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10 ブカスト王国の砂漠化を防げ 8 首謀者?

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 開け放った窓の外では、日が傾いてきている。まだ住み慣れない王太子宮の私室。キャロルは側近エドモンドに呼ばれたマクスを見送り、やっと一息吐けると気を緩めた。


「ああああ~、疲れた・・・」


 キャロルはドサッと音を立てて、ソファーに倒れ込む。


(こんな姿、マクスにはとても見せられないわ・・・)


 一昨日は結婚式と王都のパレード、夜会、そして、昨日は王家の霊廟へ結婚の報告。それだけでも、男爵令嬢のキャロルには限界を超えたスケジュールだった。


 だというのに・・・。


(どうして、ここで初代皇帝が出てくるのよ・・・。サンディーさんもだけど、ソベルナ王家の皆さんって不老不死なの???)


 王家の霊廟に現れた初代皇帝は少年の姿をしていた。恐らく、亡くなったのはもっと歳を重ねた後のはずだ。


(力を温存するためとか何とか・・・、そんな風なことを言っていたわよね?都合の良いように姿を変えられるなんて、何でも出来すぎでしょう!!)


 キャロルはソファーの上でグルリと身体を横に回して、仰向けになる。


「あ、天井に・・・」


 真上(天井)に点々と星のような模様が浮かび上がっていた。


「あれは星座?いや、何か違う気がする・・・。まぁ、良く分からないけど、キラキラしていて綺麗だわ。ソファーに寝転んだ人にしか分からない特典ね。フフフフッ・・・」


 足を投げ出して、脱力しているキャロル。ドレスに皺が寄ると分かっていても疲労には勝てない・・・。


「――――ルナ様をリューデンハイムに連れて行くとしたら、食事はどうしようかな。――――流石に他国の皇太子夫妻を酒場に連れて行ったら、ダメよね?」


 キャロルは先ほど、バッシュ帝国の皇太子夫妻をリューデンハイムへ誘った。それは皇太子妃ルナを『恋人の丘』へ連れて行きたいからだ。


 現在、リューデンハイム領には王族警備隊の主任コルトーとモルト、そして、成り行きでコルマン侯爵家のカレンが駐在している。


 コルトーがマクスへ寄越した報告によると、絵描きのテリーが『天使カード』を作成するようになっても『恋人の丘』の客足は途絶えず、効果がありましたというお礼状も届いているらしい・・・。


(どう考えてもおかしいわ。『実はテリーも魔法使いでした!』というオチなんてないだろうし)


 王太子妃になったものの、まだ国の法律関係が整っていないため、キャロルが魔法使いであることは限られた者たちしか告白していない。


 しかし、マクスはお茶会でキャロルが魔法を使えるということを皇太子夫妻へ教えた。


 最初はキャロルが『恋人の丘』の話題を出しただけで、止めに入ったのにである。


(あれって、魔法使いということは隠さなくてもいいけど、『天使カード』に魔法付与をしていたことは秘密にしなさいってことだよね?――――でも、リューデスハイム領に行く前に一度、マクスへ確認しておいた方がいいかも・・・。齟齬が生じたら大変なことになるもの・・・)


 キャロルの秘密を聞いた皇太子夫妻は驚きを隠さなかった。


 そして、バッシュ帝国には魔法使いがいないということと、似たような存在として、術式を使って鬼神を呼び出し、悪を成敗する陰陽師がいるという話をしてくれたのである。


(鎖国をしているから、他国に知られていないことも多いのだろうけど・・・、陰陽師なんて、初めて聞いたわ。――――鬼神って、怖いのかしら・・・。――――まぁ、お化けの類だったら・・・、私は無理だけど・・・)


 キャロルは瞼を閉じる・・・。


(――――お化けが嫌いなのは今後も変わらないし・・・、克服するつもりも・・・、――――ないわ・・・)


――――夕日が地平線へ落ちていくと同時に、キャロルは夢の世界へいざなわれていった。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 執務室は重い空気に包まれている。


「エドモンド、これは間違っている」


「はい、私もそう思います」


 マクスの側近エドモンドは大きく頷く。


 今、マクスの手元にある報告書はブカスト王国の黄龍軍が作成したものだ。


 報告書には最近多発している偽オアシス窃盗団を後ろで手引きしている者として、ソベルナ王国の王太子マクシミリアンの名が挙がっていると記されていた。


「――――いや、腹が立つな、コレ(報告書)。あいつらと親しくしているから、尚更・・・」


 少し前に知り合ったブカスト王国の双子王子カルロとマーカス。


 彼らとマクスは手を取り合って、両国を長年悩ませていた事件を解決した。だから、マクスは二人のことを信頼出来る友人だと思っている。


 なのに、カルロが率いる黄龍軍がこの報告書を上げてきた。黒幕と記されている本人に・・・。


 冷静に考えれば、この時点でマクスのことは疑っていないということだろう。ただ、彼らの真意がこの報告書だけでは全く分からない。


「殿下、こういうのは当人同士で確認しておいた方が宜しいかと・・・。変に勘繰るとか捜査するのではなく、先ず、カルロ殿下へ連絡してみられてはどうでしょうか?」


 歯に衣を着せないタイプのエドモンドは今日もマクスに真っ直ぐな意見をぶつける。


「ああ、そうするつもりだ。真犯人は俺たちを仲違いさせたいのかも知れないが、そうはさせない!!」


 マクスは彼の提案を素直に聞き入れ、誰がこんなバカげたことを仕組んだのか暴いてやると意気込む。


――――しかし、数か月前までのソベルナ王国とブカスト王国だったら、この報告書一つで毎年恒例の侵攻騒ぎが起きていただろう。そして、リューデスハイム男爵が率いる氷の刃を出動させ、ブカスト王国を制圧したはず・・・。


 ただ、両国の関係は変わった。


 ソベルナ王国の次期国王マクス、そして、ブカスト王国の新しい国王マーカスとそれを補佐する王子カルロは両国の幸せな未来を目指しているからだ。


「カルロに会う前にサンディーを呼び出すか・・・」


 マクスはテレパシーで、サンディーへ『急ぎの用があるからここに来い』と呼びかける。


――――『都合が悪い時は無視しちゃうかもしれないけどぉ、一応、声は聞こえているから~』という、彼女の言質は取っている。


 呼びかけてから、数秒後、執務室に大魔法使いサンディーが現れた。


「お待たせ~!」


 明るい声が雑然とした執務室へ響く。


「あっら~!?この部屋、汚いわぁ~!!」


 積み上がった書類を見回すサンディー。


「うるさい!結婚式で忙しかったんだから、しょうがないだろ!!」


「んまぁ~、まーちゃんは反抗期なの?あたしは真実を述べただけよぉ~」


 穏やかなマクスを、一瞬で噴火させる彼女サンディーに部下のエドモンドはクスッと笑ってしまう。


「あのさ、コレどう思う?」


 マクスは報告書をサンディーへ手渡した。サンディーはササッと目を通して、顔を上げる。


「まーちゃん、どーして、こんなことを・・・」


「おれは、無実だ!!」


 いつもの頓珍漢なやり取りが始まり、エドモンドは彼らに背を向けて肩を震わせるのだった。



最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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