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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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38 宜しくない

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


「んー?」


サンディーは、いきなり目を逸らした。


そんなにワザとらしくされると逆に気になる。


「サンディー、魔法使える?」


おれは質問のハードルを下げた。


「マーちゃん、魔法は宜しくないんやわ」


「具体的に何が宜しくなかったの?」


サンディーは、またおれから視線を逸らす。


何か、やましい事でもあるのか?


「サンディーは何で包帯を巻いているの?」


敢えて話題を変えた。


「むむむ!マーちゃんは嫌な質問をするわ〜」


「サンディーさん、ミーも知りたいです!!」


おっと!足元から援護射撃がキタ。


「えー、ピピまで!?アタシの事なんて、面白くないって」


「包帯の下はケガ?」


「うーん、ケガと言えば怪我かしらん」


サンディーは思わせブリな言い方をする。


「サンディーは、おれの先祖だよね?」


「それは、、、そうなのかしら?」


質問に質問で返して来た。


「本当はケガなんかしてないくせに、包帯なんか巻きやがって、、、」


おれは小声で言い捨てる。


「キー!!ヒドイわ!!聞こえたわよ。マーちゃん!!」


一見、ミイラのサンディーは何処からか、ハンカチを出し、悔しげに噛む。


おれはサンディーを挑発しながら、彼女を観察していた。


ハンカチにはワンポイントで金の刺繍が入っている。


獅子?その周りを囲むのは蔦か。


「サンディーは元王女?」


「ん?」


「いや、王女さま?」


「アタシがかい!?」


怪訝な声を出すサンディー。


「おれは王太子だけどね」


ドヤ顔をする、おれ。


「ミーはうさぎの妖精です」


同じくドヤ顔のピピ。


「アタシゃ、ミイラってことじゃダメなのかい」


サンディーは困った声を出す。


包帯の下の表情が分からないから、探るのはなかなか難しい。


「だって、色々知りたいからさぁ〜。サンディー、何にも教えてくれねーの?」


オレはワザと太々しい態度をみせた。


「まーちゃん、最高だね」


「よく言われる」


サンディーのノリは王家の奴っぽいのだけどなぁ。


ハズレか?


「じゃあ、サンディー。どこから来たの?」


「忘れたよーぉー」


突然タップダンスを踊るサンディー。


この大陸でタップダンスをするのは、ソベルナ王国だけだ。


収穫を祝うタリアンテ祭りでは、肩を組んでタップダンスをする。


「それ、タリアンテ祭りの踊りだろう?」


「・・・」


サンディーは、急に動きを止めて固まった。


「どうして、魔法を嫌いになったんだよ」


おれは落ち着いた声で、サンディーに問い掛けた。


「何でも叶うのは宜しくない」


「何でも叶うくらい魔力があったってこと?」


「そう。何でも出来ても、何でもしてはダメ!!」


うーん、さっきまでのやり取りと反して、突然深い話だな。


「おれは、魔力をピアスで抑えている。だから思い付きで魔法は使わない」


「それは良い事。思い付きでアタシは使い過ぎたのよ」


「そうなんだ」


「まーちゃん、そのお嬢ちゃんは魔力が強めよぉ。アタシみたいにならない様に気をつけてねー」


キャロルのことか?


「ああ、分かった。頼り過ぎない様にするよ」


「マーちゃん、良い子だわ」


「ミーは?」


ピピはサンディーの足元に擦り寄った。


「あー、ピピは勿論良い子だよ。チョコレート食べるかい?」


サンディーは、ピピにチョコレートをふた粒渡した。


「ホレ、これはマーちゃん達の分ね」


そう言うと、おれにも四粒くれた。


「アタシゃ、あんまり世俗に干渉したくないんだよ。コレで勘弁しておくれ!じゃあ、また会う日まで〜」


サンディーは手を振りながら、姿を消した。


獅子と蔦の紋章、タリアンテ祭り、使い過ぎた魔法。


サンディーが教えてくれたキーワードをおれは胸に仕舞う。


そろそろ、気を失ったキャロルを休ませ方が良いだろう。


「ピピ、おれたちは王宮に戻る」


「分かりました。殿下、キャロルを宜しくお願いします」


「ああ、分かった。ありがとうピピ」


魔塔を出ると外は真っ暗になっていた。


一体、どれくらいの時間この中にいたのだろうか。


そう感じるのは、おれ達だけかも知れない。


何故なら、魔塔の時間ときは何処かで止まっている。


中にいる彼らは、この時を、今を生きてはいない。


おれたちが来た事で、たまたま動き出しただけだ。


そんな感覚がした。




 キャロルをベットへゆっくり下ろした。


怖いのに無理して頑張ったよな。


目が覚めるまで、ゆっくり休ませよう。


額へ、そっとキスをする。


そのまま、音を立てずに部屋を出て、廊下の使用人に伝言を頼み、おれは父上の執務室へと向かった。



 オレが父上の執務室に到着すると、室内から大きな声が聞こえた。


扉の前にいる警備官が「ジェシカ様がお見えになられています」と教えてくれた。


おれは一緒で構わないと伝え、ドアをノックする。



 部屋に入ると、義理の母と父上がこちらへ歩み寄って来た。


「マクス、キャロル嬢はどうした?」


「喧嘩?」


二人同時に聞いて来る。


「いえ、キャロルは疲れて眠っています。喧嘩はしてないです」


おれは冷静に答えた。


二人は安堵した表情を見せる。


おれって、案外信用がないのか?


「いや、すまぬ。仲が良いのなら問題ない」


父上が言い訳がましく、謝る。


「はい。おれは報告があってここに来ました」


「そうか。先にジェシカの報告を聞いていた。お前も一緒に聞いた方が良いだろう」


「はい」


「では、陛下と殿下へ改めてご報告いたします。ハーデン子爵及び家族の捕縛は完了いたしました。まだ尋問はしておりません」


「分かった。では次はマクスの報告だな」


父上がおれに報告を促した。


「すみません、少し長くなるので座りましょう」


おれは二人をソファーに座らせ、話し始めた。


「今日、キャロルと魔塔へ行って来ました」


「魔塔!?」


義理の母と父上の大きな声が揃った。






 


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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