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13 ブカスト王国の砂漠化を防げ 11 つがい

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 カルロはバッシュ帝国の記録と異なる点が三つあるといった。一点目はスノードラゴン、二点目はアレックス、そして、三点目は王龍の神殿のことである。


「マクス殿、王龍はスノードラゴンではなく水龍だ。そして、一頭ではなく二頭いる」


「二頭!?初めて聞いたんだけど・・・」


「二頭の水龍はつがいだ。どちらもブカストの民からは王龍と呼ばれている。マクス殿が知らないのも無理はない。ソベルナ王国と我が国は長年、国交を断絶していたのだから」


「まあ、そうだけど・・・。一応、諜報員もい・・・」


 マクスは慌てて言葉を濁す。諜報という言葉にハッとしたからだ。


(おれ、今、何を言おうとした!?他国の王族に向かって諜報員って・・・。バカなのか!?ああ、もう!恥ずかしい・・・。――――ここにキャロルが居なくてよかった~。聞かれたら、一生馬鹿にされる案件だぞ、これ)


 一方、カルロのとなりにいるサンディーは、話を聞いて頷くことはあっても口は閉じている。過去の人でもある自分が安易に発言すべきでないと考えているからだ。


 二人の心中を察することなくカルロは話を進めていく。


 王龍のつがいは常に二頭で同じところへいるわけではないのだという。オスの水龍は現在、氷河地帯の神殿に眠っている。そして、メスの水龍は・・・。


「元々はパン砂漠の辺りに神殿があって、そこにメスの王龍は眠っていた。だが、今は行方が分からぬ。ノード王国の海の近くにいるという情報もあるのだが、確認は出来てない」


「――――もしかして、水龍が移動したから大地が枯れたのか?」


「その可能性は高い」


――――カルロの話を聞きながら、マクスはバッシュ帝国の話だけを聞いて、ミハイルの持って来た玉を本物だと信じてしまったことをもう後悔し始めている。


 受け取った玉が『王龍の玉』じゃないなら意味がない。


 だが、受け取ったという事実は今後の外交に大きく影響する。ソベルナ王国から預かった玉がバッシュ帝国の鎖国の原因となったとミハイルは言った。


 これはソベルナ王国にも責任があるということ。何を要求されても断りにくい状況になったといっても過言ではない。


(バッシュ帝国の二人に会う前にカルロと話しておくべきだったな・・・)


「――――マクス殿、玉はいくつ必要なのだろうか?オスとメスの二つか、それともどちらか一つなのか・・・」


 ここで、カルロは氷河地帯の王龍を目覚めさせるために必要な玉の数を聞いてきた。


「いや、そこは分からない」


「アレックス陛下に確認した方がいいだろう」


「そうだな。確認して報告する」


「次は玉の大きさについてなのだが・・・」


 カルロは水龍の玉はかなり大きいという話を始めた。龍は体力を回復させるために身体を小さくして玉の中で眠ることもあるのだという。


「――――手のひらサイズはあり得ないと?」


「ああ、それは小さすぎる。アレックス陛下が玉に魔法を施していたというなら話は別だが・・・」


「魔法か」


「ああ、マクス殿はその辺のことに詳しいのでは?」


「少なくともあの玉から魔法の痕跡は感じなかった・・・。う~ん、口でいうより現物を見た方がいいだろう」


 マクスは手のひらを上に向けて、魔力を込める。


――――宙からフワリと木箱が登場した。


「あ――――――っ!!!」


 いきなり叫び声を上げる、サンディー。


「それ、あたしのかも・・・」


「は?」


「箱の中に入っているのは黄水晶でしょ?」


 サンディーは木箱をマクスの手から取って開けた。


「やっぱり!!――――あれっ、綺麗になってるぅ。ヒビが入ってたのに~」


「バラバラになっていたのをキャロルが復元した」


「そっか~。ありがとぉ!」


 サンディーは大切そうに木箱を抱く。


「いやいやいや、そうじゃないだろ!!」


 マクスはサンディーにツッコミを入れた。


「サンディー!これは何なんだ!?」


「これはね~、木で作った人型の人形を倒して遊ぶゲームに使う玉なのよぉ。最近、トットとリックがハマっているアレと似ているかもぉ~」


 マクスは二人が中庭でしているボトル倒しを思い浮かべる。


「マクス殿、やはり、この玉は偽物だったと・・・」


「うっ・・・」


 カルロの言葉がマクスにトドメを刺す。


(今日はいつも以上にカルロの言葉が胸に刺さる)


「ミーくん(ミハイル)の話も嘘じゃないと思うよ。だって、これをずっーと守っていてくれたんだから。間違いなく悪いのはあたしの父上だよぉ。もう、どうして大嘘なんか吐いたんだろう・・・」


「アレックス陛下がわざわざバッシュ帝国まで預けに行ったのだろう。何か理由があるはずだ。マクス殿、ご本人に確認することをおススメする。――――では、話の続きをしてもいいか」


「ああ、頼む」


「では、アレックス陛下のことだが・・・」


 ブカスト王国の文献には侵略者を討伐する際に王龍たちと共にアレックスが現れたと記されており、彼のことを『龍の化身』と人々は呼んでいたのだという。


 圧倒的な力で侵略者を排除したという話はバッシュ帝国の記録と同じで、アレックスには報奨として今のソベルナ王国の左側に当たる土地が与えられた。


「王龍たちと一緒に現れたってところが違うのか・・・」


「ああ、急に空から現れたというのと『王龍の化身』という扱いでは全く意味が違ってくる」


「確かに・・・」


 マクスとカルロは互いに腕を組んで、何となく天井を眺める。


「あのさ~、その話はバッシュ帝国の話が正解だよ」


 サンディーはあっけらかんと言い放つ。


「父上がどこかから来たのは本当。でも、王龍とは関係ないっていってた・・・。あー、余計なことを口にしちゃダメだよね~」


「サンディー、知っていることがあるなら教えて欲しい」


 カルロは彼女のアメジスト色の瞳をジーッと見つめる。


「えーっと、父上の話ではね。王龍たちが戦っているところに、たまたま転移しただけで、龍の化身でも龍に召喚されたわけでもないんだって~」


「転移か・・・。カルロ、ブカスト王国の記録も自国の民へのウケがいいように改ざんしている可能性があるな」


「ああ、私もそう思う。今回は情報のすり合わせをするいい機会だ。マーカスに報告して記録を正しく書き直してもらう」


(ただ、ブカスト王国の記録が一番信用出来そうな気はするんだよなぁ~。報告書も真実だけを記すって、スタンスだったし。鎖国していたバッシュ帝国は正直なところ、まだどんな国なのかも掴めていないからなぁ)


 マクスは今後、ミハイル達の話を鵜呑みするのは止めようと本気で反省している。


「で、神殿についての話は?」


「先ほども触れたが、王龍たちは元々パン高原の神殿に住んでいた。侵略事件の後、オスは氷河地帯の神殿で眠りについた。だが、メスの方は何処に居るか分からない。通常、玉は神殿に祀られている。街に点在している神殿にはそのレプリカが飾られていて・・・」


「もしかして、砂漠の下に神殿があるのか!?」


 ピンと閃いたマクスはカルロの話を遮ってしまう。


「――――その通りだ」


「ま、まさか・・・、偽オアシスって、この話と関係あるのか?」


 マクスは上目づかいで彼を見る。


「―――――ある」


 カルロは肯定した。


「あー、面倒くさい香りがして来た~~~!!!」

 

 マクスはガックリと首を落とす。玉を見つけるだけでいいと鷹を括っていたら、同じものを狙っている集団(盗賊)がいたからだ。


「ついでにいうなら、盗賊の国籍は不明だ」


「えっ、ブカスト王国の盗賊じゃないのか?」


「違う」


 ハ――――――――ッと、マクスは大きなため息を吐く。


 アレックスはマクスとキャロルに『アイリスの紋章を持つ後継者の元に、近々、私の預けた玉を誰かが持って来るはずだ』といった。だが、届いた玉は偽物だった。


 その上、同じものを狙っていそうな盗賊まで現れた・・・。


(とりあえず盗賊がどこから来たのかを確認した方がいいだろう。念のため、ハーゲン・ロックを見に行った方が良いかも知れないな)


 もし、既に妖精の力が奪われていたら・・・。


――――残されている時間は案外少ないのかも知れない。マクスは気持ちを本気モードへ切り替えた。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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