63 最高のランチ
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
マクスの何処がいいのか、、、。
「さぁ、何処ですかねぇ、、、」
相手は他国の王族ということもスッカリ忘れて、私が考えながら呟くとリン王女殿下は、豪快に笑った。
「ハハハ!マクス、素直でいい子だね!」
彼女は、マクスに向かって言い放つ。
「おれ、見る目はあるんで」
マクスはムッとした表情のまま、言い返した。
「ここで、社交辞令をいう娘なら面白くないと思っていたんだよ。キャロライン嬢、驚かせて、すまない」
私の方へ向き直って、リン王女殿下は謝る。
「いえ、私こそ的確なお答えが出来ず、すみません」
私もお詫びを伝えて、互いにニッコリと微笑む。
そこへ、レード様が声を掛けて来た。
「キャロル殿、休憩室の準備が出来ました。閣下、彼女を早く休ませたいので、そろそろ宜しいですか?」
「あら、レナードもそんな気遣いが出来るようになったのね。分かったわ。キャロラインさん、また後でね」
「はい、お気遣いありがとうございます」
リン王女殿下は踵を返し、立ち去ろうとして、数歩進んだところで、急に立ち止まった。
「あら?そちらの小さな貴公子は、どなた?」
「閣下、そちらはブカスト王国の第八王子トッシュ殿です」
レード様は、素早くトッシュ少年の横に行って、リン王女殿下のことを紹介した。
「トッシュ殿、彼女は我が国の王国軍の総帥リン王女です。私の父の妹に当たります」
「初めまして、ブカスト王国より参りました、トッシュ・アラン・ブカストです。ソベルナ王国へ遊学中で、今はマクシミリアン王太子に魔法を習っています。ノード王国は僕の国に無いものが沢山ありそうでワクワクしています。色々な事を見聞きして帰るつもりです。よろしくお願いします」
トッシュ少年は本日も天真爛漫な様子で、にこやかに挨拶をした。
「トッシュ殿、遥々ノードの地まで来て下さりありがとう。私は逆にブカスト王国の話を聞きたいわ。時間があれば語らいましょう。よろしく」
リン王女殿下は、トッシュ少年にも右手を出した。
トッシュ少年は、両手でリン王女殿下の手を包んだ。
「トッシュは外交も難なくこなしそうだな、、、」
いつの間にか、私の隣に立っていたマクスが呟いた。
レード様が用意してくれたのは、休憩室というよりは、客室で、横になるベッドもあった。
時刻は午後一時、昼食は白いパンで白身魚のフライをサンドしたものと、黒胡椒のかかったポテトフライにグリーンサラダ、そして冷たいオレンジジュースが入ったカゴを部屋に入る際に渡された。
「夜は皆で食事をしましょう。それまではゆっくりお休みください」というレード様の提案に私とマクスは乗ったのである。
というわけで、夕刻までこのお部屋でのんびりと過ごせることになった。
トッシュ少年はレード様と行動を共にするらしく、二人で何かを相談しながら、去って行った。
「キャロル、食事と休憩はどっちから?」
「うーん、夜ご飯が入らなくなったら嫌だから、先に食べる」
「食欲は?」
「さっきまでは空いてないと思っていたのだけど、いい匂いがしてきたら、急に空いて来たわ」
私はカゴを指差して言った。
「ノード王国は、海産物も豊富で旨いと有名だから、期待していいと思う。じゃあ、用意するか!」
マクスは、ササっとテーブルを整えて、私を座らせた。
「なんかごめんね。疲れがピークだったみたいで」
「気にするな。慣れないことばかりで疲れるのは当たり前だ。栄養と睡眠で大体は解決する!さあ、食べるぞ」
マクスに促されて、カゴの中の白身魚フライのサンドに齧り付いた。
「!!!」
美味しい!!
ザクザクの衣と、ふわふわの白身魚の旨みが最高だー!!
声にならない声で感激していると、向かいに座っているマクスが、クスクスと笑い出す。
「キャロル、美味しさが顔に出ていて可愛いよ」
私は口の中のものを飲み込んでから、マクスへ言い返した。
「だって、こんなに美味しいお魚料理は初めて食べたから!!余裕で完食出来そう」
「ああ、沢山食べて、昼寝でもすれば、元気になるだろう」
マクスはゆったりとした口調で、私に言う。
そう言えば、彼はまだ白身魚フライのサンドに手をつけてない。
「マクスはこれを食べたことがあるの?」
「いや、初めて食べる」
「じゃあ、早く食べて!!感動を分かち合わなきゃ!」
私が圧をかけると、マクスは白身魚フライのサンドを口に運んだ。
「!!!!!」
目の前のマクスがいい顔をする。
「ほら!美味しいでしょう?」
強く何度も頷く、マクス。
「私、しっかりと味わいたいの。おしゃべりは食べた後にしない?」
私の提案にマクスは食べたものを飲み込んでから、答えた。
「コレ、信じられないくらい旨いな!ああ、しっかり味わおう!」
二人で強く頷きあってから、ノード王国初の食事を堪能する。
無言の顔芸大会になり、美味しい顔を見せ合う。
こんな時間もいいなと、、、。
感動のランチタイムが終わり、次はゴロゴロお昼寝タイムに突入する。
「キャロル、着替えるのか?」
「だって、この格好じゃ、ゆっくり眠れないもの」
私が、テキパキと動きやすいワンピースに着替えるのを、マクスは眺めている。
「そんなに見られると、、、」
「ああ、ごめん。無意識だった、、、」
マクスに指摘すると彼は目を逸らした。
私は少し気になっていた事を聞いてみようかなと思い付く。
「そう言えば、最近マクスは朝までグッスリ眠る事が多いよね?」
そう、あの違和感のある朝を迎えてから以降、マクスは私を抱かない。
飽きるにしても、早過ぎない?
王国民に向けたお披露目パレードまで、後一ヶ月も無いのに、やっぱり、「この結婚は無かったことにしよう」なんて、言われたらどうしよう。
そんな少しの不安から、中々聞けなかったのだけど、今なら聞きやすい気がする。
返事を待つ間、マクスの顔をじーっと見る。
何と答えるのだろう?
「そうだね」
「疲れているの?」
「んー、そんなには」
「そう?」
「そうだね」
もう、何も答えてくれない。
やっぱり、何か隠しているの?
目の奥から涙が溢れて来る。
疲れも相まって、我慢が効かない。
「グスッ。やっぱり、この婚姻は無かったことに的な話になるのかな、、、」
私の声が震える。
「なっ?バカな!何でそんな話になった!」
「だって、普通に心配になるわよ」
「キャロルが心配になる?」
「ええ、なるわよ」
「ん?」
「ん?」
二人で首を傾げる。
すでに不安感に押し潰されて、涙を流す私と、全く意味の分かってないマクスが見つめ合う。
「マクスが、私を抱かなくなった」
グズグズの声で勇気を振り絞って、一番聞きたかった事を口に出した。
私の言葉を聞いて、マクスはポカーンと口を開けて固まった。
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