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7 ブカスト王国の砂漠化を防げ 5 知らない歴史

今回は少し硬いお話です。


楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


「異世界の侵略者と戦ったのはソベルナ王国がまだ成立していなかった時期ですから、記録に残っていないのかも知れませんね」


 キャロルは泰然としているレナを眺めていたのだが、ミハイルが話し始めたので、彼の方へ視線を向けた。


「なるほど・・・」


  ミハイルの見解にマクスは相槌を打つ。キャロルもマクスの隣で大きく頷く。


「あの頃、この大陸には王龍信仰のブカスト王国、妖精たちのエルダー王国、そして、皇帝を神として信仰する我がバッシュ帝国の三か国がありました。滅びてしまったエルダー王国を除いても、我が国とブカスト王国には当時の記録が残っています。これから、私は我が国で伝えられていることをお話しします。ブカスト王国の記録は機会を作って、マーカス国王に尋ねてみましょう」


「ええ、そうしましょう。では、お願いします」


 マクスとキャロルはミハイルの話に耳を傾ける。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 四千年ほど前、王龍の玉を狙って異世界から侵略者が現れた。


 異世界人は各世界に住まう龍の玉を集めて、大願を成就させるのだという。その真偽も分からぬ話で標的にされたのが、王龍ことアイスドラゴンである。


 アイスドラゴンは、この大陸の水を司る大切な存在だ。そして、言うまでもなく、ブカスト王国では神として崇められている。


 もしアイスドラゴンが死んだら、この大陸は水を失ってしまう。水が無ければ大地は渇き、植物は枯れ、人も動物も生きてはいけない。


 最悪の事態を考えた三国はタッグを組んで、異世界からの侵略者と戦うことを決めた。


 ところが、異世界人は一度に多くの民を攻撃出来る武器を持っている上、不思議な乗り物に乗って、大陸中を高速で移動して回る。会敵しても逃げられてしまうので対処の仕様がなく、三国の連合軍は頭を抱えてしまった。


――――時と共に被害だけが増えていく。


 そうしているうちに異世界人はアイスドラゴンの住処を特定してしまう。彼らは一気に攻め込むために、仲間を集めて彼のねぐらを取り囲んだ。


『行けー!!!』


 大声の合図と共にねぐらへ一斉攻撃を仕掛けられたアイスドラゴンは、全力で反撃する。


 激しい爆撃と氷の息吹がぶつかり合う。周辺の山々は吹き飛び、大地はひび割れ、豪雨と雷鳴が轟いた。


 人々は安全な場所を探し求めて逃げ惑った。


 このままでは決着がつく前にここ(大陸)が破壊されてしまうと、皆が絶望を感じた、その時・・・。


――――上空から、一人の少年が現れた。


『僕の名はアレックス。これから、異世界より現れた身勝手な者どもを成敗する!!』


 アレックスは上空で大剣を顕現させ、異世界人たちを一振りで殲滅した。そして、大きな魔法陣を大地に描き、彼らの亡骸を元の世界へと送り返していく。


 圧倒的な攻撃力と未知の魔法を見せつけられ、人々は茫然とその様子を眺めるしかなかった。


 次に彼は異世界人がこちらの世界へ渡って来るためのゲートを大剣で破壊した。これで異世界人はもうこちらへは来ることが出来ない。


 あっという間の出来事だった。


 突然現れたアレックスによって、この大陸は平和な日常を取り戻したのである。


 とはいうものの、土地は荒れ、けが人も続出していた。ここからは三国で協力して、復興に取り組んでいくことになる。


 復興にはアイスドラゴンも力を惜しみなく振う。山や湖、川などを元通りにすると、人々は水辺に集まって生活し始めた。


 大方の目処が立った頃、王龍アイスドラゴンは三国のトップの前で、弱音を吐く。


『我は力を使い過ぎた。しばらく眠りたい・・・』


 三国のトップは彼の意志を汲み、静かに眠れる場所を探した。そして、アレックスによって王龍は安全に封印されると、ブカスト王国はその近くへ王龍の神殿を建てた。次に王龍が目覚める時まで見守るのだという。


 また、ブカスト王国は神と崇めるアイスドラゴンの危機を救ったアレックスの功績を称え、彼に爵位と国土の一部を分け与えた。


 数年後、アレックスはブカスト王国から独立し、新たにソベルナ王国を建国する。その際、彼はエルダー王国の王女を妃に迎えた。


 月日は流れ、アレックスは王位を一人娘のアレクサンドリアへ譲ると、バッシュ帝国の皇帝トロノイのところへ向かう。


 アレックスとトロノイは年齢も近く、親しい関係だった。


『トロノイ、一つ頼みがある。いつか、また異世界人が王龍を狙って、この大陸を侵略してくるかも知れない。だから、私はその時の対策をしておこうと思う。将来、私の興したソベルナ王国にアイリスの紋章を持つ王と妃が現れたら、この木箱を渡してくれないか?』


 トロノイは差し出された木箱を受け取る。


『この木箱を渡すだけでいいのか?』


『ああ、それだけで充分だ』


『何故、私に託そうと思ったのか、理由を聞いても?』


『それは君が神だからだ。我が妃の祖国エルダー王国は既に滅びた。そして、ブカスト王国は力で後継者を決めるだろう?今の国王に預けたとしても、次の後継者へ上手く引き継げるという確証がない。その点、バッシュ帝国は皇帝を神と崇め、決まった順番で後継者を決めていく。いつになるのか分からないものを預けておくのなら、君に託すのが一番確実だ』


『小賢しい理由だな』


 トロノイはアレックスの合理的な考えに、何となくもやっとしたので嫌味を吐く。


『勿論、君を一番信頼しているからこそ頼んでいるんだ。トロノイ、そんなに拗ねるなよ!アハハハ・・・・』


 アレックスは豪快に笑った。


 この時にトロノイが預かった木箱は、アレックスの目論見通り、バッシュ帝国の皇帝たちによって、歴史と共に後継者へ引き継がれ・・・。


――――そして、バッシュ帝国の皇太子ミハイルによって、アイリスの紋章を持つソベルナ王国の王太子夫妻の元に王龍の玉は辿り着いたのである。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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