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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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45 遊学

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 王宮の庭園をトッシュ少年は不思議そうに眺めている。


「トッシュ王子殿下、珍しいですか?」


「王太子妃殿下!!スゴイです!お花が沢山咲いていて綺麗です。そして、ここは涼しいです」


キラキラした笑顔で、気持ちを伝えてくれる。


「それは気に入って貰えて良かった。トッシュ殿は何を学びたいですか?」


「僕は魔法と言語のお勉強をしたいです。色々な国に行ってみたいです」


「そうですか。では、我が国の国王へご挨拶とお願いに行きましょう」


「はい!!」


トッシュ少年は曇りなき眼、美しい紫の瞳で、私達を見る。


この子を見ていると、心が洗われるような気がする。


私達はマーカス殿下の書状を持って、陛下の執務室へと向かった。



 今は正午を過ぎた頃だろうか?


ブカスト王国で随分時間が経った気がしたけれど、、、。


「トッシュ殿、お昼ご飯は食べましたか?」


廊下を歩きながら、マクスはトッシュ少年に聞いた。


「いえ、兄から急に呼ばれたので、食べていません」


確かに急だったわね、色々と。


「では、国王に会った後、一緒に食べましょう。苦手な食べ物や、食べられない食材はありますか?」


「特にありません。ソベルナ王国のご飯は初めて食べるので、ワクワクします!」


可愛すぎる!


「分かりました。では、後少し我慢していてください」


「はい!大丈夫です。王太子殿下、ありがとうございます」



お喋りをしていると、執務室に辿り着いた。


マクスは警備官に入室の確認をする。


陛下の「入って良い」と言う声が聞こえた。


「どうぞお入り下さい」と警備官が扉を開けてくれる。


扉の向こうに立っていた陛下が、私達を見るなり固まる。


「な、何だ?その子は誰の子だ!?」


陛下は見たことも無い焦りっぷりで、不謹慎だけど、ちょっと笑いそうになった。


「父上の、、、」


マクスは悪い子なので、陛下を揶揄う。


「いや、私は全く身に覚えが、、、」


いやいやいや、陛下!


少年の身なりを見れば分かるでしょうに、、、。


「初めまして、ブカスト王国第八王子トッシュ・アラン・ブカストです。遊学に参りました」


最高のタイミングで、トッシュ少年が挨拶をした。


陛下は呆気に取られている。


多分、脳内で今状況を整理しているのだろう。


「マクス、私を揶揄うとは良い度胸だな。トッシュ殿、ようこそソベルナ王国へ」


陛下はマクスには厳しい顔、トッシュ少年には優しい顔を見せた。


「父上、私達は先程ブカスト王国の第二王子マーカス殿と会って来ました。最短街道や砂漠の薔薇の話は、また後ほど報告に参ります」


「ああ、分かった。それで、これはどう言う経緯なのかを聞こう」


「見ての通り、トッシュ殿は紫の瞳を持っています。この瞳は私の瞳と同じ意味があります」


「何だと?」


陛下の目が鋭くなる。


「チャーリー王の妃ナリスが産んだ双子男児の片方が、ブカスト王国の王となりました。我が国と隣国ブカスト王国には血縁関係があります」


「何だと!!、、、何故」


「ブカスト王国の国王は、出産で生死を彷徨ったナリス王女に、赤子は死産であったと嘘を告げました。そして、ナリス王女がソベルナ王国へ嫁いだ後、国王は自身の子供として、双子のうちの1人を公表したそうです。これはブカスト王国の秘匿中の秘匿ですが、マーカス殿下が教えてくれました」


「そうか、マーカス殿が、、、」


「父上、トッシュ殿は瞳の色だけではなく、魔力もあります。この国で魔法と語学を学びたいと希望しているので連れて来ました。ここに書状と身の回りの費用も預かって来ました」


マクスは、マーカス殿下から受け取った書状と巾着袋を陛下へ渡した。


「マクス、トッシュ殿の遊学は構わぬ。だが、身辺警護をしっかりしないといけないだろう」


「陛下、それは何か特別な警護が必要という事ですか?」


私は思わず、立ち入った質問をしてしまった。


ずっと、マクスとマーカス殿下のやり取りを聞いていた時から気になっていた王位継承権の問題を知りたかったからだ。


「キャロル嬢、そなたも知ってしまったのか?」


「はい、概要程度は」


「そうか、トッシュ殿、我が国に居る間、少し多くの警備官を付けさせてくれるかい?君の身に何かあっては行けないからね」


「はい、ありがとうございます!」


大人たちが物騒な話をしていても、トッシュ少年は清々しい。


「父上、キャロルに話を?」


「ああ、トッシュ殿にも伝えておいた方が良いだろう」


「そうですね」


「王位継承権は王弟バンスの子、ジョージも持っている。ジョージの母、カシア妃はカシャロ公爵家の出身。カシャロ家は強い権力を持ち、その領地では国で禁じられている私刑を平然と行う問題児だ。そして、マクスを幼少期から堂々と殺そうとして来た一族でもある。トッシュ殿、そして、キャロル嬢は身辺にくれぐれも気を付けなさい」


陛下の話を聞いて、血の気が引いた。


「マクスを殺そうとしたですって?」


「ああ、毒は数え切れないくらい盛られた。幸い、おれは魔法に長けていたから身を守れた。トッシュ殿もまずは身を守る魔法を身に付けた方が良いだろう」


「分かりました。頑張ります!」


一方、物騒な話を聞いたとは思えない程、トッシュ少年はやる気満々で、私は少し引いた。


王族とは豪胆な種族である。


死と隣り合わせで、民のことを考えて生きて行く。


いつか、私も無意識にそうなるのだろうか?


「キャロル、物騒な話ではあるけれど、おれは今まで普通に乗り切って来た。大丈夫だ」


「大丈夫って言われても、、、心配するわよ」


私は口を尖らせた。


マクスは私をジーッと見つめてから、軽く口付けをした。


えっ!?何やってるのよマクス!!


声にならない声が出る。


「お前は!場所を考えなさい!!」


チラっと、トッシュ少年を見ると手で目を覆っていた。


「いや、可愛いに場所は関係ないでしょう」


マクスは全く悪びれて無い。


私は恥ずかしくて顔が熱い。


多分、真っ赤になっていると思う。


「大丈夫です。僕は見ていません」


トッシュ少年が、とても気が利いた発言をする


「トッシュ殿、すまないね。マクスはキャロル嬢の事ばかり考えて周りが見えていないのだよ。残念な奴だね」


陛下が、トッシュ少年にコソコソ悪い事を吹き込む。


トッシュ少年はフフフッと笑った。


本当に可愛い子だ。


「僕の兄様も、お妃様たちといつも一緒に遊んでいるので、残念な人かも知れません」


フフフッと相変わらず笑いながら、トッシュ少年は言う。


マーカス殿下、色々とバレているみたいですよ、、、。


陛下とマクスは微妙な表情を見せる。


「さて、話が逸れたな。トッシュ殿の護衛は、まずジャスティンを付けよう。あとの人員は早急に決める。それで良いかマクス」


「はい、お願いします。ジャンなら安心して任せられます」


私もマクスの横で頷いて同意を示した。


「トッシュ殿、では護衛が来るまで、お昼ご飯を食べて待ちましょう」


「はい!」


「私はマーカス殿に返事を書いておこう。マクス、近々、ブカスト王国へ行く予定はあるか?」


「はい、あります。その時に持っていきます」


「では、用意して置く」


陛下への報告も終わったので、私達は執務室を後にした。



 マクスは迷いなく王宮の中を歩いていく。


私とトッシュ少年は、その後に続く。


「キャロル、笑えるくらい良いタイミングだよ。見てご覧」


マクスは前を向いたまま、私へ話しかける。


見てご覧と言われて、前を向くと遠くから派手な身なりのご令嬢が歩いて来るのが見えた。


あ、アレはまさか!?


「マクス、あれはセノーラ様?」


「ああ、そうだ。彼女の影も当然いるだろう。トッシュ殿も覚えておいて欲しい。彼女は危険だ」


「はい、覚えておきます」


私達は何事もないフリをして堂々と進む。


段々、セノーラ様との距離が近づいて来る。


怖っ!!


見るからに社交的な笑みを浮かべ、彼女も堂々歩いてくる。


「ごきげんよう、殿下」


ビックリ!あちらから話しかけて来るなんて!!


目上の人に話しかけるのはマナー違反だ。


で、マクスは、、、。


何とガン無視した。


彼女に視線も向けない。


私もマクスに合わせないといけないのよね?


背中に変な汗が流れる。


でも、怖くても視線は真っ直ぐ前を見て落とさないようにした。


「あら、貴方。ちょっと私を無視するのかしら?」


明らかに私を威嚇してくるセノーラ様。


私は気合を入れ直し、何と言われようと振り向かず、口も開かないことに決めた。


「何なのよ!男爵令嬢の分際で。挨拶しなさい泥棒猫!」


はぁ?泥棒猫。


一応、王太子妃なんですけどね、私。


マクスは、いつもなら瞬足で助けに入りそうだけど、今は全くの無視。


かなりセノーラ様が嫌いらしい。


「あら、そちらの坊やは何処の子?ご挨拶なさい」


あー、地雷を踏むんだ、この人。


トッシュ少年は、大丈夫かしら?


急に心配になった私は、斜め後ろにいたトッシュ少年を横目で見た。


その瞬間、驚くべき光景を目の当たりにする。


「不敬である。我はブカスト王国第八王子である。我に名を申せと言うほど、お前の身分は高いのか」


冷酷な表情と低く威圧感のある声で、トッシュ少年はセレーナ様を奈落の底に蹴り落とした。


目の前のセレーナ様は怯えた表情になり、腰が抜けたのか床にへたり込んだ。


マクスは少し立ち止まったものの、また歩き始めた。


私とトッシュ少年も再び、その後を追いかけた。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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