18 ブカスト王国の砂漠化を防げ 16 伝言
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
――――マクスは閃いた。
「アレックス、ひとつ質問してもいいか?」
「はい」
「今、お前とサンディーは何歳だ?」
「私は二十八歳です。アレクサンドラは先月、十一歳になりました」
(十一歳か、それなら大丈夫そうだ!!――――というか、アレックス~、やっぱりお前はおれより年上だったのか~!)
――――マクスは現在、二十歳である。
「えーっと、サンディーの玩具で、木製の人形を倒して遊ぶゲームで使う黄水晶の玉のことなんだけど・・・、分かるか?」
「――――はい、分かります。サンディーの大好きな玩具なので・・・」
「その黄水晶をおれに貸してくれないか」
「――――父上、黄水晶を一体、何に使うのですか?」
「アレックス、バッシュ帝国が保管していた偽龍玉の正体はサンディーの玩具の玉(黄水晶)だったんだ。だから、おれは魔法を使って、黄水晶の中に伝言を入れ込む。――――それをバッシュ帝国の皇帝に龍玉(黄水晶)として託せば、四千年後には間違いなくサンディーの手に渡るだろう。あとは伝言を聞いた彼女が聖堂の奥のドアを開いてくれれば・・・、無事にミッション完了だ!」
「!?」
「そんなに驚かなくてもいいだろう。アレックスは王位を退いた後にバッシュ帝国の皇帝のところへ一人で行って、ブツ(黄水晶)をそれらしく渡してくれ。それから皇帝にはくれぐれもソベルナ王国でアイリスの紋章を持つ者が現れたら、速やかにブツを返却するようにとしっかりと言い含めておけよ」
「――――黄水晶を龍玉と偽った理由・・・、完全にこちら側の都合じゃないですか!」
「ああ、その通りだな。だが、この方法なら間違いなく四千年後に向こう側からドアを開いてもらえる」
「悪知恵が凄い・・・」
「いや、そこは褒めてくれよ!」
マクスはここで漸く、お茶へ手をのばした。久しぶりに頭をフル回転させたので、もう喉がカラカラである。
(少しだけバッシュ帝国が気の毒な気もするが・・。いや、そんなことを気にしている場合じゃない。未来へ帰るために使える手は何でも使わないと!――――あとは黄水晶へ強力な保護魔法を付与した伝言を書き込む方法を考えなければ・・・)
冷えた紅茶が身体に染みわたっていく。自覚している以上に水分が足りていなかったようだ。一気に飲んでカップは空になった。程なく、アレックスが慣れた手つきで紅茶をカップへ注ぎ入れる。
マクスは日中に窓の外を眺めていて、王宮の配置で気になるところがあったので、彼に質問してみた。
「アレックス、この建物が立っているのは未来の王宮と同じ場所か?」
「王宮のある場所自体は同じですが、この本宮は未来の王太子宮の位置にあります。そして、未来の本宮はこの窓の外に見えている森のあたりですね。まだ手付かずです」
アレックスは窓の方へチラリと視線を向けた後、サンディーの玩具(黄水晶)を取りに行くといって席を立った。
部屋を出る彼を見送って、マクスはアレックスが足してくれたお茶をもう一口飲んだ。今度は少し温かかった。
「――――サンディーが黄水晶のことを詳しく教えてくれてたから、助かった・・・」
(それにおれ達はまだ子供を授かっていない。だから、絶対に未来へ帰れるだろうとは思っていたけれど・・・)
「でも、マジでヒヤッとした~~~~~!!!」
マクスは誰もいない部屋で両手を上げて大きな伸びをした。
♢♢♢♢♢♢♢
――――その頃、未来のサンディーはカルロと一緒にシェスタの時間を過ごしていた。窓辺に吊るされた白い紗はユラユラと優雅に揺れていて、その先には雲一つない青い空と草の一つもない乾いた大地が広がっている。
二人は寝台の上にいた。カルロはサンディーを後ろから抱きしめて、彼女の肩にあごを乗せている。
「カルロ―、昨日の話だけどさ~、トットは大丈夫かなぁ~、リックは押しが強いからさ~、何となく心配なんだよね~」
「――――そんなに心配なら、マクス殿に頼んで、リチャード王子に釘を刺してもらった方が良いのではないか?」
カルロは彼女の耳元へ低音の心地よい声で囁き掛けた。サンディーはクルッと身を翻して、彼の方を向く。
「そうだね~、シェスタの後にまーちゃんのところへ一緒に行こう」
「ああ、そうしよう」
カルロはサンディーの顎を指で持ち上げて、くちびるを奪う。
「まだ時間はあるな・・・」
「うん」
次に彼はサンディーの頬へ触れるだけのキスを二回した。
「続きを・・・」
「うん、いいよぉ~」
サンディーから了承を得た彼は、彼女の耳たぶへ甘噛みをして・・・。
「「!!」」
二人はビクッとする。
――――突然、室内で何かが眩い光を放ったからだ。
「何だ・・・」
カルロは身を起こして、光の源を探る。すると、テーブルに置かれた木箱の隙間から、強い光が漏れているのが見えた。
「テーブル上の木箱」
「あ~、アレは私の黄水晶だわ」
サンディーは寝台を降りて、木箱の前へ行く。そして、躊躇なく蓋を開ける。
――――突然、目の前に等身大マクスが現れた!
「なっ、マクス殿!?」
カルロは一瞬、マクスが本物だと思って怯んだ。ちなみに今の二人は何も身に纏っていない・・・。
「うーん、これは伝言魔法だね~。カルロ、心配しなくても大丈夫だよぉ~」
「伝言・・・」
カルロはリアルタイムに見られてしまったわけではないと分かり安堵した。この姿を見られたら、気まずいどころの騒ぎでない・・・。
――――サンディーは、透明感のある(幽霊のような)マクスに語り掛けてみる。
「えーっと、まーちゃん、伝言を聞かせてくれない?」
「――――おれはソベルナ王国の王太子マクシミリアンだ。緊急事態で助けが必要な状態に陥っている。――――もし、ソベルナ王国の大魔女サンディーがそこに居ない場合は至急、彼女への伝言を届けてくれ。――――内容はルド歴三千八百五十九年六月八日の夜、おれは王家の霊廟の聖堂の奥にあるドアから過去へ行った。だが、肝心のドアが消えてしまい元の時代へ戻れなくなってしまった。サンディー、すまないがそちらか側からドアを開けて欲しい。よろしく頼む・・・」
一方的にメッセージを言い終えると、マクスの姿は消え去ってしまった。
「過去!?俺の聞き間違いか?」
「うううん、間違いなく過去って言ったわよぉ~。まーちゃん、なかなかのドジっ子だねぇ~」
「いや、過去って・・・。――――サンディー、全知全能の神でもない人間が過ぎ去った時間を遡るというのは可能なのか?」
「う~ん、それがね~、出来なくはないんだよねぇ~」
「は?」
カルロはサンディーの言葉を理解出来なかった。
「ソベルナ王家の秘密の話になるから、ここでは言えないけどぉ~。カルロにはきちんと教えてあげる!!だ・か・ら、シェスタを楽しんだ後にあたしと王家の霊廟へ行こう!」
サンディーは寝台に飛び込んで、カルロにギュッ~っと抱きつく。彼女の銀髪はサラサラサラ~とフリージアの甘い香りを彼へ届ける。
「――――分かった」
カルロは理解し難い話は一旦忘れて、彼女の誘惑に乗ることにした。
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