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14 ブカスト王国の砂漠化を防げ 12 絶句

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 サンディーとカルロはトッシュの所へ行くといって離宮へ向かった。


(すっかり遅くなってしまったな・・・)


 マクスは渡り廊下から、ライトアップされた王宮の建物を眺める。部屋を出たのはまだ夕暮れ前だっただけに部屋へ置いてきたキャロルのことが心配だ。


(――――夕食も取らずに待っているかも知れない・・・)


♢♢♢♢♢♢♢♢


 私室の扉を開けて、彼は絶句する。


「なっ!?ど、どうしたんだ!!」


 驚いた理由は、キャロルがうつ伏せの状態で床へ倒れていたからだ。直ぐに駆け寄って、手首を掴む。


(よし、脈はある・・・。息は?)


 マクスはキャロルの顔へ耳を近づけてみた。


「す~、す~、す~」


――――心地よさそうな寝息が聞こえてきた。


「争ったような形跡もないし、ケガをしているわけでもなさそうだ・・・」


 ここでマクスは腕を組んで考える。何がどうしてこうなったのかと・・・。


――――キャロルが倒れているのはソファとテーブルの間だ。仮に腰掛けていて眠ってしまったとしても、この体勢になるのは不自然である。


(そもそも、床の上で眠っていたとか・・・。いや、それはないだろう。ドレスを着ているし)


 彼女が床に転がっていた謎は解けない。ただ、事件性はなさそうだし、彼女をたたき起こして理由を聞くほどの状況でもなさそうだ。


(ここ数日は色々なことがあったからな。疲れていたんだろう)


 音を立てないようにテーブルを横へ動かし、マクスは壊れ物を丁重に扱うような所作でキャロルを抱き上げた。


(んっ、重っ!!何だ?このドレス。華奢な身体でこんなものを着ていたのか・・・)


 貴婦人の装いに詳しくないマクスは軽くカルチャーショックを受ける。日中、キャロルはこの姿で高いヒールの靴を履いて、普通に歩き回っていたからだ。


(ドレスの重さって、もう少しどうにか出来ないのか!?これじゃあ、重しを担がされているみたいで、可哀想だ・・・)


 マクスはブカスト王国の軽やかな民族衣装を思い浮かべる。そして、それをキャロルが身に纏った姿を想像し・・・、ガブリを振った。


(いや、ダメだ。あれは露出が多過ぎる!!)


 余計なことを考えるのは止めて、マクスはキャロル抱いて寝室へ。


 内ドアの先にある寝室の中心には天蓋のついた大きなベッドが置かれている。彼はそこへキャロルを横向きに下ろした。続けて、慣れた手つきで背中のボタンへ手を伸ばす。


 ドレスを緩め、袖から腕を抜いたら、次はコルセットの紐を解いていく。ドレスとコルセットを身体から引き抜いた後は、胸の前でリボンを結ぶスタイルのナイトドレスを着せた。


「――――よし!出来た!!」


(おれ、本気で侍女に転職出来そうだ・・・)


 マクスはこっそりとガッツポーズを決める。


「おやすみ、キャロル。いい夢を・・・」


 彼女のこめかみにチュッとキスをして、マクスは部屋を出た。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 その頃、トッシュの部屋では・・・。


 カルロとサンディーがやって来るのを待っていたトッシュは、すぐに相談を始める。


「リチャード王子が『王龍の玉』を一緒に探そうと言い出したのですが、どうしたらいいでしょうか?」


「トット、そのお誘いは危ないわぁ~」


「それは僕も分かっていて・・・」


 即座にツッコミを入れたサンディー。一方、カルロは『王龍の玉』と聞いて、情報の出所が気になった。


「トッシュ『王龍の玉』の話は最高機密だ。リチャード王子はその話をどうやって知ったのだ」


「――――国王の執務室から聞こえて来たと言っていました」


「なっ!?」


 カルロは絶句する。


 この国の第二王子は盗み聞ぎをした内容を、簡単に隣国の王子へ漏らしてしまうのか・・・と。


「あのう、兄様、実は最初に『妖精の石板』というのを集めようと誘われたのですが、妖精は滅びたから無理だと断りました」


 素直なトッシュは包み隠さずに事実を伝える。しかし、『妖精の石板』の話まで出て来て、カルロは他国のことに干渉するのは良くないと分かっていても、つい口から本音が出てしまった。


「サンディー、この国の管理体制は一体・・・」


「カルロが驚くのも無理はないよぉ!あたしもビックリしたから~!!――――でもね、誤解しないで欲しいんだけど、まーちゃんとカエちゃんって、重要な話をする時は必ず防音魔法をかけてるよぉ。だからさ~、もしかしたら、リックの方が防音魔法を無効にするような特殊能力を持っているのかも知れないね~」


「この話はそういう方向へ行くのか?」


 美しい男は顎に拳を添えた状態で、困惑している。


「えっ!?違ってた!?」


「いや、私は管理体制について聞いたのだが、いつの間にかリチャード王子の特殊能力の話に・・・」


「うん、ごめん!!分かり易く言うわ!管理体制については防音魔法を掛けて聞こえないようにしてる!!」


 『それだけなのか?』という言葉を一旦、飲み込み、カルロは一番指摘したかったことを聞いた。


「で、リチャード王子は?」


「正直に言うと野放しだわ」


 カルロは銀色の睫毛をパチパチと震わせる。


「私の聞き間違いか?ノバナシと聞こえたのだが・・・」


「そのまんまだよ~。野放しなんだわ~」


「そ、それでいいのか!?」


――――国王になることのない王子だとはいえ、野放しは問題があり過ぎるだろう・・・。カルロの表情は無意識のうちに険しくなっていく。


「うーん、公言して良いのかどうか悩むところだけど・・・」


 サンディーは言い淀む。


――――これから言おうとしていることは別に機密ではないが、相手を嫌な気分にさせるかも知れないからだ。


「何だ?」


「ソベルナ王国の王族って魔法使いじゃん?」


「そうだな」


「不都合なことだけを相手の記憶から抜くくらい簡単に出来ちゃうんだよね~」


「はぁ?」


 衝撃的な告白を聞いて、カルロは素の声を出してしまう。だが、トッシュはそんなに驚いていなかった。


 以前、『天使の泉』で、その辺にいた観光客の記憶をマクスが一瞬で書き換えたのを見ていたからである。

 

「サンディー、それはソベルナ王国の王族なら誰でも出来るのか?」


「うううん、当代で出来そうなのはまーちゃんとあたしかな。キャロちゃんの魔法はまだ良く分からないんだよね~」


「なるほど、同じ魔法使いでも分からないことがあるのだな」


「そうそう、キャロちゃんは妖・・・・っと、口が滑ったし!」


 カルロとトッシュは妖精と聞こえたような気がしたが、暗黙の了解で聞き流しておく。


「分からないことついでに質問するが、マクス殿は一般的に最強の魔法使いと言われている。だが、彼の防御魔法をリチャード王子が破ったのなら、彼が一番強いということになるのか?」


「う~ん、それは少し違うかな~。まーちゃんは間違いなく当代一番の魔法使いだよ。で、リックはピンポイントで何か特殊な能力を使えるって感じだと思う」


「ピンポイント・・・」


「そうそう。それとね~、紫の瞳持ちではなくても、ソベルナ王国の王族は一般的な魔法を使えるくらいの魔力を持っているんだよね~。だけど、現代のソベルナ王国は魔法に頼らずに生きて行くという方針を王家が掲げているから、後継者じゃないリックは魔法の勉強をする機会を与えられないんだよぉ」


 トッシュはマクスに魔法を習いたいといっていたリックがこの話を聞いたら、さぞガッカリするだろうなと考えていた・・・。


「で、魔力の使い方を教わっていない子供は何かをしてしまっても、それが魔法だとは気付かないのよぉ。例えば箱の中身が見える透し能力とか、歩いているだけで色々な人の心の声が聞こえてくる能力とか・・・」


「――――心の声を聞かれるのは困る・・・」


 カルロはボソッと呟く。


「え~、そうなの!?なになになに~、いつも何を考えているの??」


「それは・・・」


 カルロは熱のこもった目で、サンディーを見詰めた。美形の中の美形と言っていい男は室内の雰囲気を一気に艶めいたものへと変えていく・・・。


「ゴホッ、ゴホッ」


 トッシュはわざとらしい咳をした。兄たちにここで盛り上がられては困るからだ。


「兄様、リチャード王子のお誘いを断っていいですか?」


 トッシュは話を元に戻そうとする。


「待って、待って、えーっと、リックは多分ね~、断ったら一人で行くわよぉ」


「「!?」」


 ブカスト王国の王子二人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。サンディーは話を続ける。


「あの子、意外と行動力があるタイプなのよぉ。だから、ストッパーになれる人が側に居てくれると助かるというか・・・」


「しかし、トッシュは彼より二歳年上なだけだぞ。他に彼を止められる者はいないのか!?」


 カルロはリチャードを甘やかすような発言をしたサンディーに、少しきつめの口調で言い返した。


「強いていうなら、まーちゃんかな・・・。でもね~、あの子を一番甘やかしているのも、ま~ちゃんなのよ~」


「いや、国王陛下はではダメなのか?実の父なのだろう?」


「うーん、カエちゃんは子供たちに舐められているからね~。リックが『ブカスト王国に行ってみたい!』って、カエちゃんにお願いしたら『第一騎士団を護衛に付けてやるから楽しんで来なさい』とか、アホなことを言い出しそうで・・・」


 サンディーはサラッと不敬なことを口にする。


「そ、それは・・・」


 カルロは怯む。想像以上の深刻さを感じたからだ。


「――――子供の我儘を諫めずに、騎士団・・・。恐ろしい・・・」


「ソベルナ王国の事情は分かりました。一度、師匠に相談してみます。兄様、それでいいですか?」


「ああ、マクス殿に判断してもらおう。トッシュ、もし、リチャード王子と『王龍の玉』を探すことになったら、必ず、私かマーカスに連絡を・・・」


「はい、分かりました」


 聡明なトッシュは、何が何でもマクスにリックを止めてもらおうと決意する。


 サンディーは二人のやり取りを眺めながら『カルロもマーカスちゃんも、トットにかなり甘いけど、自覚して無いよね~』と苦笑した。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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