73 ペアルック
楽しい物語になるよう心がけています。
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見知った二人が、そこに立っていた。
「カルロ、動けるか?」
マクス殿は、私に向かって言った。
私はサンディーを抱えたまま、慎重に起き上がった。
「サンディー、強く抱き締めてしまったが、痛いところは無いか?」
「カルロぉー。ビックリしたけど、助かったわー。アタシ、ちょっと油断しちゃったよね。ごめんー!」
気まずそうな顔で、サンディーは言う。
「いや、サンディーは頑張っていた。気にしなくていい」
私は、彼女の頭を優しく撫でる。
「おい、イチャつくな!ア、イタタタ、、、。全く思いっきり引っ張りやがって」
マーカスは、床に打ちつけた身体が痛いらしい。
全身の関節を曲げ伸ばしながら、その具合を確めている。
「まぁ、大丈夫そうだな」
「そうね、間に合って良かったわね」
マクス殿とキャロル殿が、二人でヒソヒソと何かを話している。
周りの状況が見え始めて、私は一番気になる事を尋ねた。
「お二人は、ペアルックか?本当に仲が良いのだな」
「ああ、本当に、、、」
「だよねぇー!!アタシたち、大変だったのにねぇ」
マーカスとサンディーが、恨めしそうな目で二人を見た。
今、マクス殿とキャロル殿は白い半袖シャツと紺色のハーフパンツに赤いサンダルを履いている。
「違う!違うのー!これは、、、」
キャロル殿が慌てる。
「おれたちは、少し前まで浜で地引網を引いていたんだよ。トッシュの希望で!!」
マクス殿の話に寄ると、私の弟のトッシュが「釣りをしたい」と言ったところ、ノード王国の国王が張り切って、地引網の体験を手配してくれたらしい、トッシュは大喜びだったそうだ。
「我が弟が、何故ノード王国に?」
私が疑問を口にすると、マーカスが答えた。
「オレがマクス殿に頼んで、トッシュをソベルナ王国へ遊学に行かせた。トッシュはマクス殿の弟子になったと聞いている」
「ああ、弟子にした。少しずつ魔法を教えている」
マクス殿が答えたところで、忘れていた方から声がした。
「余計な事を、、、」
声の先を見れば、マクス殿によって、壁に貼り付けられたナスタが悪態を吐いていた。
そのナスタは手足頭首腰を白く光る鎖で、壁に固定されている。
当然、身動き一つ取れないくらいに。
マクス殿の圧倒的な力を目にして、ゾッとする。
敵には絶対したくない。
「ナスタ、悪いがお前が怪しい事くらい、おれたちは気付いていた。マックから、魔力の回復具合が不自然だいう報告も受けていたからな」
「・・・・チッ」
ナスタは、なおも不遜な態度を崩さない。
「サンディー、ここ迄の報告を」
「まーちゃん、キャロちゃん!手を出して!!」
サンディーは、両手を前に出し、二人に言った。
また手でも繋ぐのであろうか?
マクス殿とキャロル殿は、サンディーの前にそれぞれ右手を出した。
サンディーが、それを両手で掴む。
「話すと長いから、流すよぉー!」
ピリっと室内の空気が震えるような感触がした。
何を流したのだろうか?
「サンディー、ありがとう。相変わらず、ランディ・ボルドーは最低だな。手を繋ぐって言うアイデアは良いと思う、クックック」
マクス殿は笑っている。
「それにしても、赤ちゃんに呪いのような魔法を掛けるなんて、あの人やっぱり何か欠如してるわよ」
「ああ、徹底的に自分の事しか考えていない。また詳しい話しはジョージから後日聞こう」
まさか、今日の取調べを瞬時に伝えたのか?
「マクス殿とキャロル殿は、この一瞬で今日の取調べを把握したのか?」
「ああ、サンディーが、直接記憶を流し込んでくれた。カルロ、サンディーのことを女神って言ったって?」
「ああ、その通りだ。サンディーは女神のように美しいではないか。私は嘘を言わぬ」
「お前、サンを女神って崇め出したら、本当の聖人になるぞ」
マーカスが言う。
「ああ、聖人で構わん。私は生涯結婚もしない。子も作らぬ」
私はキッパリと言い返した。
「何で?」
珍しく、キャロル殿が聞いて来る。
「私は双子の弟だからだ。本来なら存在して無かった。静かにマーカスの手伝いでもして、一生を終える予定だ」
「そ、それはまだ若いのに諦め過ぎじゃないですか?」
「諦め?そうだろうか」
私はキャロル殿の言葉を噛み締める。
「そうよぉー!カルロはさぁ、見た目もクールでカッコいいんだから、恋人くらい作ればいいのにー!」
サンディーは情けを掛けてくれたのだろう。
優しい人だ。
だが、私は真実を述べる。
「いや、励ましは嬉しいが、残念ながら、私はサッパリ女性には人気がない」
実際、ここへ来る前、サキからも散々な言われようだった。
「いや、揶揄ってすまん。だがカルロ、余りしきたりに囚われるな。これからはオレ達が国を動かすんだ。そんな風習は消してやる」
「まだ、お前達の国になったわけじゃないだろ!!」
すっかり忘れていたその存在が、マクス殿の後ろから叫ぶ。
「ナスタ、いい加減に観念しろ。ソベルナ王国にマクス殿とキャロル殿、サンディーの三人が居る限り、お前が勝てる要素は何一つ無い。ましてや、お前は犯罪者だぞ」
マーカスが、ナスタに厳しい言葉を投げ掛けた。
「うるさい。僕を舐めて掛かったら、痛い目を見るぞ!!」
人の話を聞いていないのか、壁から犬の遠吠えの様な叫びを上げる長兄は酷く目障りだ。
「マクス殿、あいつは厳しい刑で構わない。頼りない兄だと勘違いしていた。あいつはサンディーの言う通り、極悪人だった」
「カルロ、分かった。余罪の取調べも、きっちりしてから判断する。とは言え、生きて外に出れる日は来ないだろうがな!」
「ああ、承知している。マーカス、お前は?」
「オレも父上も、すでにソベルナ王国へ、ナスタの事はどうしてもらっても構わないと伝えてある」
「そうか。では、マクス殿、くれぐれも宜しく頼む」
マクス殿は、私に軽く微笑んでから、ナスタの方へ向き直った。
「おれたちは浜辺のバーベキューを投げ打って来たんだよ!!しっかり、話して貰おうじゃないか」
「マクス、かなり食べたかったのね」
キャロル殿のボソっと呟いた声がした。
不謹慎だが、笑いが堪えられず、下を向いてしまった。
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