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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
41/127

41 適応力強め

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 マクスの様子がおかしい。


昨夜、甘い感じでベッドに入ると、マクスは私の額にキスを落とした。


「キャロル、ここのところ無理をさせてしまったから、今夜はしっかり休もう」


マクスはそのまま、私を優しく抱きしめて眠った。


朝もすんなり目覚めて、今一緒に朝食を食べている。


この至って普通の生活がおかしいと感じる私の方が間違っているのかもしれないけど。


朝食のメニューはコーンスープとフォカッチャにグリルされたエビやイカが乗ったサラダ。


ビネガーの効いたドレッシングがシーフードとよく合う。


王太子宮のご飯は美味しい。


「マクス、何処か具合が悪かったりするの?」


勇気を出して聞いてみた。


「いや、しっかり寝たし、調子はいいよ」


「そう、それならいいけど」


「キャロルはどう?疲れが溜まってない?」


「うん、大丈夫」


んー、考え過ぎだったかな。


「今日はカルロ殿と会おう。後でピピにカルロ殿への伝言を頼みたい」


「分かった。食事が終わったら、ピピを呼ぶわね」




―――そして食後、ピピを私室へ召喚した。


「おはようございます。キャロル、殿下」


今日もかわいい相棒はシャキッと私たちの前に現れた。


「ピピ、今日も活躍してもらいたいのだけど、、、」


「はい、勿論です」


「では、まずブカスト王国のカルロ殿に会いに行こうと思うのだが、今日のスケジュールを聞いて来てくれないか?」


「かしこまりました!行って参ります」


ピピは返事をするとクルリと回って消えた。


しばらく時間が掛かるかなと思って、ソファーに座ったところで、目の前に白い毛玉と、、、。


「え!?」


「おい、連れて来たのか!?」


目の前にはピピと褐色の肌の美男子こと隣国ブカスト王国第三王子のカルロ殿下が、前回のように片膝をついた状態で現れた。


「ただいま戻りました。カルロ殿下をお連れしました」


「ピピ、ここは私室だぞ!!」


「殿下、すみません。ミーは失敗しましたか?」


ピピの首を傾げている姿が可愛い。


「いや、おれがちゃんと指示しなかったのが悪かった。ピピ、ありがとう」


二人のやり取りを黙って見ていたカルロ殿下が口を開いた。


「ごきげんよう。マクシミリアン王太子殿、急に訪ねてすまぬ。私へ話があると聞いたのだが?」


「おはようございます。カルロ殿、時間は大丈夫ですか?」


「ああ、今日の予定は後日にしてきたから大丈夫だ」


「では、そちらへ掛けて話しましょう」


マクスはカルロ殿下を、ソファーへ案内した。


私はこの状況で侍女は呼べないので、慌てて飲み物の準備に取り掛かる。


幸いこの部屋にはお茶を淹れるセットが用意されているので、まずは、お湯を沸かす。


「お茶を淹れますので、お先にお話しを始めていてください」


「分かった。キャロルありがとう。では、まずカルロ殿、わざわざお越しいただきありがとう」


「いや、私が出向く方が早いと判断した。側近数名には事情を説明しているから、少々不在にしても大丈夫だ」


「了解しました。それで今回ピピを送ったのは、計画の進捗状況の確認と情報の擦り合わせです。お互い国家機密に関することは伏せても良いというルールでいきましょう」


「分かった。では、まず最短ルートの街道の件だが、第二王子の賛同と協力は取り付けた。また、砂漠の薔薇の解体についても同意を得た」


「そうですか、抵抗されたりしませんでしたか?」


「いや、第二王子は合理的な考えだ。環境を整備して友好関係を結ぶと言う方法は、彼も歓迎していると思う」


「おれが思っていたより、兄弟の仲がいいのですね」


マクスが苦笑しながら、カルロ殿下に言った。


「他国からどのように見えているのか、マクシミリアン王太子殿の発言は大変参考になる。それで、兄弟の仲の話だが、私と第二王子は母親が一緒なのだ。他の兄弟よりは仲が良いかも知れぬ」


「同母兄弟ということですね。それと、カルロ殿、オレの事はマクスでいいですよ。名前が長くて言いにくいでしょう」


「分かった。それでは遠慮なくマクス殿と呼ばせてもらおう。で、マクス殿は何か新たな情報を得たのか?」


「ええ、それなりに。ああ、お茶が来ましたね。キャロル、ありがとう」


マクスが、話を止めてくれたタイミングで、私はお茶を配り、席に着いた。


ピピは静かにみんなの様子を離れたところで見ている。


もしかすると記録しているのかもしれない。


「失礼、話を続けます。おれ達は前回教えてもらった転移ポイントを捜索し、我が国のメルク領の転移ポイントで怪しいチームを捕まえました。その六人のチームは、ソルベア王国、ノード王国、ブカスト王国出身の者で構成されており、彼らはノード王国の王族が書いた書簡をブカスト王国の第一王子に届ける任務を追っていました。残念ながら、緻密な工作によって書簡が白紙になり、何が書かれていたのかは確認出来ませんでした。ですが、一つ分かったこともあります。それは首謀者がランディ・ボルド―だと言う事です。チームには彼の息子も含まれていました」


「ふむ、第一王子が関わっていることは間違いなさそうだな。しかし、ノード王国が絡んで来るとは話が随分大きくなって来ているのではないか?」


「そこが少し違う様子なのです。六人の中の一人はノード王国の国王が計画を破綻させるために送り込んだスパイでした。国としては戦争になるようなことは望まないと」


「では、ノード王国は王族の誰かが暴走しているだけと見て良いのだな」


「ええ、恐らく」


カルロ殿下は足を組み、その上に肘をついて顎を乗せ、考え事をしている。


傍目にみると彫刻のようでカッコいい。


「キャロル、何かここまでで言いたいことはない?」


突然マクスに話しかけられてビックリした。


私がカルロ殿下を眺めていたことに気付いた?


「今のところは特にないです」


「では次に行きます。カルロ殿はソベルナ王国から魔法使いがブカスト王国へ移民した話はご存じですか」


「ああ、その件は私もマクス殿に提案したいと思っていた」


「先に提案内容を聞いても?」


「魔法使いを禁止するのは、ソベルナ王国にとって大きな損失なのではないか?と思っている。また、ソベルナ王国の魔法使いが、ブカスト王国へ移民として、長きに渡り流れ込んでいるのは事実だ。しかし、彼らはマナのほとんどないブカスト王国に根を下ろしても、大して魔法が使える訳ではないから、別の生き方を探さなければならない。移民の子孫などは、自分自身が魔力を秘めていることすら知らないまま生活している者も多いと思う」


「事実だったのですね」


「そうだ。これまで国内の揉め事ばかりで、外交をおろそかにした結果、隣同士の国だというのに情報の共有も出来ていないお粗末さを今後は改めて行きたいものだ」


「ええ、おれもそう思います」


私は口を挟みたくても、どこまでが国の機密なのかを判断することが出来なくて困っていた。


とりあえず、こういう時はマクスに任せるしかないよね。


カップに手を伸ばし、紅茶を一口飲んだ。


ああいい香り、濃さもバッチリだわ。


私がお茶を口にした途端、二人もカップに手を伸ばした。


あ、もしかして私、毒見した感じ?


安全確認が出来たから、手を付けるみたいな感じがする。


二人共、生粋の王族だから、こういう身を守る術が自然に身についていて、無意識の行動なのかもしれないけど。


「カルロ殿、ブカストの王国の歴史の事で質問があるのですが」


「私は歴史については師に習ったことくらいしか知らぬ。第二王子の方が、後継者教育を受けておる故、詳しいだろう。呼ぶか?」


いやいやいや、カルロ殿下と同じレベルの適応力がある方ならいいでしょうけど、中々居ないですよ。


普通、他国の王子を召喚するなんて、国際問題ですからね。


「カルロ殿下、呼んで大丈夫な方なら呼びますけど、私たちが出向いた方が良くないですか?」


「出向くならば、私が同行しよう」


カルロ殿下は思いの外、軽いノリ。


マクスどうする?と目で訴えてみる。


「では、ブカスト王国の第二王子に謁見の申込を、、、」


「いや、このまま向かえば良いではないか。謁見など、真っ当に申し込めば何か月もかかって厄介だぞ」


あ、王子がそんなことを言うのね。


「カルロ殿、いくら仲が良いご兄弟でもそれは、、、」


「あいつもマクス殿に興味を持っておる。大丈夫だ。そこの毛玉、頼む」


あ、第二王子殿下のことを、あいつって、、、。


本当に仲良しなのかも。


カルロ殿下はピピへ転移を頼んだ。


「ミーの名前はピピです!毛玉ではありません。そして、複数人を転移させるのは無理です。殿下か、キャロルに頼んで下さい」


「それはそれはピピ殿、失礼した」


カルロ殿下が笑顔を見せる。


やっぱり、かなりのイケメンだわ。


笑顔が眩しい!!


「キャロル、、、」


マクスが横から、不穏な声で私を呼ぶ。


「何?マクス。転移する?ええっと、人数が多いから、マクスお願い!!」


私は精一杯、誤魔化した。


「了解」


マクスは私の頬を抓りながら了承した。


むむむ、見惚れていたとバレていたか。


「マクス殿、赤龍の宮殿まで頼む」


「分かりました。ピピ、先に飛んでくれ。後から追う」


「はい、では先に行きます!」


ピピはその場で跳ね上がって、消えた。


ピピが消えたのを見計り、カルロ殿下はソファーから立ち上がる。


「では、おれたちも向かいましょう」


マクスはピアスを外さず、右手の手のひらに白い渦を発生させたかと思えば、その渦は突然強烈な光を放った。


刹那、私達は光に包まれ、消えた。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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