59 質問合戦
楽しい物語になるよう心がけています。
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サンディーが、ピピと遊び出した。
「サンディー!本題が進まない。落ち着け」
おれは、サンディーに注意をした。
「え!あなたは、サンディーさんなのですか!?」
ピピは大きな目を見開いて、サンディーをまじまじと見つめる。
「やーん!まーちゃん、答えを言っちゃダメよぉ!!」
「あ、サンディーさんですね」
ピピは、確信したようだ。
今回、大人数でここへ来たのは、取り調べ中の安全確保以外にも理由がある。
おれは、この件に於いては、出来るだけ人を介したくなかったからだ。
事実を少しでも正しく知って欲しいという想いで、このメンバーを招集した。
ここにいるレード殿、マーカス殿、そしておれは、今後、国を背負って生きて行く立場にある。
甘い考えと言われそうだが、彼らとは、いつどんな時にでも対話を出来る関係を作りたい。
この取り調べで、ソベルナ王国に不都合な内容が出てくる可能性もあるが、それは今、真摯に受け止め、反省し、未来に繋げれば良い。
「サンディー!あいつが、ランディー・ボルドーだ。取り調べする前に危険な要素が有れば、取り除いて欲しい」
「あーい、了解ー!」
マイペースな彼女は、楽しげに鉄格子の中へ入って行く。
おれたちも後へ続き、鉄格子の中へと入った。
「サンディーさん!前回、私は彼に触れ、魔力を流したら、心臓がドクンとして倒れました。お気をつけて!」
キャロルが、先走りそうなサンディーに、注意を促す。
「はいはい、分かったよぉー。アタシはこの人に触れなくても、大丈夫だからぁ」
思っていたより冷静だったか、サンディー。
「初めましてー!アタシは大魔法使い様だよぉ。あなたのお話、沢山聞かせてねー」
瞳を閉じて、じっとしていたランディー・ボルドーの目が、突然クワッと開いた。
「大魔法使いだと?本物なのか!?」
「あんら、信用してくれないのねぇ。アタシは本物よー。サンディー・アレックス・ソベルナっていう名の女王は、ご存知ないかしらぁ」
「何を言っている。彼女はソベルナ王国、二代目の女王だ。もう遥か昔に亡くなっている。私を騙そうとしてもムダだ」
「じゃあ、証明してあげようかぁ?」
サンディーは、ランディ・ボルドーの胸の前に手を翳す。
ランディー・ボルドーから、湯気のようなものが立ち昇り、サンディーの手のひらに向かって流れて行く。
サンディーは、目に見えない何かを掴むような仕草をした。
「ほーら、砂漠の薔薇の出来上がりー!!」
サンディーは、手のひらに乗っている物を、皆に見せる。
砂色の石、それは薔薇の形をしていた。
「ま、まさか、、、」
ランディー・ボルドーが、狼狽える。
「マーカスちゃん、どーぞ。これが本物の砂漠の薔薇よぉ」
サンディーは、マーカス殿に石を渡した。
「これが、本物の砂漠の薔薇だとは?どういう事だ」
「これは、願いを叶えることが出来る砂漠の薔薇。要は魔力を固めたものよぉ。ランちゃんの魔力は随分減っていたけれど、これを作るくらいはあったからー。ランちゃん、もう魔法は使えないでしょ?」
サンディーは、ニヤリとランディ・ボルドーを見た。
無表情だった男の顔が歪む。
「まさか、諜報機関名の『砂漠の薔薇』という名は、これから取ったのか?」
マーカス殿は、手のひらに乗っている石を、まじまじと見ている。
「サンディーさん、魔塔下には、これがあるってこと?」
「キャロちゃん、そうそう!そーよ!たーくさんあるよぉ。悪者が盗ってなければー」
サンディーは、手足を鎖で拘束されたランディ・ボルドーの顔の前で、マーカス殿の紗をぐるぐる回し出す。
見ている側からすると、ただの嫌がらせにしか見えない。
「サンディー、余計な事は、、、」
おれが止めようとすると、キャロルから肘鉄で止められる。
思いの外、すぐにサンディーは、ピタっと手を止めた。
「真実だけを話しなさい、ランディ・ボルドー!!」
強制力を孕んでいそうな言葉を、サンディーが叫んだ。
場の空気がピリっと張り詰める。
全員がランディ・ボルド―に注目した。
すると、彼はあっさり「はい」と、返事をした。
次の瞬間、彼は無表情から、苦痛な表情になる。
今までの奴らと同じく、無意識に答えたのかも知れない。
サンディーは、一歩下がって、後ろにいるおれたちの方へ振り返った。
「みんな!何が聞きたい?ランちゃん、何でも答えるよぉ」
「マクス殿、質問を」
マーカス殿に促されて、おれは質問を始めることにした。
「お前は誰だ?」
「ランディー・ボルドー。ブカスト王国諜報機関トップ、ソベルナ王国男爵、ノード王国準男爵」
「え!?いつの間に準男爵になった?」
レナード殿が、割り込む。
「今月、承認された。以前より国王へ、王弟妃ロレンス様から推薦して貰っていた」
推薦?
「お前とロレンス叔母の関係は何なんだ?」
おれも切り込む。
「同志だ」
「具体的には?」
「都合の良い女だ」
答えた途端、物凄く嫌そうな表情を見せるランディ・ボルドー。
「最低ね」
横のキャロルが呟く。
おれはそれくらいのことも予想していたので、驚きは無い。
「では、お前と家族は何を目的として行動している?」
「私の目標は魔法の国を作る事。大陸を統一し、ジョージを王とし、世界を手に入れる」
「ジョージとは、ソベルナ王国の王弟バンスの息子、ジョージ王子のことか?」
「ああ、ジョージは私の息子だ。ジョージもショージ王子も然り」
「ふぇ?どういう事だぁ?分からないわー」
サンディーは再び、ランディ・ボルドーの顔の前で、紗をグルグル回し出す。
おれは止めるべきか、好きにさせるべきなのか?
サンディーよ、これは何かの儀式なのか??
しばらく、見守っているとサンディーが、手を止める。
「まーちゃん、もう一回、質問してみてー」
「ランディ・ボルドー、魔法の国の王になるのは、ジョージ・S・ソベルナか、それともジョージ・ボルドーなのか?」
「私の息子、ジョージ・S・ソベルナだ」
「はぁ?」
その場の全員の声が揃った。
ジョージの瞳は紫色だ。
王家の血統なのは間違いない。
「マクス殿、我が国の王家の可能性もあるぞ」
おれが首を捻ったところで、マーカス殿が言った。
「まさか、、、。でも可能性はあるか」
「お前はブカスト王国の王族の血縁なのか?」
マーカス殿が、ランディ・ボルド―へ尋ねる。
「はい、祖先はブカスト王国初の双子王子の弟です。彼は瞳が紫だったため、生涯オモテには出してもらえませんでした。婚姻も禁止されましたが、密かに恋人との間に子が産まれました。それが私たちの祖先です」
「オレはその話を知らない」
マーカス殿が眉を顰める。
「嘘ではありません。私たち一族は、高い魔力を持っています。その能力を見込まれ、長年、ブカスト王国の諜報機関の仕事をして来ました。しかし、本当は悪さをしないよう、ブカスト王国は、私たちを見張る為に影の仕事をさせていたのでしょう?」
「確かに魔力が高いとは知っていたが、見張る意図など無い。それは勝手な思い込みだ」
「すみません、質問をします」
レード殿が手を上げた。
「私はショージ王子が、あなたの子供だと言う発言が気になります。貴方には何人の子供が居るのですか?」
おれも気になっていた点を、レード殿が取り上げた。
ただ、この質問は、とてつもない回答を導き出したのだった。
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