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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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82 元気のいい四人

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 改めて、庭を見回すと訓練用の大きな木が数本植えてあるだけで、花壇も垣根も無い。


中庭というよりも、殺風景な運動場と言った方がしっくりくる。


マクスとレード様は、まだ二人でヒソヒソと話し込んでいるようだ。


「キキさん、ここ数日の様子とかを教えて欲しいのだけど?」


私は一番頼りになりそうな女の子に話しかけた。


「はい、私が知っていることなら何でも」


少女は溌溂と答える。


「普段と違う事は無かった?」


「はい、ありました。見張りの先生が、かなり消えました。いつもはあそこの切り株にミレイ先生が手に鞭を持って座っていましたけど、五日くらい前から見ていません」


キキは中庭の隅にある切り株を指差していた。


ランディ・ボルド―を拘束したのが六日前だから、その後に逃亡したのかしら?


この話だけだと、個別案件なのか組織的なのかも、いま一つ分からない。


後で、マクスに報告しよう。


「そう、見張りが消えたのね。ところでミレイ先生って、どんな方?」


「ミレイ先生はレイチェル院長の娘です。魔法の指導を私たちにしていました」


「娘さんもここに居たの?」


「はい、かなり気性の激しい先生でした。ですが、脅威に感じたことはないです。私の方が魔力もあると思います」


ニヤリと悪そうな顔をしてキキは私に言う。


彼女は案外、感情が顔に出るタイプのようだ。


「ええっと、何でそう思ったの?」


「だって、あの人、私達4人を洗脳したと思って、調子に乗った言葉をよく吐いていたんですけど、実は一人もかかって無かったって感じで、、、。フフフ」


キキは他の三人の顔を見る。


何だか四人でニヤニヤしている。


もしかして、彼女は子供たちに侮られていたのかしら?


「ミレイ先生は馬鹿って事?」


「はい、馬鹿だと思います。世界征服をするとか良く言っていました」


ルークが楽しそうに言う。


あー、これはこれで頭が痛い。


でも、この子達は思ったより冷静だし、賢いわ。


「少し違う質問をするわね。みんなはいつからここで暮らしているの?」


質問していると、ザックと目が合った。


「僕は五年前にここへ連れて来られました。多分、古株です」


先ほど魔石の隠し場所を的確に教えてくれただけあって、ザックはここの事に詳しそうだ。


「私はその次に長いですよ。もうすぐ五年です」


キキが言う。


次に長いのはマグナムで三年前、ルークはまだ一年くらいとのこと。


「キャロル、そろそろおれたちは帰る時間だ」


マクスが後ろから声を掛けて来る。


「あら、マクス。レード様との話は終わったの?」


「ああ、ここの状況を把握した後、どうするのかを話した」


マクスは私に言った後、子供たちの方へと向き直る。


「お前たち四人は、他の子たちに比べて、異様に元気だよな」


「はい!元気です」


ルークが元気よく答えると、ザックがルークの脇腹に一発、拳を入れた。


「いててててっ」


ルークが呻く。


「王太子殿下、失礼いたしました」


ザックは恭しく礼をした。


後のふたりはザックの様子をポカーンと見ている。


「いや、ザック。逆に怖いから、普通にしろ!大丈夫かルーク」


マクスは呻いてしゃがんだルークの横に屈む。


「だ、大丈夫です」


「殿下―!僕達の元気の秘密を教えます」


マグナムが元気な声で言う。


キキは慌ててマグナムの口を塞ごうとしたけど、間に合わなかった。


そんなキキに向かって、ザックが言った。


「キキ、もう気持ち悪い奴らは居なくなったからさ、教えても大丈夫だよ」


キキは複雑そうな顔で私を見る。


「ええっと、言いたくないなら無理にとは言わない。でも、言いたいなら聞くわよ」


私のどちらでもいいという声を聞いて、キキは目をギュッとつぶって考える。


マクスと私は彼女が何を言おうとしているのか、想像が付かない。


時間にすれば一分ほどだろうか。


キキは目を開け、深呼吸をゆっくりと一度してから口を開いた。


「私、あの建物の裏に、、、」


キキは私たちが中庭に入って来た建物とは反対側にある建物を指差す。


続きを口にしようとした時、居るはずのない一行が建物の裏から現れた。




 「師匠―!!」


手を振りながら、走ってくるのはトッシュ少年だった。


その後ろから、アレン陛下とリン王女がゆっくりと歩いてくる。


しんがりはジャンだ。


何が起きたのか良く分からない。


あのメンバーは鍾乳洞の探検に向かったはずでは???


「トッシュ!?え、何でここに居るんだ」


マクスが飛びついて来たトッシュ少年に問う。


「僕たちは王都の下にある鍾乳洞の探検をしていました。そこで、青白く光る不思議な柱を見つけたので、みんなで思い切って触れました。そうしたら、ここに辿り着きました!!」


弾けそうな笑顔に騙されそうになるけど、それって、かなり危険じゃない!?


知らないものに触れるなんて、、、。


私が注意すべきか考えていると、遠慮がちな声がした。


「あ、あのー!!」


キキが右手を小さく上げる。


「どうした?」


マクスが、キキに視線を向けた。


「そ、その柱は私が作った転移ポイントです」


「ええええ!!」


必要以上に大きな声を出してしまった。


恥ずかしい。


声は出ていないけど、隣のマクスも驚いた顔をしている。


その話をもっとキキに詳しく聞こうとしていると、間が悪くアレン陛下が私たちのところへ来た。


「マクス殿とキャロル嬢、レナードもいるとは、、、」


「アレン、ここは例の孤児院だろう。あの鍾乳洞と繋がっていたとは驚いたね」


リン王女の両腕を組んでビシッと立っている姿がカッコいい。


「ああ、王都の下にあるとは思わなかった。あの鍾乳洞はアタリだったのだな、ハハハ」


アレン殿下は、今日も気さくな人柄が滲みだしている。


ジャンが最後にやって来た。


「殿下、ごきげんよう。最初に言っておきます。僕は止めました。こちらの高貴な御三人さまは自由過ぎて僕の手には負えません」


疲れた様子を隠しもせず、ジャンはマクスへ訴える。


「まあ、確かに自由、、、そうだな。ジャン、何事も無かったから今回は良かったが、次からは危険だと思った時は護衛対象の気を失わせるくらいはしていい。おれが許す」


マクスはチラリとリン王女を見た。


リン王女はスッと目を逸らす。


はぁー、とマクスがため息を吐いた。


抱きついていたトッシュ少年を引き剥し、マクスは低い姿勢で彼の両腕を持って、その顔を覗き込んだ。


「トッシュ、次からはもう少し慎重に行動しろ!まだ半人前にもなっていないお前では誰も守れないだろう?」


目を合わせて、ゆっくりと諭す。


トッシュ少年から笑顔が消えていく。


「すみませんでした。楽しくて調子に乗ってしまいました」


瞼を伏せて、反省の言葉を口にするトッシュ少年。


「何が悪かったのかが分かったのならいい。次は信頼できる大人を呼ぶこと。わかったか?」


ん?信頼出来る大人って言葉に棘を感じたのは私だけ??


チラリとアレン陛下の方を見れば、バツが悪そうにしていた。


リン王女殿下はすでに明後日の方向を見ている。


レード様はその二人へ向かって、鋭い視線を送っている。


あの様子なら、後で二人に苦言を呈すだろう。


すっかり仲良くなって親戚の子供の様に親しく過ごしているが、トッシュ少年は大国ブカスト王国の王子だ。


何かあったとなれば、当然の如く国同士の揉め事になる。


マクスの嫌味がお二方に通じていることを祈る。


「あのー!!」


今度はザックが右手を大きく上げた。


「ザック、何だ?話していいぞ」


マクスが、続きを話すようにと促す。


「はい、キキの作った転移ポイントの話です。僕たち四人はあれを使って、こっそりと外に出ていました。院長は気付いてないと思います」


ザックの始めた話に大人たちの視線が集まった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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