78 謎謎謎
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
怒涛のノード王国二日目を終えて、私達は王都シドラへ戻って来た。
お昼寝を終えたトッシュ少年は、塩トマトを三個も食べた。
「ノード王国のお魚も塩トマトもとっても美味しいです!!」と言いながら。
アレン陛下とも、すっかり仲良くなって、次は何処へ行こうか?と、ヒソヒソ話。
ブカスト王国は、将来トッシュ少年に外交をされたら良いのでは?と、勝手に思ってしまう次第。
「キャロル、お疲れ様」
湯浴みを終えたマクスが部屋へ戻って来た。
私が座っているソファーの向かいへ、ドカっと腰掛けると、テーブルの上にある水差しに手を伸ばす。
水差しには冷たいレモン水が入っている。
マクスはそれをコップに注ぎ、ゴクゴクと飲み干した。
かなり喉が渇いていたらしい。
私は一連の様子を眺めた後、彼に話し掛けた。
「マクス、流石に疲れているよね?怒涛の一日だったし」
「ああ、今日の騒動は心身共に疲れた。ピピが、ブカスト王国の国王まで連れてくるとは思わなかったからな」
それは私も思った。
ピピの危機管理能力の高さに驚いた。
で、必要なら誰でも連れて来ちゃうのかと、、、。
「ええ、そうね。それから、アラン国王陛下と双子王子とトッシュの顔が余りにも似ていて、笑いを堪えたわ」
つい、不謹慎な発言をポロっとしてしまった。
「確かに似ていた!」
マクスも勢い良く、同意してくれたので、ホッとする。
「言うまでもなく、ナスタ殿下は似てなかったね」
「、、、それは、そうだろうな」
マクスは眉間に皺を寄せる。
ここで唐突にあの疑問を投げてもいいかな?
「あのね、聞いていいのか、分からないことがあって、、、」
私は一度立ち上がって、向かいにいるマクスの横に座った。
「何?」
マクスは私の方へ首を傾げた。
ついでに手も重ねて来る。
私より温かい手に安心する。
マクスは美しい紫色の瞳で私を見つめている。
私もその瞳をじーっと見つめる。
気を抜けば、煌めき輝くアメジストの瞳の奥へと吸い込まれそうな感覚を覚える。
これが強い魔力の証。
何かに選ばれた人にしか現れない。
そもそも、何かって何?
それさえも分からない。
「あのね、紫の瞳って、そもそも何なの?」
呟くくらいの小声で、鼻が触れそうな距離にいるマクスへ尋ねた。
「あー、何かと思えば、この瞳が気になっているってコトか?」
「そうそう、紫の瞳って、王族の子供にランダムで現れているのよね?」
私の問いにマクスは少し考える素振りをした。
「ランダム、、、。確かにランダムだな」
そう言うと、また何かを考えている。
「もしかして、何か規則性があるの?」
「いや、規則性と言っていいのか、、、。ソベルナ王国の王家では、紫の瞳を持つ子供は一人の王に、一人しか産まれない。今代は、おれがそれに当たる。そして、ブカスト王国の王家でも、今代の紫の瞳持ちはトッシュだけ。なのに、国を持たないランディ・ボルドーには、ナスタ王子とジョージ王子、二人の紫の瞳持ちが産まれたんだよな。その理由が、おれには分からない。考えれば考えるほど、ランディ・ボルドーって、何なんだろう?気味が悪い奴だよな」
マクスは首を捻る。
一人の王に一人ずつ後継者が産まれる。
それならば、本来は揉め事にはならない為のシステム?
私は魔塔で聞いた話を思い返した。
ナリス王女の双子から、ブカスト王国にはソベルナ王国の血が入る。
ソベルナ王国では、ルーシィさんが紫の瞳の子を産んだ。
そう考えると、一つの国の王家で一世代に一人。
規則性があると言えばある。
でも、何でランディ・ボルドーは、、、。
いや違う。
聞きたかったのは、この話ではない。
「あのね、ランディ・ボルドーの話は一旦置いておいてもらっていい?」
思考中のマクスへ、ストップを掛けた。
「え?」
「それじゃなくて、他に気になっているコトがあるの」
「あー、どうぞ話して」
「そもそも、紫の瞳って、いつからなの?」
「いつからって?」
「ええっと、最初に紫の瞳だったのは誰?」
私は一番聞きたかったことを口にした。
マクスが、ちゃんと教えてくれるかは分からないけれど。
「初代のアレックスだと思う」
「かなり昔よね?」
「サンディーの父親だと思うと、変な感じがするけどね」
マクスは苦笑した。
「そのアレックス陛下は、そもそも、どこの人なの?」
私は謎に一歩ずつ近づいている気分で、マクスに詰め寄る。
「それは、、、。おれは分からない」
マクスは両手を戯けたように上げて見せる。
あ、これは教えてくれないのね。
機密なのかな?
「じゃあ、サンディーさんに聞いてみようかな?」
「ああ、聞いてみたらいい」
軽く受け流された。
コレ、絶対に何か秘密があるよね?
私の勘が、そう言っている。
「それより、今日は疲れたから、そろそろ休もう」
私の頬をスルリと撫でてから、マクスは当然の様に私を抱き上げた。
お姫様抱っこではなく、オバケが怖い時の抱っこ、、、。
「んもぅ!わざとでしょう!!」
私は不満をぶち撒ける。
「あー、キャロル可愛い!!」
マクスは私の肩口に頭を擦り寄せる。
そのまま頬擦りをして、軽くキスをした。
抱っこして歩く上に、器用だこと!
大した抵抗も出来ず、寝室へ到着。
そのまま、ベッドへゆっくりと降ろされた。
マクスもそのままベッドへ上がって来て、天蓋のカーテンを閉じる。
流れるようにランプも消して、窓から入る月明かりだけになった。
「キャロル、いい夢を!」
私の頬をと額に口付けを落とし、マクスは私を腕の中へ入れ、目を閉じる。
回答拒否から眠るまでの流れが早くて、付いていけない。
「マー、クー、スー?」
彼の耳元へ囁く。
絶対起きているのに、知らんぷり。
ふーん、無視するんだー!!
腹は立つものの、私も疲れていたのか、マクスの体温に温められて眠気が一気に押し寄せた。
不本意ながら、マクスの作戦に完敗。
私は夢の中へと旅立った。
腕の中に閉じ込めたキャロルは、数分で可愛い寝息を立て始めた。
今日の取調べで出て来た話は酷いものばかりだった。
狂気に満ちた思想と残虐さ。
キャロルの心の傷に成らなければいいが、、、。
彼女のジャンを見る目が、悲しげで見ていられなかった。
その弟は食べることに夢中で、何も気付いてなさそうだったけれど。
双子王子が涙を流して、抱き合っている姿は、おれも来るものがあった。
キャロルも、あのシーンは一生忘れないだろう。
そして、取調べで、やたらと出て来る紫の瞳というキーワード。
とうとう、キャロルはおれの紫の瞳に対する疑問を投げかけて来た。
ずっと秘密にするつもりは無い。
時が来れば話す。
そう、時が来れば、、、。
それよりも、おれとしては、王族でも無いのに突然強い魔力を持って生まれて来た君の方が不思議なんだけど。
キャロルは、どうやら自分の事には気付かないらしい。
愛しいキャロル、何があっても一緒に乗り越えて行こう。
君と一緒なら、何だって頑張れる。
キャロルの温かい体温で眠気が押し寄せて来た。
願わくば、夢でも逢いたい。
ずっと一緒がいい。
いい夢を、、、二人で見れたら、、、。
おやすみ、、、。
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