから、あいつは魔力を吸い取られた状態で逃げたんだよ」


「ナスタ殿下みたいに、高速で回復する可能性は?」


「まぁ、あるな」


「魔石を持っているとか?」


「あるな」


私のツッコミに感情のない顔で、淡々と返事をするのは辞めてほしい。  


一人で、心配し過ぎて、カラ回っている気になってくる。


「もう、マクス!!何でそんなに冷ややかなのよ!!危機感が鈍ってない?早く動こうよ!」


結局、急かしてしまう私。


すると、マクスは、唇の端を片方だけ上げて、ニヒルな笑みをする。


「キャロル。ジョージを捕まえたい?」


「そりゃあ、勿論よ。放って置いたら悪い事をしそうだもの」


「実はさ、父上から動くなと言われた」


「は?」


いや、何で?


「そんなに驚かれるとは思ってなかったよ。いや、おれ、、、」


「おれの続きは?」


早く聞きたいのだけど、、、。


そんなに言いたくない話でもあるのかしら。


マクスはだらけた姿勢を正して、椅子に座り直した。


一体、何なのよ?


「キャロル、おれとジョージの話を少し長くなるが聞いてくれ」


「ええ、勿論。むしろ聞きたいから、どうぞ」


「まず、おれとジョージは一言で言えば、犬猿の仲なんだ。今会ったら、あいつにトドメくらい刺しそうだなと自分でも思うくらいに。だから、今は父上とジェシカさんが動いている」


さっきの頬杖を付いて可愛い様子とは打って変わって、目の前にいるマクスは冷ややかな雰囲気を醸し出している。


「お母様はともかく、陛下が!?マクス、一体、過去に何があったの?」


「んー、二つ大きな理由がある。一つ目はカシア王弟妃とジョージは、昔から何度もおれを執拗に殺そうとして来た」


あ、もしや何度も毒を盛られたって話のこと?


王弟妃カシア様は、カシャロ公爵家の出身だから、息子を玉座に置きたいって、当然考えているよね。


「毒も盛られたし、刺客も数え切れない程、送って来た」


数え切れない程、、、。


マクス、リューデンハイム領にいる私の心配ばかりしている場合じゃないじゃん。


「今まで、何故、そんな人達が野放しになっていたの?」


「まぁ、これは紫の瞳の話が絡んでいて、一様、アイツも王位継承権を持っているから、処罰がしにくいんだよ」


「そんな、、、」


「余談だけどな、アイツがおれの次に紫の瞳を持って産まれた時に、少し揉めたらしい。二人目の紫の瞳持ちをどう解釈すべきかを」


「まぁ、それはそうよね。場合によっては不吉とか言われそうだもの」


「その話もカシャロ公爵家は、自分たちに元々王家の血が入っていると主張して揉み消した」


「はぁ、、、。言いたい放題ね」


ジョージ王子に会ったことは無いけれど、好感度は既にマイナスだわ。


「それから、二つ目。おれとしてはこっちの理由の方が許せないんだよ」


マクスは拳を握る。


冷ややかな能面顔から、少し怒気が出てきた。


もうすぐ般若にでもなりそうである。


「何なになに?」


私は、透かさず合いの手を入れる。


「婚約者選定問題」


「婚約者選定問題?誰の?」


「ジョージのだ。アイツ、いや、カシャロ公爵家は、まずモリノー辺境伯爵家のフローラ嬢を候補に挙げてきた。それを聞いた父上が、モリノー辺境伯は、元王子の血筋である故、ジョージの婚姻相手としては不可とした」


「王より、血族の血が濃くなりすぎるとか、そういうこと?」


私は自信がないので、首を捻る。


「そうだ。ソベルナ王国の王族は、不当に血を濃くすることは禁忌としている。王となる者以外が血を濃くすれば、魔法使いの血統である我が国では碌な事にならない」


「そっかー。危機管理のひとつって、感じなのね」


「ああ、その通り。何度も王族と婚姻関係を結ぼうとするカシャロ公爵家は異端児なんだよ。ソベルナ王国の他の貴族達は比較的穏やかで真面目なんだけどな、、、」


マスクは溜息を一つ吐いた。


「確かに、、、そうかもね」


ふと、メルク男爵が思い浮かぶ。


彼は根っからの職人といった感じだった。



「キャロル、続きを話すぞ。懲りないカシャロ公爵家は、次にローデン伯爵家のアマンダ嬢へ、陛下に相談することもなく、勝手に婚約者候補の打診をして断られた。先方は断りの理由として“王太子妃なら考える”と言ったらしい」


うわっ、キツイ!!


そして、色々とズレているカシャロ公爵家は、マクスに逆恨みをして、更に嫌がらせをして来そうだ。


むぅーっと、私は顰めっ面になった。


「キャロル、色々想像しているんだろうけど、概ね、当たっていると思うぞ。それから、カシャロ公爵家は、余計なことに、ローデン伯爵家へ、おれの婚約者はセノーラに内定していると啖呵を切って帰って来た。だから、セノーラを、おれの婚約者にしろと言い出した」


はぁ?カシャロ公爵家は、バカなのね。


自分のメンツのために、王太子に娘を押し付けようとするなんて、有り得ない。


「有り得ないくらい酷いわね、、、」


「いや、最後にもう一件あるんだ」


「もう満腹なのだけど、、、。聞くわ」


「見兼ねた、先代王弟の血筋にあたるサザンマレリー侯爵家が、次女のヴァイオレット嬢をジョージの婚約者にどうかと話を持って来た」


「ここまで来ると、ヴァイオレット嬢が生け贄に見えて来るのだけど、、、」


「ヴァイオレット嬢は、ジョージより六つ年上で、領地では医師をしていた。そして、思ったことはハッキリと言う性格だということもあり、サザンマレリー侯爵は、彼女ならジョージが相手でも大丈夫だろうと思ったらしい」


「性格も頭脳も切れ味の良いご令嬢だったって事ね」


「ジョージは顔合わせで、ヴァイオレット嬢に面と向かって、頭が良い女は嫌いだと言って破談にした」


はぁ?頭が良い女性の方が、国政には好都合だと思うけど、、、。


「マクス、凄ーく悪い言葉を吐いちゃうけど、カシャロ公爵家はバカなの?」


私は、胸の内でモヤモヤとしていた本音を吐いた。


「ああ、まごう事なきバカだ。ちなみにヴァイオレット嬢は、『わたしくも、王太子妃で無ければ嫌でしたので、断って下さりありがとうございます』と笑顔で挨拶をして去ったらしい」


ゔっ、辛辣。


「な、何てこと、、、。マクス、貰い事故が多過ぎない?」


「ああ、勝手に娘をおれの婚約者に内定と言いふらかして、ジョージの指名した相手は皆、王太子妃でなければ嫌だと逃げた。おれは何もしなくてもカシャロ公爵家から、どんどん恨まれるというわけだ。加えて、キャロルの存在を嗅ぎ付けられるわけにはいかないから、曖昧な態度をしないといけないのは地獄だった」


マクスはテーブルを拳で、コンと軽く叩いた。


「それは、色々とご迷惑をお掛けし、、、」


「いや、キャロルが謝るところじゃないだろう!」


必要以上に謙遜したら、マクスが怒りそうだから、頷いておく。


「で、陛下が止めるってことは、ジョージ王子と直接、喧嘩になった事とかがあるの?」


「ああ、中庭が吹き飛んだ。キャロル、中庭に噴水があったのを覚えてないか?」


んんん?噴水、、、。


確かに!!八歳くらいまではあった様な気がする。


噴水の周りを取り囲む様に、蘇轍が植えてあったのを覚えている。


「転移でよく使う中庭の真ん中にある場所でしょう?」


「ああ、そうだ。早く婚約者を決めろって絡まれて、喧嘩になった。父上が止めに入って、後からコッテリ搾られた。魔法を使うなと」


そっかぁ、此処のところは、異常事態で普通に魔法を使い倒していたけれど、本来、ソベルナ王国の王族は、日常生活で魔法を使わないのだった。


私もこの生活に慣れ過ぎないようにしないと!


「あの時、父上が止めに入ってなかったら、おれとジョージも王都を破壊して、魔塔に送られていたかも知れない」


「マクス、なかなかに笑えない話をありがとう。魔法は、、、お互い気をつけようね。それじゃあ、陛下とお母様からの連絡待ちと思っていたら良いのね」


「ああ、待つのは性に合わないけど、仕方ない。連絡があったら直ぐに知らせるから」


「うん、分かった」


 私はテーブルで、すっかり冷えてしまった紅茶に手を伸ばす。


カップを上げた時に、マクスの後ろにある絵画に目が留まった。


あ、あれって。


「マクス、その後ろの絵画は、うちのお祖父様のお家の近くかも」


そこに描かれていたのは、ローデン伯爵領のハーゲン・ロックという大岩とその後ろに広がる黒の森(別名・エルフの森)だった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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