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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
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31 綿あめみたいな味

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 マクスの手を掴んで、転移先へと念じた。


いつもの浮遊感を感じる。


さて、今度は何処に行くのだろう?


と、その時、何かが光った。


「えっ!?」


驚きの声を上げた時には、既に見知らぬ場所に立っていた。


「マクス!襲撃かも!!」


「ああ、何か光った。戻るか?」


「うん、一度戻ろう」


私は再び、祈りの滝を思い浮かべた。


勿論、マクスと手は繋いだままで。



 祈りの滝に戻ると真っ黒装束の影と、青い覆面の集団が争っていた。


既に二人ほど地面に転がっている。


ああ、戻って良かった!と思ったその瞬間、何かが視界の淵を飛び去った。


「ん?マリア!?」


咄嗟に口から出た言葉に自分で驚いた。


人が崖からスローモーションのように落ちてゆく。


「ダメ!止まれ」


戻ってこい!と念じれば勢いよく、マリアらしき丸い塊が崖の上に飛び上がって来る。


私の横を通り過ぎる時、マリアだと確認出来た。


そのまま、ふんわりと安全な場所へ下ろす。


ふぅ、危機一髪だった。


そして、横を向くとマクスが前を見てみろと顎で指す。


青い覆面をした集団は全員拘束済で倒れていた。


黒装束の影が木に次々と飛び移りながら撤収していく。


「キャロル、戻って正解だったな」


「ええ、マリアが転落しているところに駆けつけるなんて、物語みたいよ」


私の声は少し震えていた。


目の前で友達が真っ逆さまなんて、心臓に悪すぎる。


「ああ、本当に最高のタイミングだった」


二人でボソボソ話していると視線を感じる。


「戻って来るの、早!」


マリアが驚きの声を上げた。


彼女は「えっ、この一瞬で!?」と呟きながら、倒れている青装束の集団のところまで近づいて行く。


「これ、キャロルたちの仕業?」


こっちに向かって聞くので、私達は頷いた。


ふわふわ浮いたままの私達は取り敢えず崖に着地。


私も流石にこの環境へ慣れたのか、今回は脚も震えなかった。


「こいつらはこの転移ポイントを使うつもりだったのか?それとも、おれたちを狙っていたのかで話が変わって来るよなぁ」


「それなら、今聞いてみよう」


私は、青装束の一人に手を伸ばし、肩に手を置く。


唸っているけど、グルグルにされているので抵抗は出来ない。


「私及び王太子へ正直に話せ」


私は魔力を流し込んだ。


「ええっと、猿轡を取ってくれない?」


マクスにお願いする。


流石に怖くて、私には無理。


マクスは手際よく、青い覆面と猿轡を外した。


どうやら少年のようだ。


「あなたは誰?」


「レイ」


「レイ、どこに住んでいるの」


「ノード王国の王都」


口が勝手に動くことに驚いた表情を見せる。


「ノード王国ですって?」


後ろからマリアが乗り出してくる。


私は質問を続ける。


「ここには何をしに来たの」


「ブカスト王国の青龍の宮殿へ書状を届けるために来た」


「お前はノード王国の誰の命令で来た」


今度はマクスが質問をした。


「ノード王国、こ、く、、、グフォ」


少年は血を吐いた。


これではスージー女史の時と同じである。


「ストップ!!マクス、これって」


「ああ、口止めだろう。だけど、今回はあと5名いるから、隣のこいつに続きは聞こう」


マクスが隣に倒れている敵を指差した。


「あんた達、鬼畜過ぎない?」


マリアが呆れた声を出す。


そんなことはお構いなしに二人でサッサと次のターゲットの準備をする。


血を吐いたレイは取り敢えず眠らせた。


スージー女史と同じなら死にはしないだろう。


隣に倒れていた敵は覆面を外すとマクスと同じ歳くらいの青年だった。


「マクス、自白の前に制約の解術を試してみてもいい?」


「ああ、してみて」


私は青年の頭に手を置いて、制約魔法の解除を念じた。


「効果があるかは、聞いてみないと分からないけど、、、。では、私と王太子へ正直に話せ」


「お前の名前は何だ」


今回はマクスが質問を始めた。


「バード」


「何処から来た」


「ボルドー領」


あー、疑惑のボルドー領が出て来た。


私はチラリとマクスを見た。


マクスが手をのばし、私の結婚指輪をトントンと叩く。


ピピを呼べということね。


指輪に魔力を流すと暗闇に白い毛玉が現れた。


「は?毛玉!?」


マリアはいちいち良い反応をしてくれる。


「キャロル、お呼びですか?」


「ええ、また敵を捕まえたの」


「分かりました。記録します」


ピピは胸を叩いて言った。


あの黄色い宝石にと言う事だろう。


「ピピ??うさこ??」


マリアがボソボソ何か呟いている。


「ミーはピピです。うさこではありません。男の子です」


真面目で優秀な相棒は、マリアに向かって注意する。


「ピピ、あなた可愛いわね。お菓子は何が好き?」


マリア、ピピを手懐けるつもり?


まあ、いいや。


私は取り調べを続けよう。


「あなたに指令を出したのは誰?」


「ノード王国の王弟夫人ロレンス様」


「は!?叔母じゃないか!」


マクスが大声を出す。


ロレンス様と言えば、ソベルナ国王の妹でノード王国の王弟ロビン様の奥様よね。


えー、コレは、ややこしくなって来たわ。


「書状は誰宛なの」


驚いて放心状態になっているマクスの代わりに私が質問を引き継ぐ。


「ブカスト王国第一王子ナスタ殿下」


その名前を口にした途端、バードの表情がゆがむ。


制約魔法の領域に入ったのかもしれない。


「書状の内容は?」


「知らない」


「誰が持っている」


「マイルス」


と言う事は、この中にマイルスという人がいるのね。


「マクス、全員確認しよう」


「ああ、キャロル頼む」


マクスはすっかり立ち直っていた。


「ピピとマリアはしっかり見張っていて」


「分かったわ」


「ミーも了解です」


バードを眠らせて、横の大柄な敵に手を掛ける


彼はフランクという名前でノード王国の騎士だった。


彼に指令を命じたのは国王アレンで、この計画を潰すことを命じていたのだという。


「一体どういう組み合わせなんだ?お前たちは」


マクスがフランクに問う。


「国王は戦争になることを望んでいない」


「それでお前を潜入させたのか?」


「はい」


「分かった。お前は眠らせない。一部始終を見ろ」


敵が一枚岩でないという事態に益々複雑さを感じて、次の敵に取り掛かる。


次は覆面を取ると私より若い少女だった。


バラエティーに富み過ぎだろう、この集団。


彼女の名前はアイ。


出身国はブカスト王国で道案内的役割を担っていた。


指令の主はブカスト王国ナスタ殿下。


このチームは3国の共同チームということらしい。


残るは2人。


ここでピピが私に話しかけて来た。


「キャロル、残りの二人のどちらかが魔力持ちだった時の為に、マックを呼びましょうか」


「ピピ、いいタイミングで最高の提案をありがとう。是非お願い!!」


「はい、しばしお待ちを!」


ピピは跳ね上がりクルリと回って消えた。



 「キャロル、ピピが戻る迄の数分でも休め」


 マクスが心配そうに言う。


「そうよ、ずっと尋問しているじゃない。あ、良かったらコレ」


マリアは懐から巾着袋を取り出した。


袋の中から何かを取り出して、私の手のひらに乗せた。


「食べて!エネルギーチャージよ!!」


そう言うとマリアはマクスにも渡した。


何だろうと思うとナッツがキャラメルで固めてある。


マクスの毒見スプーンはこれには効かない。


念のため、私が先に食べよう。


「ありがとう。マリア」


お礼を告げて、口に放り込むとザクザクと良い音が出る。


クルミ、マカダミアナッツ、アーモンドが香ばしくて、それを包んでいるキャラメルもバターのいい香りがする。


こんな場所で食べるのが勿体ないくらい美味しかった。


「これ最高だわ」


私が感動を込めて呟くと、横のマクスもお菓子を口に入れた。


ザクザクッといい音が聞こえる。


「最高だ。こんな場所でなければもっと、、、」


彼も似たようなことを呟く。


「どういたしまして。いつでも持ち歩いているから、欲しくなったら言って」


マリアが胸を張る。


ブレない、本当に一切ブレないマリアである。



ポンっと宙に大小の毛玉が現れた。


「お待たせしました。マックを連れて来ました」


「遅くなってすんません。おいは寝るのが、早かとさ」


「起こすのが大変でした」


ピピが困った様子で言う。


「マック、また魔力を食べて欲しいの」


私がお願いするとマックは即答した。


「ああ、あん人ね。まかしとき」


マックは迷わず、残り二人の片方の前に行き、目に見えない何かを食べだした。


「ねぇ、アレは何をしているの?」


マリアが怪訝な声で聞いてくる。


「アレは魔力を吸い取っているのよ。魔法が使えなくなるくらいに」


「ふーん、魔力って美味しいのかしら?」


ブフッ、横でマクスが吹いた。


「マリア、あなたって、、、」


思わず、私も笑いが込み上げてくる。


「そこのあんた、魔力の味ば知りたかとね?綿あめみたいな味がするとよ」


マックが振り返って答えた。


聞こえていたのね。


「綿あめですって!?最高ね!」


マリアがマックに向かって、親指を立てる。


「あんた、分かっとるね!」


マックはニコッとして、また魔力を食べ始めた。


大物はマックが魔力を吸い終わるまで待つとして、、、。


「マクス、先にこの人に話を聞こうか」


私は目の前に転がっている敵を指差した。



 目の前に転がっていたのはミゼルという少年だった。


彼の出身地はブカスト王国、砂漠の薔薇という諜報機関に所属していると答えた。


「砂漠の薔薇って、ランディー・ボルド―のスパイ組織よね」


「そうだ。ミゼル、ランディー・ボルド―の居場所は分かるか?」


マクスが問う。


「頭は魔塔にいます」


「魔塔だと?ソベルナ王国の魔塔か」


「はい」


まさか魔塔に?


というか、魔塔って本当に何なの?


「マクス、魔塔ってそんな簡単に行けるところなの?」


「いや、おれはその件に関しては、あまり情報を持っていない」


私達が首を傾げていると、後ろから救世主の声がした。


「ミーは魔塔のことを知っています」


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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