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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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70 小悪魔

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 サラサラの銀髪に透き通るような白い肌、スッとした鼻筋に綺麗な紫の瞳の女神が、その美しい目を見開いたまま、私を眺めている。


「シオ、、、」


彼女は何かを呟いたようだが、私には聞き取れなった。


もしかすると、私が急に現れたから混乱しているのかもしれない。


「お初にお目に掛かる。私はブカスト王国第三王子カルロだ」


先に名を名乗れば、女神のような女性も安心するであろう。


「カルロ?」


私の名を確かめるように、彼女は呟いた。


「ああ、私の名はカルロだ」


「シオじゃないのねー!!あーもう!!心臓が止まるかと思ったわぁ」


目の前の女性は両手で顔を覆って、その場にしゃがみ込んだ。


「おい、大丈夫か?」


私は彼女の前に跪いた。


「あー、ごめんね。アタシの『冥界に送った夫』と、見た目が瓜二つで、驚いたのよぉ!」


彼女は手を下ろしてから、私に事情を話し始めたのだが、如何せん、とても顔が近い。


手を伸ばせば、抱きしめられそうな距離である。


これは、私が跪いたのが原因だ。


だが、今更不自然に距離を取れば、感じが悪いと思われそうだ。


私はそのまま、話を続けることにした。


「冥界に送ったと言うのは、、、」


「死んじゃったの」


目の前の女神は、気丈に答えた。 


見過ぎてはいけないと思いながらも、その美しい顔をつい眺めてしまう。


「すまぬ。無神経だった」


「いーよぉ!気にしないで。カルロちゃんって呼んでいい?アタシはサンディーよ。ソベルナ王国の大魔法使いなのよぉ」


「サンディー、『ちゃん』は要らぬ。カルロで良い」


「ええ!!カルロって呼んでいいのぉー!?ちょっとドキドキしちゃうわー!」


「別に名前を呼ぶだけではないか」


「イヤーだって!!カルロ、、、。ギャー!恥ずかしい!!」


サンディーは、また顔を隠し、身悶え出す。


そこへ、ピピ殿とマーカスが現れた。


「お待たせ!サン。カルロと仲良くなったかー?」


「サンディーさん、お待たせしました!」


ピピ殿は可愛いから良い。


だが、マーカスが、ニヤニヤしているのは勘に触った。


「何だ?その表情は」


「いや、聖人にも春が来ないかなーと、思って」


「余計なお世話だ」


「サン、早速、取り調べを始めよう。オレ、今日は午後から予定があるんだよ」


マーカスは、サンディーを急かした。


「お前、自分勝手だな」


「いや、お前を呼びに行ったから、時間が減ったんだよ」


不服そうに言い返してくる、マーカス。


「そもそも、こまめに連絡を取らないお前が悪い。だが予定があるなら仕方ないか。サンディー、申し訳ないが、急ぎで頼む」


私は先に立ち上がり、サンディーを起こすため、手を伸ばした。


サンディーは躊躇しつつも、私の手を取る。


私は彼女を手を引き、背中を抱いて立ち上がらせた。


「あ、ありがとー!カルロ、、、。じゃあ、鉄格子の中に入ろー!!」


「ピピ、無自覚王子っているんだな」


マーカスが、何かを小声で囁き、ピピ殿が頷く。


何だ?コソコソするとは、感じが悪い。


一言、マーカスへ苦言でも言ってやろうかと思ったが、丁度、サンディーが鉄格子のカギを開けた。


「はい、どーぞぉ!」


私は彼女と一緒に中へ入る。


後ろから、マーカスとピピ殿も付いて来た。


牢の中は、一人ずつボードで仕切られており、互いには目も合わせられないようになっていた。


三人は手足を『怪しげな光を放つ鎖』で、拘束されたまま眠っている。


「これは一体?」


私は鎖を指差し、サンディーに問う。


「あー、これはね魔法使い向けの鎖なのよぉ。普通のヤツだと、こいつらはすぐ逃げちゃうの!」


「ほう。魔法使い用か」


私が感心していると、牢の奥から声がした。


「あんたー、初めて見る顔やね。おいはマックよ。よろしくね」


声の主は、モフモフした羊だった。


「羊がなぜ?」


「おいは魔力ば食べるとさ。こんやつらの魔力を食べて動けんようにすると」


見た目の可愛さと、かなりギャップのある癖の強いなまりに驚いた。


「魔力は美味しいのか?」


「あー、あんたと同じ質問ばした女んこがおったよ。魔力はふわふわ綿あめの味がするとさ。旨かよ!」


「マック、どうだ?魔力はまた増えているのか」


後方から、マーカスが聞く。


「そうさー、やっぱり回復の早か気がするばい」


「あー、魔石の封印が心配だわぁ、、、」


サンディーが嘆く。


「何か心配事でも?」


私は彼女に尋ねた。


「うん、この近くにね、ブカスト王国から吸い上げたマナを貯蔵しているのぉー。だけど、封印が解け掛けてて、魔力も漏れ出しているみたいなのよぉ」


「は?我が国から吸い上げた!?」


私は驚いて、サンディーの両腕を掴んだ。


「おいおい、カルロ!手荒な扱いをするな。理由なら話してやるから」


マーカスが、私の手をサンディーから引き剥した。


「いや、すまぬ。カッとなってしまった」


「大丈夫よ!カルロ。マーカスちゃんは庇ってくれたけど、結局のところ、アタシがちょっとやらかしちゃった話なのよぉ」


サンディーとマーカスは事情を知らない私に、アレクサンドリア女王時代の話をしてくれた。


「それで、夫が子を殺しただと?」


「そうなのぉ、、、。アタシもう自分を見失うほどの怒りが湧いてきちゃって、、、」


マーカスが言うには、その悍ましい子殺しは、我が国の王族が指示したらしい。


私は頭がクラクラした。


「民を愛し、民を守るのが王族の務めだろう。私利私欲に塗れ、隣国を乗っ取ろうとするなど、馬鹿げている」


私はこんなに祖国を恥じたことはない!と憤りを露にした。


「まぁ、それでもアタシのしたことは許されないことなのよー。四千年近く魔石と一緒に自分の魂も魔塔へ封印して見守っていたのだけどぉ、そろそろ限界みたい。でも、心配しないでー!生きているうちに、ちゃんと片付けるから」


「サン、魔石の使い道はマクス殿と相談中だから、心配しなくていい。それより、持ち出した量と使い道を今日はランディ・ボルド―に聞こう」


「じゃあ、早速三人を起こすねー!」


サンディーは、三人に向かって指をパチンと弾いた。


全く動かなかった三人が、身じろぎをし出す。


マーカスは迷いなく、一番右のブースに向かった。


サンディーと私はマーカスの後ろに控えた。


「ごきげんよう、ランディ―。今日もいろいろ話そうじゃないか?」


マーカスが切り出す。


ランディ・ボルド―は生気のない顔でマーカスを一瞥した。


「では質問する。魔石の採掘はいつ始めた?」


「二十年前ほど前だ」


「一人で掘ったのか?」


「私は『砂漠の薔薇」の頭領である。部下も使った』


その時、隣のブースから呼ぶ声がした。


「おーい!マーカス!!」


あの声はナスタか。


「うるさい順番が来るまで待っていろ!!」


マーカスが冷たく言い返した。


「はーい、待っておくねー!」


ナスタ、、、。


アイツは色々と大丈夫なのか?


明らかに自分の置かれた状況が分かっていないだろう。


私の疑問を他所に、マーカスは淡々と取り調べを進める。


「どのくらいの量を?」


「大した量ではない。手のひらに乗る魔石でも一年くらいは転移に使える。せいぜい数トン程だろう」


「具体的な使い道は?」


「主に魔力の補充だ。あとは幻覚魔法によく利用した。幻覚を見せ続けるならば、傍らに置き続けないといけないから、結構な量が必要になる」


「幻覚だと?誰に使ったんだ」


「言うまでもなく、女に使う。長期間使用したのは、ソベルナ王国のカシア王弟妃だ」


「それを使うと、どういう効果があるんだ?」


マーカスは嫌悪感満載の顔で問う。


「幻覚魔法を掛けた石を所持しておくだけで、女は誰と何をしているのかが分からなくなる。カシア王妃の場合は私を夫と認識するように幻覚魔法を掛けた魔石を寝室の床に埋め込んだ」


ランディ・ボルド―の回答を黙って聞いていたが、こいつは何を言っている?


自分を夫にだと?


「夫に見せる?何故そのような必要がある?」


私はマーカスを差し置いて、ランディ・ボルド―に質問した。


「そうすれば、簡単に抱ける」


全く反省していないのか、奴はニヤニヤしながら答える。


私の中の何かがキレた。


「お前!ふざけるな!!」


私がランディ・ボルド―に殴りかかろうとすると、マーカスが全力で止めに入った。


「ダメだ!カルロ!!」


「何故だ!こんなヤツ、即死刑だろ!いや死刑でも足りぬ!!」


私は興奮して、マーカスを怒鳴りつけた。


マーカスは反するように冷静な顔で、私を真っすぐ見据えた。


急速に頭が冷えた。


「すまん、マーカス。お前が悪いわけではないのに」


「いや、気持ちは充分分かる。だが、オレたちが己を見失ったらダメだ」


「分かった」


「カルロ!前回ね、アタシもこいつを叩いちゃって、まーちゃんから何回も怒られたのよぉ。やっぱりムカつくよね!でも、アタシも手を出さないように頑張る。カルロ、アタシと手でも繋いでおくぅ?」


サンディーは、私に左手を差し出して来る。


私は右手でサンディーの手を握った。


「サン、賢いな。カルロ、これで聞き手を封じられたから、暴れにくいだろう」


マーカスが面白いものを見たような顔で揶揄って来る。


「いいから、質問を続けろ、マーカス」


「では、他にはどんな場面で使ったんだ?」


「ノード王国の孤児院で使った。各国から孤児を集め、魔法使いの素質がある者には魔石を持たせ、魔法の練習をさせた」


「ほう、携帯すれば、マナの無い国でも魔法が使えると言う事か」


「そうだ」


「他には?」


「ブカスト王国に移動できる転移ポイントを作る際、地中に埋め込んだ」


「何故、転移ポイントをブカスト王国にばかり繋いだんだ?」


「私の本拠地はブカスト王国であり、私は王族であるからだ」


「それ、お前が勝手に言っているだけで、国王陛下は認めてないからな」


マーカスは面倒くさそうに言い捨てた。


「まあ、いい。今回分かったことは魔石の採掘は思ったほど出来ていない点と、使用についても個人レベルの利益が中心だと分かった。ノード王国の孤児院はマクス殿が確認して来るだろう」


「じゃあ、次にいこっか!」


サンディーが明るく宣言し、ランディ・ボルド―の前でまた指をパチンと鳴らした。


すると、ランディ・ボルド―は深い眠りに落ちたのか、首がガクッとなった。


「サン!!まさかトドメを刺してないよな!?」


マーカスが慌てる。


「いやだ―!マーカスちゃん、流石にトドメは刺してないわぁ。深い眠りと若干の苦痛くらいは、、、。ハハハ」


「若干の苦痛?」


言葉尻を取ると、サンディーは、私の方を向いて言った。


「悪夢くらい可愛い御仕置でしょ!」


どうやら、彼女は女神ではなく、小悪魔だったようだ。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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