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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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5 契約

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


(まさか・・・、こんな小さな指輪から何か出てくるなんて!!)


 キャロルは仰け反る。


 しかし、向かいの席に落ちた白い塊が何なのかは確認しなければならないだろう・・・。彼女は勇気を振り絞って、身体を起こした。


(あ、えっ、丸まっているだけで、塊じゃない?)


 恐る恐る手を伸ばして、ソレ(白い塊)に触れてみるとフワフワとしている。


――――程なく、ソレはほぐれていき、金色の双眸がこちらを捕らえた。


「う・・・うさ、ぎ?」


 目の前に現れたのは、少し巻き毛の白うさぎだった。耳が垂れていて、愛くるしい見た目をしている。


「そこのあなた、ミーを呼びました?」


 うさぎが当たり前のように話し出したので、キャロルは驚く。


(喋った!!あ、あなたって、私のことだよね?)


「――――え、ええ、そうかも?」


「ミーはピピと申します。森の精霊の眷属で、うさぎの妖精です」


 可愛い見た目に反し、ピピといううさぎはやけに硬い喋り方をする。


「初めまして、私はキャロラインです。――――で、あなたはこの指輪から出て来たよね?」


「はい、その指輪は召喚具ですから。ミーは呼ばれたら参上します」


「ピピは呼んだら、いつでも来てくれるの?」


 うさぎのピピは首を傾げた。そして・・・。


「キャ、キャロ、キ?」


(あっ!私の名前・・・。ウフフフッ、言いにくいのね!!)


「ピピ、私のことはキャロルと呼んで」


 キャロラインという名前を上手く言えないピピに、キャロルは助け舟を出す。


「はい!キャロルが呼んだらミーは参上します!」


 ピピは凛として、言い放つ。


「うっ!可愛い!!何、この子可愛い・・・」


 あまりの愛らしさに思わず本音を口走ってしまうキャロル。彼女は手を伸ばして、ピピのもふもふとしている巻き毛を手のひらで撫でようとしたのだが・・・。


――――ピピはサッと横に避けた。


「ピピは男の子です」


(おおおおっ、怒った声も可愛い・・・)


「あ、ごめんなさい!!」


「はい」


 ピピの見た目と不釣り合いな硬い態度も可愛い・・・。


(それにしてもこの子は何なのかしら?)


「ピピはマクスと知り合いなの?」


「いえ、ミーはキャロルに呼ばれたので参りました」


「そうなのね。この指輪はマクスがくれたの。だから、彼と知り合いなのかな~と思ったのよ」


「これはソベルナ王国の王室の魔道具です。指輪は精霊と契約している証になります。ミーはキャロルと契約しました」


「私と契約?――――それってどういうこと?」


「キャロルはミーのご主人様になりました。キャロルが困っていたらミーが助けます」


(ふう~ん、呼んだらいつでも来てくれるのかぁ~。それって、私は助かるけど・・・)


「この契約、ピピにメリットはあるの?」


「メリット?ミーはメリットなんて考えたことがありません。ミーはキャロルに選ばれたので、従者になるだけです」


(ピピ、私は従者を従えるほど偉い人でも何でもないのよ~。さて、どうする?)


「私はピピと主従関係になるよりも、困った時はお互いに助け合えるような友達になりたいわ。どうかしら?」


「キャロルはピピが困っていたら助けてくれるのですか?」


「ええ、勿論よ!」


 キャロルが返事をすると、ピピは彼女の膝へピョンと飛び乗る。


 可愛いらしくて、キャロルは思わずピピの背中を撫でてしまう。だけど、かれは先ほどのように横へ逃げたりはしなかった。


(もしかして、少し心を開いてくれた?)


「それで、ピピは何処から来たの?」


「ミーは王家の森から来ました」


(王家の森と言えば、王宮の外れで魔塔の周りに広がっているアレよね)


「ピピの住む王家の森って、魔塔の近くの森だよね?」


 キャロルが質問をすると、ピピは膝からピョンと飛んで、彼女の向かい側の席に座った。


「はい、時々魔塔にも行きます」


「魔塔にはだれか住んでいるの?」


 ついでに知りたいことも質問してみる、キャロル。


「今、魔塔で生きている人はいないです」


「生きていない人はいるの?」


「はい、魔塔で生活していた方が亡霊になって、そのまま住んでいます」


(えっ!?亡霊!!あー、嫌だ!絶対魔塔には住みたくない。魔塔送りは絶対に避けたい!!これ以上、問題が起こりませんように・・・)


 ピピは挙動不審なキャロルを黙って見ている。


(だけど、まあ・・・、心強い仲間が出来たわね)


「ピピ、頼りにさせて貰うわ!」


「はい、お任せ下さい」


(――――私にピピを召喚させた、マクスの意図はまだ分からない。だけど、悪知恵の効く人だもの、絶対何か理由があるよね。次に会ったら、お礼を言おう・・・)


♢♢♢♢♢♢♢♢


「ウソ!何でー!?」


 今、『恋人の丘』に居るはずのない人が立っているのだ。


 それは庶民のワンピースを着て、髪を下ろしたコルマン侯爵家のご令嬢カレンである。彼女はここまで一人でやって来て、恋愛成就ラッキーアイテム購入のための行列に並んだ。


 護衛や従者は見当たらない。


 キャロルは頬被りと帽子をかぶって、花壇に花を植えている最中だった。まさか、キャロルがここに居るなんて、カレンは夢にも思って無いだろう。


――――何故、キャロルが花壇に居るのか?


 リューデンハイム領に戻ったキャロルは『恋人の丘』で、花壇の手入れをしながら、恋愛成就ラッキーアイテムを買いにくる人を連日チェックしていたのだ。


(それにしても、何故カレン様?セノーラ様はどうした?――――ちょっと待って!!もしかして、セノーラ様にはここのことが伝わって無いってこと?)


 キャロルはセノーラではなくカレンが現れたので困惑している。


(カレン様はセノーラ様の代わりに私へ『天使カード』のことを聞いてきたのだとばかり・・・)


 彼女は勝手にカレンのことをセノーラの代理だと思い込んでいたことを猛省する。


(どうしよう!!マクスを巻き込んでしまったじゃない。ピピも召喚しちゃったのに・・・)


 早とちりだったと報告したら、確実にマクスからお説教を受けるだろう。


(普段優しい人を怒らせると怖いのよ・・・)


「マクスに謝らないと・・・」


 キャロルは数日前、『天使カード』は買いに来た本人にしか販売しないという旨をリリスとカレンに伝えた。


(という事は、彼女本人が『天使カード』を使うってことよね?あんなに冷酷な彼女にも好きな人がいるのかぁ~。相手は誰なのかな?うーん、想像もつかない・・・)


 キャロルが再び、カレンに視線を向けると・・・。彼女は丁度スタッフから、恋愛成就ラッキーアイテムの『天使カード』を両手で受け取っていた。


 彼女はそれを大事そうに胸に抱いて、帰って行く。


(カレン様、恋する乙女そのものだわ・・・)


――――実は予め、セノーラが来たら、違う絵柄(効果なし)の『天使カード』を渡すようにとキャロルはスタッフに指示していた。


 だが、まさかのカレン・・・。


 勿論、彼女はノーマーク・・・。


 カレンは効果の付いた『天使カード』を手に入れた。今更、返して下さいなんて、とても言えない。


(誰を想って、ここまで来たのかは分からないけど・・・。もう、上手くいきますようにと願うしかないよね~)


 キャロルはスコップを手に、雲一つない青い空を見上げた。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 遡る事、数日前。


 キャロルは領地に戻って購入者のリストを慌てて確認した。


 そして恋愛成就ラッキーアイテムが恐ろしい結果を出している事に気が付いてしまったのである。


 ここ一年、貴族の間で上級と呼ばれる公爵、侯爵、伯爵の御令息が立て続けに平民や子爵・男爵令嬢と結婚し、タブロイド紙のネタに上がっていた。


『身分違いの恋ブームか?』


 そんな見出しをキャロルは他人事のように思っていたのだが・・・。


 ところが、そのお貴族様を射止めたお相手は漏れなく、ここで恋愛成就ラッキーアイテムの『天使カード』を購入していることが判明。


 流行を作り出していたのはキャロルだった。


(その事実に気付いた時は心臓が止まったわ・・・)


 告白時に本心を答える程度の軽い魔法でも、貴族たちの本心を暴いてしまうと大変な事態を引き起こすのだと、彼女は分かっていなかったのである。


 ということは当然、上級貴族のご令嬢の中に真実の愛を求めてしまった男性に婚約破棄されてしまった方も多数いるということだ。


(これは知れ渡るよね~。恨まれているかも知れないわ)


 更に、この裏にキャロルが関与していると社交界に広まれば、貴族の紳士淑女の親からキャロルは突き上げられる可能性があるだろう。


――――マクスを心配している場合ではなかった。



 大切そうに『天使カード』を抱えて帰る、カレンの姿は見えなくなった。


 キャロルは面倒なことになりませんようにと祈るしかない。


(まだ気を緩められないわ。マーベル伯爵家のリリス様も来る可能性があるもの。とにかく、私がこのブームの裏にいる事、最悪、魔法使いであることさえバレなければ何とかなるはず!!――――しっかり身辺にも気を付けよう・・・)


 キャロルは手に持ったスコップを地面に力を込めて刺した。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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