33 教訓
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
ふかふかのベッドに倒れ込んだ。
まさかの日帰りメルク旅。
結局、祈りの滝の検証は中途半端なままで終わっている。
それより、ずっと気になっていることがある。
「マクス、寝ちゃった?」
「んー、いや」
「あのさ、陛下って執務室に居過ぎじゃない?変な時間に行っても居るよね」
「あー、そうかな?、、、そう言えばそうかも、ん?何が?」
残念!マクスはもう寝ているようだ。
「おやすみ」
「・・・」
仕方ない、明日もう一回聞こう、、、。
スカッと目が覚めた。
今、何時?
時計を見ると、八時を少し過ぎている。
「マクス~。朝になったよ」
「んんん」
「八時過ぎたよ」
マクスは目を瞑ったまま伸びをし出した。
無防備な様子が可愛い。
私はマクスの頬にチュッとキスをした。
まだ顔と顔の距離が近い状態で、マクスの目がカッ!っと、開く。
「うわっ!?」
タイミングが怖っ。
マクスは目を見開いたまま、ジーっと何も言わずに見つめて来るから、私もジーっと見つめ返す。
ん?もしかして覚醒していない系?
でも、その割に視線は合っている気がする。
不意に両手で顔をガシッと挟まれた。
何が起きたのか分からないまま、ガブっと、、、。
教訓、寝起きのマクスにいたずらは危険。
今日も今日とて、私達は、「まぁ!?連日なの?若いわね」と噂になりそうな時間に起きてしまった。
王太子宮もとい王宮に馴染む前から、悪目立ちするような噂は避けたいのに。
ボヤいても後の祭りなので、粛々と本日のスケジュールを確認しよう。
「マクス、私の目が間違ってないのなら、今11時よ。今日は何をする予定なの?」
「まずはブランチを取ってから、昨日の祈りの滝の転移先を確認する。その時にピピを呼ぶだろう?」
「うん、ブカスト王国の地理はピピしか分からないから、呼びます」
「ああ、その時にピピの了承が貰えたら、魔塔へ行こうと思う。すでにランディ・ボルドーは逃げているかもしれないけどね」
「分かった。正直なところ、ランディ・ボルドーはいつでも召喚出来ると思う」
「おれもそう思う。今は証拠固めと味方を増やすことに専念しよう。で、時間に余裕があればカルロ殿と一度進捗の擦り合わせをしたい」
「マクス、そんなに予定があるのに、こんな時間なんて!!」
私はマクスに苛立ちを見せた。
「キャロルが可愛いことをするのが悪い」
「今日は仕事がしたくなくなる魔法には絶対かからないからね!!」
私が啖呵を切ると嬉しそうな顔をする。
「そう、それが可愛いんだよ」
マクスは私の額に口づけを落とす。
ダメだ、勝てる気がしない。
時間が押していたので、ブランチは急いで食べられるハムとレタスのラップサンドとアイスティーにしてもらい、急いで食べる。
何とか正午過ぎには、祈りの滝へ到着した。
私は早速、結婚指輪に魔力を流す。
白い毛玉が宙から~、えっ、ええっ?現れなかった!!
「あれっ?ピピが来ない!」
私は焦った。
すると、マクスが私の左肩を叩く。
マクスの方を見ると何かを指差している。
視線をそちらへ持っていくと、、、。
「はぁ?何でピピとマリアがお弁当を食べているの?」
少し離れたところで崖に腰を下ろし、並んでお弁当を食べている姿が見える。
「どうやって呼んだのだろう?」
マクスがボソっと呟いた。
「マリア―!」
私が呼ぶと二人が振り返った。
「あ、キャロル!!」
マリアは返事をするなり、私たちに手招きをした。
いや、間違っているわよ、マリア!
本来なら、あなたがこちらに来るべきなのよ。
チラッと横のマクスに目配せをする。
「問題ない。行こう」
マクスは楽しそうな表情だ。
案外、マリアを気に入っているのかしら。
「キャロル、殿下。お疲れ様です」
マリアとピピは声を合わせて挨拶を口にする。
お弁当は丁度食べ終わったようで、キリは良かったようだ。
「ミーはマリアさんに巾着を返しにきました」
あー、なるほどそう言う事なのね。
「ピピもお菓子に詳しいのよ。おしゃべりが楽しいわ」
マリアのお菓子交流術がスゴイ。
「マリア嬢、昨夜から邸には帰っていないのか?」
マクスが尋ねる。
「はい、殿下。見張りが居なかったので代わりに。でも、誰も怪しい人は来ませんでした」
ハキハキと報告をするマリア。
「それは済まなかった。昨夜は影を全員連れて帰ったからな」
「任務ですから、気にしていません。今日もお二人共、どうぞお気をつけて~」
とても軽いノリである。
「マリア悪いのだけど、ピピは連れて行くわ」
「あら、そうなのね。ピピまた会いましょう。そうだ、コレ少しだけど」
マリアはそう言うと腰に下げていた筒を手に取り、それをピピに渡した。
「マリアさん、これは何ですか?」
「これはね、羊羹と言って、豆を砂糖で煮詰めたものが入っているの。栄養たっぷりで美味しいのよ」
「ありがとうございます。また、入れ物を返しに来ます」
「ええ、楽しみにしているわ」
何なの?この息が合っている感じ。
「キャロル、やきもちを焼くな。オレが居るだろう」
マクスが耳元で余計なことを囁く。
「ありがとうマクス。大好きよ」
私は甘―く、囁き返した。
マクスの耳が、あっという間に真っ赤になった。
細やかな仕返しは大成功。
「さて、そろそろ行くわよ」
私はマリアに手を振り、マクスの腕を掴んだ。
ピピは慌てて、私の肩に乗った。
マリアはニコニコしながら手を振っている。
私達は静かに姿を消した。
昨日、一瞬だけ降り立った場所はギラギラと強い日差しが照り付けていた。
砂漠ではなく草原と言った感じの開けた場所である。
高い木とかが無いので、この時間に突然現れると目立ちそうだ。
「ピピ、ここは何処?」
「ここはブカスト王国のパン草原と言われる場所です。ブカスト王国の西中部あたりです。東に少し行くと青龍の宮殿があります。反対方向に行くとバッシュ帝国国境まで草原は続いています」
ピピは詳しく説明してくれた。
今回は王都前とかではなく、分かりづらい場所だからかな?
「ピピ、青龍の宮殿までの距離はどれくらいだ?」
「二キロくらいです」
「分かった。では、一旦王宮に戻ろう」
マクスの指示で、私たちはまた王宮の中庭に戻った。
時刻は13時。
案外、祈りの滝案件は素早く片付いた。
「マクス、次は魔塔?」
「そうだな。ピピ、魔塔は今から行ってもいいか?」
「はい、ミーもお供します」
私はマクスの腕を掴んだ。
ピピは先ほどのように肩にピョンと乗った。
いざ!魔塔へ。
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