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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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54 眠り姫

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 目の前の男は、最強のスパイと言うにはあまりにも普通だった。


明るい茶色の短髪、ダークブラウンの瞳。


中肉中背の40代といった感じ。


「キャロル、さっきのジョージ・ボルドーの吐血みたいな事が起こらない様に気を付けよう」


「そうね、念のため、あの質問は最後にするわ」


私はランディー・ボルドーへ近づいた。


彼は私を睨んで来たりはしない。


ただ静かに座っている。


彼の肩に手を置き、「真実をありのまま話せ」と「制約魔法は無効とする」の二つを念じ、強めの魔力を流した、、、。


ドクンっと心臓が大きな脈を打つ。


あー、マズイ!!


でも、どうする事も出来ず、音は遠のき、私の視界は閉ざされた。



 目の前で、ランディー・ボルドーの肩に手を置いたキャロルがぐらりと揺らいだ。


「キャロル!!」


咄嗟に、手を伸ばし、抱え込んだ。


幸い、彼女が床に叩きつけられることは無かった。


だが、気は失っている。


一体、どうしてこうなった?


「だ、大丈夫なのか?」


マーカス殿が言う。


「いや、このパターンは初めてだから、分からない」


マーカス殿は、自身の肩に掛けていた紗を床に敷いた。


「これしか無いが、良ければ使ってくれ」


おれはキャロルを紗の上にゆっくりと下ろした。


「ありがとう、マーカス殿。さて、どうしようか?一先ず、キャロルの回復を優先するか、このまま続行するか、、、」


キャロルの首筋に触れる。


温かさと脈を感じた。


命に別状は無さそうである。


「無理は禁物だ、マクス殿」


気遣いの言葉に礼を言おうと、マーカス殿の方を向いたところで、宙から白い毛玉が降って来た。


「お待たせしまー」


ピピは挨拶を言いかけたところで、キャロルの様子が目に入り、ピョンピョンと彼女に近づく。


「殿下、キャロルは寝ているのですか?」


「いや、ピピ。キャロルはランディー・ボルドーの取り調べの準備で、ヤツの肩に手を乗せて「魔法による制約の解除」などをしていたら、急に倒れたんだ。どう言う事が考えられる?」


「ミーはあまり詳しくありませんが、呪いか何かを掛けられた可能性もありそうです。サンディーさんに聞きますか?」


「呪いをかけた?」


マーカス殿が険しい顔で呟く。


「サンディーは詳しいのか?」


「はい、サンディーさんは物知りです」 


そう言えば、あいつは大魔法使いだった!!


すっかり忘れていた。


「ピピ、ありがとう。早速、魔塔へ連れて行く」


「魔塔?」


「ああ、魔塔というソベルナ王国の大魔法使いが封印された塔へ行ってくる」


「大魔法使いが封印、、、。凄いな、本当にソベルナ王国は魔法の国なのだな」


マーカス殿は興味津々な面持ちになっている。


「マーカス殿、大変申し訳ないのだが、貴殿を魔塔には連れて行けない」


「ああ、分かった。少し残念だが色々と事情があるのだろう」


「その様に察して貰えると助かる」 


おれはマーカス殿に礼を言った。


「すまないがピピ殿、オレをブカスト王国の王都にある王宮へ送ってくれないか?」


「マーカス殿下、王都ブカの王宮ですね。かしこまりました」


ピピは快く応じた。


「ピピ、おれはお前たちを見送ってから、魔塔へ向かう。マーカス殿を宜しく」


「はい、行って参ります。マーカス殿、行きましょう!」


ピピとマーカス殿は牢から消えた。


 おれは先程から、ランディー・ボルドーへの怒りで、腹わたが煮えくり返っている。


一方、ヤツは、こちらの様子を伺うこともなく、目を閉じ、静かにしている



 ここはピピの言う通り、サンディーに相談した方が良さそうだ。


おれは己のタガが外れて暴走してしまう前にキャロルを抱き上げ、魔塔へと転移した。



 二日振りの魔塔だというのに、何日も前のことの様に感じる。


キャロルを抱いたまま、魔塔の扉を引く。


一歩中に入り、扉を閉じる。


「サンディー!!」


おれは大きな声で叫んだ。


内心、ピピじゃなく、おれが呼んだら、あいつ出てこないんじゃないか?と少し不安もあった。


「あーい!呼んだ?」


心配を他所に直ぐに出て来た、サンディー。


「サンディー!!教えて欲しい事があるんだ」


おれは早口で捲し立てる。


「あら、まーちゃん焦っているのねー」


「ああ、焦っている!キャロルは犯罪者の取り調べで、魔法を使って制約の解除をしていた。で、突然倒れたんだよ。どうしたら良い?」


サンディはおれの話を聞いて、キャロルへ近づく。


そして、キャロルの額に包帯がグルグルに巻かれた手を乗せた。


サンディの手先から光の粒がユラユラと漂う。


「まーちゃん、これは呪いをかけられているみたいよぉー」


「呪い?」


「そうそう、眠り姫になっちゃってるわー」


「いつまで?」


「いや、眠り姫だからぁー」


「は?どう言うこと」


「運命の王子様がキスするまで、、、。きゃあ!キスっ!キスよぉー」


目の前でサンディーが悶える。


見た目がミイラなので、かなりシュールな絵面になっている。


「それって、おれがキスしたら目覚めるって事?」


「うーん、まーちゃんが運命の相手なら起きると思うけどぉー、違っていても落ち込まないでね」


うっわー、何それ。


怖すぎるだろう。


目覚めなかった時のおれのダメージ、、、。


半端ない!!


「サンディー、怖いんだけど」


「あんらーまぁー、まーちゃん弱気なのね」


「・・・・・」


「ごめんなさい。大丈夫よん!応援するからぁー」


ナーバスになるおれを急に励まし出すサンディー。


おれの愛する人なら、キャロルで間違いないのだけど、、、。


この場合、キャロルを信じるしかない。


おれは、腕に抱いているキャロルのくちびるにそっとキスをした。


「ギャー!甘酸っぱいわ」


サンディーは勝手にときめいて、クルクルとその場で回り出す。


彼女の楽しそうな様子はいいとして、、、。


「で、えっと、起きないんだけど、、、」


おれのボヤキで我に返ったサンディーは回るのを辞めて、近寄って来た。


そして、キャロルの額に手を乗せ、何かを唱える。


ふわりとプリズムが沸き起こり、キラキラとキャロルを包み込んだ。


おれは静かにその様子を見ていた。


やがて、プリズムが消え去ると、キャロルの瞼がピクッと動き始めた。


「キャロル?」


優しく呼びかけると彼女はゆっくり瞼を上げる。


キャロルの綺麗な瞳が、おれを見つけた。


「マクス?あれ、私、、、」


「キャロル、ランディー・ボルドーの肩に手を置いたところで倒れたんだ。覚えている?」


「ええ、覚えているわ。それで、ここは、、、」


キャロルは室内を視線で辿る。


そして、サンディーとバッチリ目が合い、固まった。


「ぎゃーーーー!!」


大きな叫び声と共にキャロルの腕が、ダラーンと落ちた。


「ああ、また気を失ってしまった、、、」


「あー、お嬢ちゃんとお話し出来るのはいつになるかしらねぇー」


サンディーがため息を吐く。


「サンディー、ミイラの姿を辞めたら?違う服装とか」


「まーちゃん、簡単に言うけどねぇ、、、」


サンディーは口籠った。


それより、おれは言いたい事がある。


「サンディー、おれに嘘をついただろう!何が眠り姫だ!!」


明らかに、おれがキャロルにキスをする必要なんて無かった。


「うふふ、たまには刺激が欲しくなるお年頃なのよぉ。お嬢ちゃんも治ったし、運命の王子様カッコよかったわぁ」


全く反省の色が無い、大魔法使いサンディー。


だが、おれは彼女に聞きたい事が山ほどある。


仕方ないから折れてやるか。


「キャロルを治してくれてありがとう。サンディーが物知りで良かった」


おれは精一杯の王子スマイルを作り、お礼を言った。


「いゃーん、どういたしまして!いつでも頼ってー、何でも聞いてー」


よし!言質は取った。


「サンディー、沢山聞きたい事があるんだ!」


おれはキャロルを抱えたまま、身を乗り出した。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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