61 恋仲にはなれない
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
ランディー・ボルドー、いや、コイツは一体何なのだろう?
私のこの男に対する嫌悪感はすでに限界を超えていた。
女は道具、子供も道具?
で、作りたいのが魔法の国だとは、、、。
愚か過ぎる。
大体、魔石を沢山見つけたから、何だと言うのだ。
己の力量に見合わないモノを使いこなせると思っているオメデタイ脳みそに言ってやりたい。
お前には無理だ!と。
取り調べもひと段落したところで、マクスが皆に問い掛けた。
「今後の取り調べスケジュールは、どうしたい?」
「マクス殿、この者とその仲間たちの取り調べは余罪も多く、かなりの時間を要するだろう。私は、この事件の取り調べの一切をソベルナ王国のマクス殿へ一任する。そして、これまで見聞きしたことを、父へ報告するため、近日中に帰国するつもりだ。ロレンス王弟妃とマーティン王子の事は内容が内容なだけに、先ずは父と相談する。とは言え、彼女は陰謀に加担している。王族だからと無罪放免にはしない。何かしらの懲罰は科す」
レード様は、マクスへ告げた。
「レード殿、分かった。今後は、おれとキャロルが責任を持って取り調べを進める。報告も貴殿へ毎週入れる。また、帰国の際には、おれたちも同行させてくれないか」
「ありがとう。同行してもらえると私も助かるよ。宜しく」
ノード王国への同行とは、前にマクスが言っていた、リン王女への面会も兼ねているのだろう。
「オレは出来るだけ参加させて欲しい。ピピ殿には面倒を掛けるが、コイツらには聞きたいことが沢山ある」
マーカス殿下は、こちらへ日参して来そうな勢いである。
確かにブカスト王国と、我がソベルナ王国のに関係する悪事は、まだ沢山ありそうな気がする。
「そーちゃんは、どーするのぉ?」
「僕は主に護衛として、ここに居るので、殿下の指示が有れば参加します」
「ふーん、そうなのぉ?」
「はい」
「ピピとマックはー?」
「ミーは、マーカス殿下の送り迎えで参ります」
「おいは美味しかもんば食べたいけん。いつでも呼んでくれてよかよ」
サンディーは、弟とピピ、マックの今後のスケジュールを確認してくれた。
「まーちゃん、アタシは毎日来ていいのぉ?」
そして、最後は自分のことをマクスに尋ねる。
「ああ、サンディーが居ないと安全に話が聞けない。よろしく」
「うわっ!アタシ、お役に立っているのねー。マーカスちゃんに会えるのも嬉しいわ!」
「え、オレ?」
マーカス殿下は、自分の名前が出て来るとは思ってなかったのか、驚いている。
「マーカスちゃん、アタシが冥界に送った夫にそっくりなのぉー!カッコいいわぁ!」
サンディーの言っている内容は、果たして伝わるのだろうか?
「冥界に送った夫?サンの夫は亡くなったのか」
フツーに、サン呼びしている、マーカス殿下。
流石、順応性があり過ぎる双子王子の片割れ。
「んー、まぁ、そんな感じぃー」
「サンの夫はブカスト王国の第三王子だったと、ランディー・ボルドーが言っていたな」
「そうそう。真面目で簡単に騙されそうな夫だったのぉ。でも顔はカッコよかったよー」
「そうか、でも残念ながら、オレは昨日、正式に妃を決めたばかりだから、サンと恋仲にはなれないな」
マーカス殿下が、何だか楽しそうに笑っている。
「マーカスちゃん、売約済みなのぉー!?残念!!」
サンディーが、手に持った紗を被って、悔しがる。
「マクス殿、実は後から話すつもりだったが、今回の事件の責任を取って、ブカスト王国の国王は退位する。それに伴い、オレの即位が決定した。妃は、貴殿たちが、以前見たことがあるベルだ」
以前といえば、、、。
「あー、あの時の女性ですか?」
「そう、閨から布を被って出て行った女だ。彼女は突然王妃になる事になり、戸惑っている。キャロル殿、もし良ければベルと仲良くしてもらえると嬉しいのだが」
「ええ、それは勿論!!」
私もニッコリと笑顔でお返事を返した。
次の瞬間、離れたところから声が聞こえた。
「マーカス!!マーーーカス!!」
それは、左隣のブースにいるナスタ殿下が、マーカス殿下を呼ぶ声だった。
マーカス殿下は、声の主の方へ、ツカツカと歩いて行く。
「何か用か?」
「いや、父上が、、、。本当に退位するの?」
「ああ、お前のしでかしたことの責任を取るんだよ」
「僕のした事って、そんなに大変な事だったんだ、、、。マーカス、ええっと、今更かも知れないけど、僕は父上の子供じゃないって、公表したらどうかな?」
オドオドしながら、ナスタ殿下が話す。
私はマーカス殿下が、また激怒するのでは無いかとハラハラしながら見守っていた。
「ナスタ、そんな簡単に父親が国王では無いなどと、発表することは出来ない。この件の対応はオレとカルロ、そして父上の三人で慎重に話し合う。また、ソベルナ王国のマクラーレン領での出来事は、通常ならば戦争の引き金になるような事件だぞ。今回、ソベルナ王国は温情で、おれが国に一旦持ち帰り、父上と相談する機会を与えてくれたから、大ごとにならずに済んだんだ。勿論、お前の処分は、しっかりと調査してから決める。クビが飛ぶことも覚悟しておけよ」
私の予想に反して、マーカス殿下は諭すような口調で、ナスタ殿下へ語り掛けた。
ナスタ殿下もマーカス殿下の話を神妙な面持ちで聞いている。
「・・・僕のせいで、本当にごめんなさい」
ナスタ殿下、最後は涙をポロポロ流しながら謝っていた。
あの双子と、もっと幼い頃から交流していたら、この王子の人生も少しは違っていたかも知れない。
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