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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
42/127

42 聖人じゃない

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 あり得ない!その一言に尽きる。


私とマクス、カルロ殿下が着地したのは、マーカス殿下の寝室だった。


「キャー!?」


突然現れた私達を見て、薄い紗の向こうにいる女性が悲鳴を上げた。


「何時だと思っているのだ!!マーカス!」


カルロ殿下が怒鳴った。


「は!?カルロ?え、何で!?」


私はビックリした。


カルロ殿下より、遥かに軽いノリの返事が閨の中から聞こえたからである。


私の抱いていた、しっかり者の第二王子マーカス殿下のイメージは、ガタガタと音を立てて崩れ落ちた。


「マーカス、ソベルナ王国の王太子夫妻と例の件で来たのだ。直ぐに身なりを整えよ」


「ソベルナ王国っ!?分かった。すまんが、少々待ってくれ」


「ベル、部屋へ戻れ」


目にも止まらぬ速さで、ベルさんは部屋から追い出された。


そして、布を纏ったマーカス殿下も部屋から慌てて出て行った。


「すまぬ。まさか、こんな時間に、、、」


私達に謝りながら、カルロ殿下が頭を抱える。


「いえ、突然来たので」


マクスはフォローしようとする。


「いや、私が悪い。あいつのことを甘く見ておった」


「ふふふっ」


マズイ!つい笑ってしまった!!


「キャロライン殿にも、見たくないものを見せてしまい、すまぬ」


「大丈夫です。布一枚隔てていましたから」


私の回答が変だったのか、目の前の二人も笑い出す。


私も安心して笑いに加わった。



ーーー数分後。


マーカス殿下は煌びやかな衣装を纏い戻って来た。


「大変失礼した。此方へ」


彼はそう言うと、寝室の奥の部屋へ私達を案内した。


広い部屋にはカーペットが敷いてあり、ふかふかのクッションが沢山転がっている。


「外の者にこのメンバーで居るのがバレると不味いだろう。カルロ、ここでも良いか?」


マーカス殿下はカルロ殿下に尋ねる。


「お前、王太子ご夫妻を床に座らせる気なのか?」


カルロ殿下は、やや切れで言い返した。


「いえ、突然来たので私達は気にしませんから、此方で大丈夫です」


マクスが精一杯の笑顔で、二人を宥めようとする。


「ほら、王太子ご夫妻もそれで良いと言って下さっているし」


マーカス殿下は、マクスの発言で安心したのか、シャーシャーとした顔で、カルロ殿下へ言う。


「本当にマクス殿、キャロライン殿申し訳ない」


カルロ殿下は、私達に謝りながら、クッションを1箇所に集めて、こう言った。


「お二人はここへ座られよ」


真面目な顔でクッションの山を指差すカルロ殿下に笑いが込み上げたけど、必死で飲み込む。


「お気遣いありがとう。カルロ殿」


「いや、礼には及ばぬ」


 

 漸く四人で座って話をする体制になった。


ピピが見当たらないけれど、優秀な相棒は何処かで記録でもしているのだろうか?


「では、マーカス挨拶を」


「いやはやお恥ずかしい姿を見せてしまい申し訳ない。私はブカスト王国第二王子マーカスです。お会い出来て嬉しいです」


マーカス殿下が私たちの方を真っ直ぐ見て、挨拶の辞を述べた。


「初めまして、ソベルナ王国の王太子マクシミリアンです」


「私は妻のキャロラインです」


私達も挨拶を返す。


「マクス殿、勘の良い貴殿は気付いているだろうが、私とマーカスは双子である。国内外に秘匿としてあるので、口外は避けていただきたい」


カルロ殿下が、いきなり国家機密だからな!と言う発言をして来る。


「いや、カルロ殿が公言しなければ、気付かないフリをしようと思っていたんですけど」


マクスが苦笑する。


「カルロは真っ直ぐなので、融通という言葉が辞書にないんです」


マーカス殿下が横から答えた。


「お前はルーズ過ぎるのだ。さっきのは何だ!?今、何時だと思っている」


「いや、世継ぎを残すのも仕事だからな。お前のように聖人じゃないんだよ、オレは!」


「まあまあ、落ち着いて。おれたちに気を許していただけるのは嬉しいんですけど、、、」


マクスが二人の小競り合いを止めようとする。


何なの?この状況は。


「一つだけ聞いておきたい。お前、サキに何かしたか?」


「ああ、お前の伝令か?あれはお前の女なのか?」


目の前の双子は、お互いにお前と罵り出して、雲行きが怪しい。


「女ではない。部下だ。気もないのに手を出すなと注意しているのだ」


「流石にお前の部下に手は出さない。そんなに怒るなよ」


「その言葉、忘れるなよ」


カルロ殿下が言い捨てて、マーカス殿下が頷いた。


やっと、ひと段落しそう。


「取り乱し、失礼。それで、今日は王太子ご夫妻が我が国の歴史について質問があるそうだ」


「我が国の歴史なら、どうぞ何でも聞いて下さい。機密以外ならお答えしますよ」


さっきの姿を忘れそうな麗しい笑みで、マーカス殿下がこちらを見る。


「では、今から千五百年ほど前にソベルナ王国へ嫁いだナリス王女のことをお聞きしたいのですが、彼女は我が国に嫁ぐ前に王太子チャーリーとの間に子供が出来、その子を流産したと、、、」


「ちょっと、待って待って!マクス殿!!」


マーカス殿下が慌て出す。


最初から、マクス殿って言うあたり、やはり軽めの方なのかも知れない。


「はい」


「ナリス王女の件は機密です」


「いや、そこを何とか、、、」


マクスが食い下がる。


「マーカス、千五百年前の事を今更機密も何も無いだろう」


カルロ殿下から、援護射撃が来る。


「いや、あれは言っていいのか?」


「負の歴史を繰り返したく無いのならば、言った方が良い」


あれ?この発言からすると、カルロ殿下は内容を知っているのかしら。


「負の歴史。それが指すのは、ブカスト王国のことなのか、はたまた我が国のことなのかを是非お聞きしたい」


マクスが、冷たい仮面を被った。


声も冷ややかで怖い。


私が見たことのない顔だ。


「マーカス、既に我々は一連托生。見誤れば、ブカスト王国が消えるかも知れぬ。言え」


うっわー!カルロ殿下、強!


マーカス殿下は口をマゴマゴしながら、躊躇し、それでも最後には口を開いた。


「ナリス王女は、、、双子の男児を産んだ」


「えっ、えええっ!?産んだ?」


マーカス殿下の言葉に驚愕して、私は声を上げてしまった。


「そう、産んだのだ。だが、出産の経過が悪く、彼女は子を産み落とすと同時に子宮を失い、生死を彷徨った。更に残念なことに、ナリス王女は王の一人娘であり、彼女の子は隣国のチャーリー王太子の子でもあった。それ故、隣国に赤子を取られるかもしれぬと恐れた王は、ナリス王女が回復した際、赤子は死産であったと告げ、その存在を隠蔽した。そして、ナリス王女が隣国へ嫁いだ後、男児を自身の子として発表した。私が知っている王国の歴史でも格別に悍ましい事件だ」


「最悪ですね」


ナリス王女と同じ女性として許せない。


「ああ、最悪だ。そして、言う事勿れ、私達はその血を継いでいる」


マクスは、何も言わない。


何か考えているのかも知れない。


代わりに私が質問しよう。


「男児を発表したということは双子だとは伝えられなかったということですか?」


「そう、1人は最後まで隠し通した。王子に何かあった時のスペアとして」


「今も、お二人が双子と公表しないのはこの事件が関係していたりするのでしょうか?」


「その通り。幸い、私は存在を消されたりはしておらぬが」


カルロ殿下が、ニヤリと企んだ顔を見せる。


「ちょっと良いですか?」


マクスが口を開いた。


「大魔法使いという存在はご存知ですか?」


マクスの発言に双子の顔が強張った。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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