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11 ブカスト王国の砂漠化を防げ 9 あれは無理・・・

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 いついかなる時も高潔な雰囲気を漂わせている美しい男。それはブカスト王国の第三王子カルロである。


 彼の率いる黄龍軍から、不本意な報告書を突き付けられたマクスは最初にカルロのパートナーで、ソベルナ王国の大魔法使いでもあるサンディーを呼んだ。


 ところが、サンディーは黄龍軍の魔法戦士たちの指導をしているだけで、報告書のことは分からないとのこと。


――――マクスはサンディーにカルロをここへ召喚してくれと頼んだ。


「ごきげんよう、マクス殿」


 宙から現れた彼は、軽やかな身のこなしで優雅に着地する。マクスの側近エドモンドは思わず手を叩いた。


――――男の目から見ても、カルロはカッコいいのである。


「ああ、いつも急に呼び出してすまない。少し確認したいことがあって・・・」


 マクスは調査書をひらひらと彼の前で振った。


「承知した」


「では、そこへ座って・・・」


 マクスはソファーの方へ、カルロを案内しようとしたのだが・・・。


「いや、まーちゃん、あれは無理だわ!」


 間髪入れずにサンディーが突っ込んだ。


――――現在、この部屋(王太子の執務室)は、至る所に書類が積み上がっており、ソファーも例外ではなかった。


「ああ、確かに無理だな・・・。エド、どうしようか?」


「カルロを呼ぶ前に考えておきなよぉ~」


 マクスをなじる、サンディー。


「――――すまない」


 マクスは素直に謝った。


「マクス殿、だいぶんお疲れのようだが、大丈夫か?」


 カルロは勢いのないマクスを心配する。いつもの彼なら、サンディーやカルロに必ず反論して来るからだ。


――――と、ここで・・・。


 コンコンコン。


 誰かが執務室のドアをノックした。


「こんな時に誰が・・・」


 マクスはボソッと呟く。すると外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「マルコでーす。殿下に依頼されていたものをお持ちしましたわ」


「あ!マルコ!?入って、入って~!!」


 サンディーはマクスの代わりに返事をし、ドアへ向かう。


「――――マルコ?」


 うきうきした足取りの彼女を見て、カルロが呟いた。隣でそれを聞いてしまったマクスはカルロに向かって囁く。


「大丈夫だ。お前の敵じゃない」


「――――?」


 首を傾げるカルロ。


「いや~ん、サンディ~!!ここに居たの~!?今日も可愛いわね!!」


 ドアが開かれた途端、マルコとサンディは熱い抱擁を交わす。


 マクスがチラリとカルロの方を見ると、彼は目を見開き、口を少し開けた状態で固まっていた。


「カルロ、大丈夫か!?あいつ、男女を問わずに距離感がおかしい奴なん・・・」


「やだーぁ!!そこの御方は何処のどなたっ!?神レべのイケメンじゃない!!!」


 マルコはマクスの言葉を遮る。彼の視線はカルロにロックオンされていた。


「あ、これ、マズイんじゃ・・・」


 マクスはマルコがカルロに向かって走り込んで来るのではないかと警戒し、カルロの前に滑り出る。


――――が、しかし・・・。


「マルコ~!ダメダメ!!カルロはあたしのだから!!」


 一目散に走り出そうとしたマルコの腕をサンディーが掴んだ。


「マクス殿、私はどうすれば・・・」


 背後からカルロの狼狽えた声がする。


「いや、お前はそのままそこに立っていてくれ。おれとサンディーがお前を守る!」


 イケメンを見つけて興奮したマルコはサンディーを引き摺りながら、マクスの前までやって来た。


「殿下、そちらのお方は?」


 一応、上司に確認するだけの理性は残っていたらしい。


 いくら親しくなったとはいえ、カルロは他国の王族である。マクスの部下が欲望のままに彼へ抱きついたりしたら大問題だ。


 マクスは声のトーンを落とし、真顔で彼に語り掛けた。

「マルコ、落ち着くんだ。ここは王太子の執務室だぞ」


 マクスの表情を見て我に返ったマルコは即座に姿勢を正す。


「大変失礼いたしました!」


 マルコの勢いが収まったので、マクスはマルコのことをカルロへ紹介した。


「――――ブカスト王国の第三王子殿下でしたのね。お騒がせしてしまい申し訳ございませんでした」


 マルコはお詫びを口にする。


 カルロはマルコの言葉遣いや所作が気になりつつ、これもソベルナ王国では普通のことなのだろうと受け流した。


「いや、私は気にしておらぬ。マクス殿、文官との用事を先に済まされよ」


「ありがとう、カルロ。マルコ、書類のことだが・・・」


「殿下、この部屋・・・」


 マルコは部屋を見回してため息を吐いた。


「――――随分、汚いですわね」


「最近、忙しかったんだ」


 マクスはぶっきらぼうに言い返す。


「あ~、殿下、ご結婚おめでとうございます!!すっかり失念していましたわ」


「ああ、ありがと・・・」


 マクスはマルコからのお祝いの言葉に返事をしようとしていたのだが・・・。


「いや、何故、俺じゃなくて、カルロの方を向いて話しているんだ!!おかしいだろ」


「あらやだ~、わたしってば~!!ついつい、美しいものを見ちゃうのよね~」


「全然、反省して無いな、マルコ!」


「あ~、そうだぁ~!!マルコ~、お願いがあるんだけどぉ!」


 全く空気を読むつもりのないサンディーは、微妙なタイミングで二人の会話に割り込んだ。


 マクスは話の腰を折られて、ハァ・・・と、ため息を吐く。


「お願いって、なあに?」


「あのね~、あたしたちに応接室を貸してくれない?」


「ああ、ここ汚いものねぇ~。良いわよ。じゃあ、戻って用意しておくわ!!――――では、皆さま、後でまたお会いしましょう!!」


 マルコは手に持っていたファイルをエドモンドに押し付けると踵を返して、部屋を出て行った。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 総務部の応接室を借りることになったマクスたち。エドモンドは積み上がった書類を整理するというので執務室へ残し、三人で部屋を出る。


 廊下を歩いているとトッシュに出会った。彼はブカスト王国の第八王子でカルロの弟だ。現在はソベルナ王国で遊学中で、マクスの弟子として魔法も学んでいる。


「兄様!!」


 トッシュはカルロを見つけると、顔をほころばせた。


「トッシュ、元気にしていたか?」


 カルロは大きな手で彼の頭を撫でる。


「はい、元気にしています。ところで僕、兄様に聞きたいことがあるのですけど、お時間は取れますか?」


「今は難しいが、用事が済んだ後で良ければ、大丈夫だ」


「分かりました」


「トット~、用事が終わったら、あたしがカルロをトットのところまで連れて行くわぁ~。だから、何処にいてもいいわよぉ~」


「はい。サンディーさん、よろしくお願いします!」


 今日もトッシュは礼儀正しかった。


「はぁ~、トットはいつも可愛いわぁ!!また後でね!」


「はい」


 三人はトッシュと別れ、マルコの待つ総務部へと急いだ。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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