65 侍女になれる
楽しい物語になるよう心がけています。
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身なりはバッチリ整った。
もう、いつ呼ばれても大丈夫!!
昼食後、私とマクスは少しお昼寝をして、17時頃には起きた。
お湯を貰い身体を拭いてから、晩餐会用に持って来たドレスを纏う。
今回は急に隣国へ訪問することになったので、マクスが手配してくれたドレスを持って来た。
“ソベルナ王国の国旗は、濃い紫の地色に、二頭の金獅子が描かれていて、縁には赤いフリンジが付いている“
その国旗を意識した、濃い紫色の豪華な織が入ったシルク生地を使って作られたドレスは、縁のところへ金獅子の刺繍を金糸で緻密に施されている赤いリボンが縫い付けられていた。
見るからに、とても高貴な雰囲気と華やかさがある。
色々な意味で、お高そうなそのドレスに、息を呑む。
だけど、そうは言っていられない。
コレしか、無いからだ!!
公式訪問ではないので、今回、侍女達は連れて来なかった。
と言うか、私とマクスは、二人で何とかすると言うのが、王宮の人々の中で当たり前になって来ている感じがする。
公式な場に出る時のメイクや、ドレスに負けないよう髪をおしゃれに整えるというのは、私にとって、かなりハードルが高い。
それでも正に今、何とかしないと行けないのだけど、、、。
鏡と睨めっこしながら、メイクが濃くなり過ぎない様に気をつける。
三十分がかりで、何とか完成。
さて、髪は、、、。
悩みながら、鏡の前で考え込んでいると、一足先に着替え終わったマクスが、ドレッサールームに入って来た。
「キャロル、どう?」
彼は、私の目の前で、くるりと回って見せる。
「バッチリだわ!マクスの衣装は、このドレスとお揃いなのね」
「ああ、普段着以外は、全て揃いで誂えて欲しいと衣装担当には言ってある。今回は、一揃えしか、完成してなかったから選ぶ余地も無かったが、しばらくすれば注文した物がどんどん仕上がって来るだろう。今後は出る場所に合わせて、キャロルが選べばいい」
「どんどん?」
「そう、衣装は、結構必要になる。装飾品も必要なら揃えて構わない」
「なるほど、それだけ社交の機会があるってことね?」
「そうそう」
こう言う話をしていると、私は王太子妃になったんだなぁと実感する。
それはさておき、今は髪型、、、。
髪をリボンと一緒にふんわり編み込んでサイドに流そうかな。
それなら出来そう!
私がドレスとお揃いの金の刺繍が入った赤いリボンを手に取ると、マクスはそのリボンを横からスッと取った。
「手伝うよ。どうしたい?」
彼は、鏡の中の私に話しかける。
「は?マクスが、お手伝い!?」
「ああ、エリーの髪を何度も結ったことがあるから、多分出来る」
マクス、出来ないことが無い説、、、。
ちなみにエリーは、マクスの四歳年下の妹である。
「それなら、リボンを一緒に編み込むとか、出来る?」
「多分出来る。編み込んだ後は結い上げるのか?それとも降ろす?」
「結い上げるって!!えっ、出来るの!?」
「問題ない」
いや、私には無理だわ。
「マクス、王太子をクビになったら侍女が出来るわね」
「それは色々な意味で勘弁して欲しいね」
私と喋りながら、もう手をサッサと動かし始めたマクス。
良かったー!!本当に良かった!!
ボロボロの頭で晩餐会なんて、どうしようと思っていたから。
―――――二十分後。
ふんわりと柔らかな編み込みを、クルリと後ろで纏めたヘアアレンジが出来上がった。
リボンは一緒に編み込んで、最後は纏めたお団子の下で大きな蝶々結びにしてある。
お団子の上部にはパールの飾りも品よく刺してあった。
手鏡で後ろを確認して私はマクスに言った。
「上手過ぎない?」
マクスは少しはにかみながら「どういたしまして」と言った。
十九時に晩餐会の会場へ案内された。
会場は、街を見下ろせる眺めのいいお部屋だった。
大きな窓から外へ目を向ければ、もうそろそろ日没の時間のようで、風景がとても美しい。
そして、テーブルに向き直れば、皆さんお揃いになられていた。
どうやら、マクスと私は主賓として、最後に呼ばれた様だ。
テーブルには、窓側にノード王国アレン国王陛下と王妃殿下とレード様が並び、向かいの席はマクス、私、トッシュ少年の順番になっていた。
私達の席から、外が眺められるようにと配慮された席次が嬉しい。
そして、ごく内輪の会にしていただいたことにも感謝したい。
多分、アレン陛下は、今回の事件の詳細を早く聞きたいという事だろうけども。
「お誘いありがとうございます」
マクスは、アレン陛下へ挨拶をした。
「こちらこそ、貴殿たちは結婚したばかりで忙しいのに、こちらまで足を運んでくれてありがとう。マクス殿と会うのをリンが楽しみにしていてね。キャロライン殿も気楽に過ごして貰えると嬉しい」
柔らかな笑顔と気さくな語り口調のアレン陛下にほっこりする。
「お心遣いありがとうございます」
私も笑顔で返した。
「また、ブカスト王国のトッシュ王子も遥々来てくれてありがとう」
アレン陛下はトッシュ少年にも声を掛ける。
「初めまして、国王陛下。僕はブカスト王国第八王子トッシュ・アラン・ブカストです。現在、遊学中でソベルナ王国へ滞在しています。今回はノード王国のことを沢山知って帰りたいと思います。よろしくお願いします」
トッシュ少年は溌剌と挨拶をした。
アレン陛下の笑みが深くなる。
「レナードに聞いたが、トッシュ殿は魚釣りに行ってみたいのだとか?是非、機会を作ろう。楽しみにしていて欲しい」
「国王陛下、ありがとうございます!!楽しみにしておきます」
弾ける様な声で、喜びを表現するトッシュ少年。
その場にいる皆が笑顔になった。
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