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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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77 お昼寝中

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 齧った途端、その甘さに驚いた!


これ本当にトマトなの?


この甘さは最早、果物。


小さな齧り掛けのトマトを手に持って感動していると、笑い声が聞こえた。


「キャロル、良い顔、、、。クックック」


マクスが、やな感じで笑っている。


取り敢えず、肘うちを入れた。


そして、私は美味しい塩トマトを再び齧る。



 私とマクスがノード王国に戻って来ると、浜辺のランチバーベキューはすっかり終わっていて、朝からの疲れを取るためか、満腹の眠気なのかは分からないけれど、浜辺に大きな布で日陰を作り、皆さんはラグの上でお昼寝中だった。


ノード王国、平和過ぎる。


国王と国民が大きなラグの上に寝転がる姿など、ソベルナ王国ではあり得ない。


だけど、こういうのもいいなぁと気付かせてくれるのが、この国の良いところだろう。


私達は用事を終わらせて帰って来たものの、目の前に広がる光景に声を掛けて良いのかも分からず、立ち尽くしていた。


そこへ背後から声を掛けられた。


「おかえりなさい。面倒ごとは片付きましたか?」


振り返るとレード様が立っていた。


彼の鼻の頭は日に焼けたのか、少し赤くなっていた。


「レード殿、急に席を外して済まなかった。お陰で無事に片付いた。詳細を話したいが、、、」


マクスは寝そべっている人々を見渡した。


「父はトッシュ殿とあの後も遊び倒していたので、、、。あー、完全に寝ていますね」


レード様が、クスッと笑う。


「いつもこんな感じなのですか?」


つい聞いてしまった。


「ええ、小さな国ですから、国民と王族の距離感もこんな感じですよ」


「王族の方々が、気さくですよね」


「ハハハ、キャロル殿は褒め上手ですね。威厳がないとも言えますよー」


レード様が笑う。


不謹慎かなと思いつつ、私達も笑ってしまった。


脳裏に思い浮かんだのは、地引網を引くときに号令をかけるアレン陛下の姿だった。




「殿下―!」


聞き覚えのある声で遠くから呼ばれた。


強い日差しを手で遮りながら目を凝らすと、ジャンがバケツを下げて、こちらへ向かって歩いて来ている。


「ジャン殿におやつに用意していた塩トマトを取りに行って貰ったのです。まだ皆、寝ていますし、良ければ先に食べませんか?」


「塩トマト!!食べたいです!!」


塩トマト!!前に聞いた時から、気になっていたのよねー。


急にお腹が空いて来た。


「しっかり冷やしていましたから、美味しいですよー!」


レード様が微笑む。


「キャロル、良かったね」


マクスは私の頭を撫でる。


「マクスはお腹空いていないの?」


「空いているに決まっているだろ。ああ、シーフード、、、」


マクスは吐き捨てるように言った。


「マクス殿、大丈夫です。ガーリックソテーした白身魚サンドを作ってあります!!」


レード様は満面の笑みで親指を立てる。


「レード殿!最高!!」


マクスも同じしぐさで答えた。



 ジャンが私たちのところへ辿り着いたので、砂浜の上にラグを敷いて、レード様が持って来た大きなパラソルも三本立てた。


良い感じの日陰が出来上がる。


ラグの上に、バケツから取り出した塩トマト四個と、白身魚サンドが入ったかごを置く。


飲み物は、レモンの入ったお水とエールがあるとの事。


マクスとレード様はエール、私とジャンは水を選んだ。


「さあ、皆が寝ている間にどうぞ。お話も聞きたいですし」


レード様は、私たちに塩トマトを一つずつ手渡した。


小ぶりな塩トマトは思ったより良く冷えていて、ビックリした。


「では、いただきます」


マクスが、塩トマトに齧り付く。


その途端、すごく驚いた顔をした。


「おっ!?これは、、、」


マクスの一言で、期待も膨らむ!!


「私もいただきます」


一口齧った。


「!!!!!!」


声にならない。


一言で言うなら、感動した。


甘いし、旨味がスゴイ!!!


無言で最後まで食べてしまった。


「とても美味しかったです。塩トマト最高です!」


私は力を込めて、レード様に感動を伝えた。


「そんな美味しそうに食べて貰えたら、生産者は飛び上がって喜びそうですよ」


レード様は嬉しそうな顔をしていた。



次は、エールと水で乾杯をした。


かごから白身魚サンドを取り出し、一口齧る。


フワフワの白身とガーリックバターの風味が最高だ。


白くて、もっちりと柔らかいこのパンもいい。


ひとりで白身魚サンドの美味しさにハマっていると、マクスが先ほどの報告を始めた。




「なるほど、それは、、、言葉もないですね。想像を超えた思想ですし、、、」


レード様は、ナスタ殿下の悪行と思想を理解出来ないと顔を歪める。


兄弟殺しを自慢げに話す時の悦に入った表情は、正直なところ気味が悪かった。


双子兄弟とアラン国王陛下のショックは、私とは比べ物にならないだろう。


ジャンをチラリと横目に見ると、こっそり白身魚サンドを食べていた。


「それ、美味しいよね?」


私は小声で言う。


「鯖サンドしか知らなかった自分が恥ずかしい、、、」


ジャンが呟く。


「仕方ないわよ。海がこんな近くにないのだから」


ソベルナ王国も東北の領地には海があり、鯖や鱈、サーモンなどが水揚げされる。


ただ、王都から、かなり離れているので迅速な輸送が出来ない。


そのため、国内に流通する魚のほとんどは痛まないよう、産地で塩漬けにされる。


このふっくらとしたお魚を食べることは難しい。


川魚で美味しい魚も居ることはいるが、何となくコレとは別物な気がする。




「それで、ソベルナ王国の国王陛下が?」


お魚の事ばかり考えていたら、話が進んでいた。


「ああ、アイツの魔力が思ったより強かったんだ。おれがここに居る間に戒めを破って逃げられたら困ると言う事で、父上が監視することになった。今は父上の構築した戒めに縛られているから、大丈夫だ」


「国王陛下も魔法使いか、、、。ソベルナ王国の王族は、只者じゃないな」


レード様は顎を撫でながら、マクスの話に聞き入っている。


私も先ほど、ナスタ殿下を縛り付ける鎖をマクスの魔法の鎖から、陛下の作り出した魔法の鎖へ替える瞬間に立ち会った。


陛下が片耳のピアスを外すと、ブルーの陽炎が身体から湧き上がった。


国王と王太子の桁外れな魔力に、その場にいたアラン国王陛下と双子王子も顔を強張らせていた。


怖くて当たり前だと思う。


普段の生活で魔力に触れてないのだから、尚更に。


陛下が青白く光る鎖でナスタ殿下を拘束してから、マクスは白く光る鎖を解除した。


「真に強い者こそ、謙虚である」


ボソッと、アラン国王陛下の呟いた言葉が、いまも耳に残っている。


「結局、ボルド―一家が処分されることは罪状からも間違いない。後は、どのように封印するかを考えないといけない。魔力を持つ者の処刑は難しいんだ」


「過去にはそういう事例は無かったのですか?」


「レード殿、お恥ずかしいことに大昔は結構あったらしい。その場合は我が国の魔塔に封印していたようだ。そのあたりは、サンディーが詳しいから、助言をもらう」


私も驚いたのだけど、ルーシィさんたちより以前に魔塔へ送られたのは罪人だったらしい。


サンディーさんは、塔の番人として見張る役目をしていたという。


ただ、あの特殊な空間から出ると魂は消滅するらしく、『逃亡しようとした方が、跡形もなく消えるのよぉ』と、サンディーさんは不敵な笑みを浮かべていた。


ナスタ殿下は恐らく処刑された後、魔塔へ魂を封印されるだろう。


ランディ・ボルド―のレベルならば、処刑したら終わりとのこと。


とすれば、紫の瞳持ちは便利でもあり、大層厄介でもある。


そもそも、紫の瞳って、何なの?


何処の誰から発生したのだろう?


初代皇帝アレックスから?


彼は何処から来た?


サンディーのお父さんだよね。


とても気になるけど、、、。


マクスは答えを知っているのかな、、、。



「姉上、もう一つ貰ってもいいですか?」


 また、思考の淵に落ちていたら、今度はジャンから呼び戻された。


ジャンはかごに入っている白身魚サンドを指差している。


「ええ、一つと言わず、沢山食べていいわよ」


最近、無表情が板についていたジャンが、久しぶりに心から嬉しそうな笑顔を見せた。


私の可愛い弟。


何だか胸がいっぱい。


抱きしめ合っていた、ブカスト王国の双子王子が脳裏にチラつく。


涙が出そう。


私は自分を誤魔化すため、手に持っている白身魚のサンドを一口齧った。


「美味しい、、、」


ポロリと、目じりから涙が一粒落ちる。


マクスの手がスッと伸びて来て、私の頭を優しく撫でてくれた。


ああ、マクスに誤魔化しは通用しない。


困ったなという気持ちと嬉しい気持ちが混ざり合う。


ジャンと話そう。


他愛ないことも、沢山話そう。


忙しいと言われても、話し掛けるからね。


居なくなったら、話せないから。


私のセンチメンタルな気持ちを他所に、ジャンは白身魚サンドを幸せそうな顔で齧っていた。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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