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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
58/127

58 誰でしょう?

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 陛下の執務室に集まったのは、陛下を除くと六名。


マクスと私とジャン、そしてノード王国の第一王子レナード殿下、ブカスト王国第二王子マーカス殿下、最後に復活したての大魔法使いサンディーさん。


今回、トッシュ少年はお留守番をしてもらうことになった。


「昨日、てこずったランディ・ボルド―の取り調べに、今日は君たち六人で行ってもらう。成果があれば嬉しいが、何よりも身の安全に気を付けて行って来て欲しい」


「父上、現場には先にピピとマックが向かっています。万全の体制で行ってきます」


「ああ、くれぐれも気をつけて」


マクスと陛下が皆に向かって注意喚起の話をしている時、横からトンッと軽く肘うちされた。


「キャロル殿、あの女性が被っているのはオレの、、、」


マーカス殿下が言いにくそうに、小声で私へ聞いてくる。


私がその女性であるサンディーさんへ目を向けると、彼女は昨日の紗を頭から被っていた。


この部屋に来たときは、確か何も被ってなかったハズ。


何がどうしたのだろう?


サンディーさんは、明らかに顔を隠している。


「マーカス殿下、すみません。あれは昨日お借りした紗ですよね。直ぐにお返しいたします」


私はサンディーさんの方へ向かって踏み出そうとした。


すると、肩を掴んで止められる。


「いや、気に入ったのならば、返却はしなくていい」


マーカス殿下は私の耳元へ囁く。


「え、それでいいのですか?」


「ああ、構わない。彼女からわざわざ取り上げなくていい」


マーカス殿下はそう言うけれど、改めて、あの紗を観察すると、とても高そうだ。


繊細な文様が織り込まれていて、金糸や銀糸もふんだんに使われている。


後で、サンディーさんにどうしたのかを聞いてみよう。


「それでも一応、サンディーさんに確認しますね。とてもいい品に見えますから、簡単に頂くわけには行きません」


マーカス殿下は横で頷いた。


「キャロル、聞いていたか?これから、全員で牢へ向かう。何かがあった時の為に、ペア分けをする。おれとレード殿、キャロルとジャン、サンディーとマーカス殿。これは転移の魔法が出来る者と出来ない者を組み合わせた。何かあれば二人で安全な場所へ転移して欲しい」


「分かりました。私はジャンと組むのね」


「マクス殿、よろしく!」


レード様がマクスへ挨拶をした。


マクスは、レード様の肩をポンポンと叩く。


「サンディー殿、宜しく頼む」


その横で、マーカス殿下も、サンディーさんへ声を掛ける。


「・・・・・・」


ん?サンディーさんが何も返事をしない。


あれだけ普段うるさい人が何も言わないなんて、具合でも悪いのかしら?


「皆さん!ちょっとすみません。サンディーさんの様子がおかしいので、少し席を外します」


私は皆にそう告げるとサンディーさんの腕を掴んで、廊下に出た。


急に私たちが執務室から飛び出して来て、警備官たちが驚く。


「どうされました?」


「あー、大丈夫です。ちょっと二人で話したいことがあって出て来ただけです」


「それでしたら、お向かいの部屋が空いておりますので、どうぞ使われてください」


警備官の一人が気を利かし、向かいの部屋へ入れてくれた。


「サンディーさん、どうしたの?具合でも悪いの?」


私が問い掛けると、彼女はゆっくり首を振った。


「急に顔を隠したのは何故?その紗はマーカス殿下の布なの、気に入ったなら返さなくていいって言って下さったけど、そうじゃないのなら他の布を用意するから、それは返却した方がいいかも」


「えええ!そうなのぉ?」


驚いた声を上げるサンディーさん。


「ええ、そう。気に入ったなら貰っておく?」


「んー、アタシはあの方と組むのは、、、」


「あー、サンディーさんも、チャラそうなのは嫌いなの?」


「チャラい?」


「軽そうな人ってことよ」


サンディーさんは首を傾げる。


「あの方、見た感じ体重は軽くないと思うよぉー」


「いや、体重じゃない、、、。んー、何て言えば伝わるのかしら」


私は顎に手を置き、少し考えた。


唐突に、サンディーさんが話し出す。


「キャロちゃん、マーカスちゃんはアタシの夫シオドロスにそっくりでねー。驚いちゃった!!」


は?冥界送りにした旦那さま!?


「それで、顔を隠したの?」


「そうそう。変なことしてごめんねー。大丈夫ぅ、もう落ち着いたー!」


サンディーさんは頭から紗を外して、私に謝った。


「落ち着いたのね。それなら良かった。紗はどうする?貰っておく?」


「使っていいなら、貰っちゃおうかなー!」


あ、いつもの調子が出て来た。


「よし、部屋へ戻ろう!」


私は再びサンディーさんの手を引いて、執務室へと戻った。




 「お待たせしました」


「おかえり、キャロル、サンディー」


私が皆に一声掛けてから、部屋に入るも、マクス以外からの返事がない。


皆の視線は、私の後ろへ向かっている。


「大魔法使い殿は、そんなに美しい方だったのか!」


マーカス殿下が出した驚きの声に、レード様とジャンも頷く。


陛下は、最初から知っていたので、苦笑している。


「マーカスちゃん!これ綺麗だから貰っちゃってもいいかなぁ?」


いつもの調子で、サンディーさんが、マーカス殿下に話し掛ける。


流石の彼も『ちゃん呼び』は衝撃的だったようで固まった。


「マーカス殿、サンディーはこれが通常運転なので慣れてください」


間髪を入れず、マクスは、マーカス殿下へ説明する。


「そうなのか?」


「マーカスちゃん、仲良くしてねー!!」


サンディーさんは気にせず、マーカス殿下へ笑顔で言う。


このギャップには、皆も慣れるまで、時間が掛かりそうだ。


「ああ、サンちゃんよろしく!!」


マーカス殿下が、まさかのサンちゃん呼びで返した。


「きゃー!!マーカスちゃん、ありがとね!!」


サンディーさんが、飛んで喜んでいる。


意外と柔軟なマーカス殿下に驚いた。


「姉上、僕は何と呼ばれるのでしょう?」


コソコソと、ジャンが聞いてくる。


「さぁ、予想がつかないわ」


「あんら、キャロちゃんの弟ちゃんは、ソーちゃんよ。ソードマスターのソーね!!」


「あ、名前じゃないこともあるのですね」


ジャンが冷静に言う。


「それとレナちゃん!!背が高くて、シュッとしてあるわぁー」


「サンディー殿、どうぞ宜しく」


こんな時でも、レード様は落ち着いている。


「あーい!!みんなアタシが守ってあげるからねー。楽しく行こ!!」


その時、ジャンの背後で寂しそうな顔をしている陛下が目に入った。


陛下、陛下を忘れているわ、サンディーさん!!


私は、サンディーさんの袖を引く。


「陛下を忘れているわよ」


出来るだけ、小声で言った。


「カエちゃんはお留守番よろしくねー!!アタシたち頑張って来るわぁ!!」


そう言うと、彼女はマーカス殿下の紗を振り回しながら、小躍りを始めた。


正直、スタート前から手に負えない感が滲み出ている。


「さて、サンディーの調子も上がって来たから、出発するか。最初は、おれが全員を転移させる。サンディー大人しく付いて来いよ」


「あーい。まーちゃんに任せるぅ」


サンディーさんは、クルクルと紗を回しながら、返事をした。


「マーカス殿下、すみません。見ての通り、かなりあの紗を気に入っている様なので、、、」


私が言葉を濁すと、マーカス殿下はケラケラ笑い出す。


「遠慮なく使ってくれ」


声を震わせながら、彼は言った。


「マーカスちゃーん!!ありがとー!!」


サンディーさんが、マーカス殿下に飛び掛かる。


私はサンディーさんの奇行にヒヤッとする。


その瞬間、私たちは牢へと転移した。




 昨日訪れた牢の扉の前に到着。


皆、この一瞬で気持ちを切り替えたのか、静かにマクスが開錠していくのを見守る。


二つ目の扉を開けると、ピピとマックが鉄格子の中で、スタンバイしていた。


「ピピー!!来たよぉ!!」


サンディーさんが大きな声を出したので、ピピが驚いて飛び上がる。


そして、冷静な声でサンディーさんに言った。


「ミーはお姉さんが誰か分かりません」


サンディーさんが両手で顔を覆う。


あら、結構ショックだったのかしら?


「声で当ててねー、だーれーでーしょー」


いや、心配して損したわ。


というか、今日はこんな調子で取り調べになるの???


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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